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546.【ハル視点】魔法談義
「さすがに嘘でしょう?」
控え目にそう尋ねたアキトに、俺達は揃って苦笑を浮かべるとゆるりと首を振った。本当に残念だけど、そういう依頼人も結構いるんだよ。だから護衛依頼は二度と受けないなんて宣言してる冒険者もいたりする。
「まあそこまで酷くはなくても、普通なら依頼主は護衛と同じものは食べないな」
心配そうなアキトを安心させるように笑みを浮かべて、ルセフはそう続けた。
「というか、そもそも護衛にまで食べ物を用意したりしないんだよね」
ファリーマはそう言いながら、美味しい物に出会えて俺は嬉しいけどねと笑っている。まあ、護衛の分まで食事を用意する依頼人は、本当にごくわずかだよな。
カーディさんはそんな皆のやりとりに、明るく口を挟んだ。
「俺も元冒険者だから分かるけど、まあ色んな奴がいるよなぁ」
「ああ、もちろん良い依頼主もいるんだが…」
「滅多にいないんだよな…」
「本当に滅多にいないよな…」
「まともじゃないのはいっぱいいるのにな…」
ぽつぽつと言い合う皆の空気は、ひどく重い。俺も今までに受けた無茶な依頼を、ついつい思いだしてしまった。アキトだけが心配そうに俺達を見つめている。
「それにしても、こんなにうまい飯本当にもらって良かったのか?」
「ええ、私たちが食べたい物を選んだだけなので、口にあって良かったです」
にっこり笑ってさっきも言いましたけどおかわりもありますよと追加分を取り出したクリスに、ウォルターは嬉しそうに手を差し出した。
「クリスさんとカーディさんは、本当に依頼書に書かれてる通りの対応をしてくれるんだな」
しみじみと呟いたルセフに、クリスは不思議そうに尋ねる。
「そういう条件で依頼をしているんだから当然の事だと思うんですが…?」
「あー…うん、条件は俺が決めるんだーって依頼を受けてからバンバン条件を変えるくそ野郎に最近当たったからなぁ…」
そう言いきったウォルターは嫌悪感を一切隠さずに、心底嫌そうにそう言った。しかもその言葉を聞いたルセフまで、一瞬で眉をしかめる。
「うん、あれは歴代最悪のくそ依頼主だったな」
「あーうん、確かにあれは大変だった。しかも途中から魔法の話は禁止だとか言われたし」
「いや、でもあれはお前が条件破りの腹いせに質問責めにした上に、わざと難しい魔法理論の話ばっかり聞かせたからだろうが」
お前のせいで途中からちょっと同情しちゃったからなと、ウォルターは苦笑を洩らす。アキトが驚いた顔で視線を向ければ、ファリーマは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「だってあの依頼人、魔法研究の専門家を名乗ってたんだぜ?なのにあの程度の知識量って…あり得ないだろう?ああいう知識も実力も無いのに偉そうな奴は嫌いなんだ」
本当に魔法研究の専門家なら知らない筈が無い話題を振っただけだと、ファリーマはあっさりと続けた。
なるほど。魔法馬鹿と呼ばれるファリーマさんの逆鱗に触れたわけか。
「あ、そういえばファリーマは魔法が好きだって言ってたが、どういう魔法が好きなんだ?」
何げない様子でカーディさんがファリーマに向かってそう尋ねた瞬間、ルセフは天を扇ぎ、ウォルターは絶句し、ブレイズはそっと視線を反らした。
「カーディ!あんた聞いてくれるのか?良い奴だな!そうだなー俺は魔法ならまあ何でも好きだし嫌いな魔法は無いんだけど、特に自分が使えない魔法にはかなり興味があるな」
急に元気になって早口で喋りだしたファリーマの反応にも、カーディさんは少しも動じなかった。ただ穏やかに笑って尋ねる。
「自分が使えない魔法って、例えば?」
「俺はどちらかというと攻撃特化だからそれ以外の魔法だな。補助魔法は前に使える奴に会った事があるから、今一番気になってるのは強化魔法…かな?」
さらりとそう言ってのけたファリーマに、俺は正直に言うと少しだけ驚いた。今の補助魔法が使える奴というのは、まず間違いなくアキトの事だろう。補助魔法の話を聞いたファリーマが、大興奮してたのを知ってるから間違いは無いだろう。
