生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
546 / 1,561

545.【ハル視点】8人で昼食を

「混雑に巻き込まれずに無事にイーシャルからは離れられましたから、そろそろ一度休憩にしましょうか?」

 しばらく街道を進んだ所で、クリスは俺達に向かってそう提案した。

「賛成!腹も減ってきたし、皆で飯にしようぜ」

 カーディさんが明るく笑って同意すれば、クリスの視線がちらりと俺達の方へと流れてきた。もちろん休憩するのに異論は無いからとアキトと揃って頷けば、クリスは壁にある御者との連絡用の小窓をこんこんと軽く叩いた。

 クリスのノックの音にすぐに反応して、向こう側から小窓を覆っていた扉が開かれる。ルセフはまっすぐに前を向いてウマを操ったまま口を開いた。

「どうかしたか?」
「無事にイーシャルからは離れられましたから、そろそろ休憩にしようかと思ったんですが…」

 どう思いますかと言いたげなクリスの言葉に、ルセフは少し考えてから答えた。

「分かった。この辺りでも休憩程度なら出来ると思うけど、次の停留場でも良いか?」
「ええ、お願いします」

 ルセフはクリスの答えを聞くなり、すぐに他のパーティーメンバーに手を使って指示を飛ばした。ちらりと視線を向けてみれば、ウォルターとブレイズもすぐにささっと手を使って答えている。ブレイズは少しずつ速度を落とすと、後衛のファリーマへの伝達に向かったようだ。

 本当にこのパーティーはパーティーとしての練度が高いよな。密かに感心しながら、俺は周りの景色に視線を向けた。

 どうやら停留場まではそう遠くなさそうだ。



 停留場には数台の馬車が停められるだけの広さがあるが、今日は俺達の馬車だけの貸し切り状態だった。他の馬車を気にしなくて良いならと、俺達は馬車の近くに集まってそれそれが地面に腰を下ろした。

 クリスは自分の魔道収納鞄から全員分の昼食の包みを取り出すと、いそいそと配り始めた。

「はい、どうぞ」
「ああ、わざわざすまない。頂くよ、ありがとう」

 ルセフは差し出された包みを大事そうに受けとると、丁寧にお礼を口にしている。

「うわっ…すっげー良い香り!」

 ウォルターは包みからした香りに嬉しそうに声をあげる。

「本当だ!これどこの店のだろう」

 ファリーマは店の名前が気になったようだ。

「ああ、これは六番街の表通りに出てた屋台のですよ」
「あ、あのすっごい混んでたところ?」
「うーん、そこかどうかは分からないですが…確かに混んでましたね」

 ふふと笑ったクリスに、ファリーマは大事に食べるよと笑みをこぼす。

「あ、ありがとう」

 もっと盛大に喜ぶかと思っていたんだが、ブレイズの反応は何とも大人しいものだった。アキトと再会した時は元気そうだったんだが、どうかしたんだろうか。

「ハルとアキトさんもどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」

 クリスの手から受け取った包みは、まだ温かかった。ウォルターが歓声をあげたのも無理は無いなと思うほど、包みからは良い香りが漂ってきている。

「おまたせ、カーディ」

 最後にカーディさんの分を渡したクリスはいそいそとカーディの隣に腰を下ろすと、自分の分の包みを開け始めた。

「あ、遠慮なくどうぞ。足りなければ追加もありますよ」
「「いただきます」」

 アキトと二人で声を重ねて、俺達も遠慮なく包みを開いていく。中には半透明な生地に具材が包まれた、何とも不思議な食べ物が入っていた。この料理知ってる?と言いたげに俺を見つめてくるアキトに、俺は苦笑しながら首を振った。これは俺も見た事が無い料理だ。

「これは…?」
「見た目は変わってるけど、これうまいぞ!」

 物怖じせずに齧りついたらしいカーディさんは、満面の笑顔を浮かべて歓声をあげた。カーディさんの言葉い背中を押されてすぐに齧りついたアキトも、パァッと嬉しそうな笑顔になった。

「うわっ、本当に美味しい!」

 あの反応はかなり美味しいやつだな。しかもアキトの好みに合ったと見た。

 感想を分かち合うべく俺もすぐに齧りついたが、うん、確かにこれは美味いな。想像以上にもちもちした食感の生地の中に入っている具材は、細かく刻んだ何種類かの野菜と肉のようだ。肉汁がぶわりと口内に広がっていくのが、何とも幸せだ。

 アキトと感想を言い合いながら食べ進めていると、ルセフ達も声をあげた。

「これはうまいな…」
「ああ、すげぇな」
「このもちもち感はクセになる」
「うん、美味しい」

 笑顔で料理を褒めちぎっていたルセフ達は、もぐもぐと上品に食べ進めるクリスと豪快にかぶりついてるカーディさんを見て、不意にに苦笑を浮かべた。

「本当に面白い依頼主だな」
「面白い…?」

 ルセフがぽつりとこぼした言葉にアキトがどういう意味かと尋ねると、ウォルターが笑って答える。

「ああ、護衛と一緒になって地面に腰を下ろして、しかも同じものを食べる依頼人なんてそうはいないぞ?」

 自分たちは馬車の中や用意した派手なテーブルで豪華な食事を楽しみ、護衛は勝手に空いた時間で適当に食べろって態度のひともいるんだと説明されて、アキトは心底驚いたようだ。

 うん、まあ、残念ながらそんな依頼人もいるんだよな。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。