だが補助魔法は扱いが難しい魔法だ。もしかしたらアキトが補助魔法を使える事を周りに隠しているかもしれない。その可能性を考えて、誰のという所だけをうまくボカシてみせた。頭の回転も早いし、意外に諜報とかに向いてるのかもしれないな。
「なあアキト、会えない間にもしかして使えるようになってたり…しないか?」
俺はじりじりと近づいてくるファリーマから庇うように、アキトに向かって腕を伸ばした。視線で牽制すれば、これ以上は近づかないよとファリーマは両手を上げてみせる。察しも良いのか。
「強化魔法は使えるようになってないです」
残念だなーとぼやくファリーマだったが、カーディさんが笑って声をかける。
「俺、強化魔法使えるぞ?」
「え、本当か!?強化魔法が使えるってひとに初めて会った!この依頼受けて良かったよ!あの、もし答えにくかったら答えなくても良いんだけど、一つだけ質問しても良いか?」
真剣な表情に変わったファリーマに、カーディさんはすぐに頷いた。
「ああ、いいぞ」
「その強化魔法は…生まれつき使えた?それとも成長するにつれて覚えたものか?」
「生まれつきだな。父親も使えたらしいから」
「やっぱり…遺伝式…なのか?過去に手に入れた魔法歴史書に書いてあった事は本当だったのか…それなら…あの本の…」
ぶつぶつと呟きだしたファリーマをじっと見つめていたルセフは、ふうとひとつ大きく息を吐いた。
「騒がせてすまないな。だがこうなった時は逆に静かになるから」
「そうなんですか?」
「今頭の中で色々分析してるんだろう」
だいぶ口から漏れてるけどなと、ウォルターもブレイズも慣れた様子でファリーマを眺めている。
「なるほど、ファリーマさんは研究家気質なんですね」
「あー、本当にそう言ってくれる依頼人ばっかりだったら良いんだがな…」
ああ、うん。ルセフはファリーマの魔法談義にかなり困らされているんだな。
控え目にそう尋ねたアキトに、俺達は揃って苦笑を浮かべるとゆるりと首を振った。本当に残念だけど、そういう依頼人も結構いるんだよ。だから護衛依頼は二度と受けないなんて宣言してる冒険者もいたりする。
「まあそこまで酷くはなくても、普通なら依頼主は護衛と同じものは食べないな」
心配そうなアキトを安心させるように笑みを浮かべて、ルセフはそう続けた。
「というか、そもそも護衛にまで食べ物を用意したりしないんだよね」
ファリーマはそう言いながら、美味しい物に出会えて俺は嬉しいけどねと笑っている。まあ、護衛の分まで食事を用意する依頼人は、本当にごくわずかだよな。
カーディさんはそんな皆のやりとりに、明るく口を挟んだ。
「俺も元冒険者だから分かるけど、まあ色んな奴がいるよなぁ」
「ああ、もちろん良い依頼主もいるんだが…」
「滅多にいないんだよな…」
「本当に滅多にいないよな…」
「まともじゃないのはいっぱいいるのにな…」
ぽつぽつと言い合う皆の空気は、ひどく重い。俺も今までに受けた無茶な依頼を、ついつい思いだしてしまった。アキトだけが心配そうに俺達を見つめている。
「それにしても、こんなにうまい飯本当にもらって良かったのか?」
「ええ、私たちが食べたい物を選んだだけなので、口にあって良かったです」
にっこり笑ってさっきも言いましたけどおかわりもありますよと追加分を取り出したクリスに、ウォルターは嬉しそうに手を差し出した。
「クリスさんとカーディさんは、本当に依頼書に書かれてる通りの対応をしてくれるんだな」
しみじみと呟いたルセフに、クリスは不思議そうに尋ねる。
「そういう条件で依頼をしているんだから当然の事だと思うんですが…?」
「あー…うん、条件は俺が決めるんだーって依頼を受けてからバンバン条件を変えるくそ野郎に最近当たったからなぁ…」
そう言いきったウォルターは嫌悪感を一切隠さずに、心底嫌そうにそう言った。しかもその言葉を聞いたルセフまで、一瞬で眉をしかめる。
「うん、あれは歴代最悪のくそ依頼主だったな」
「あーうん、確かにあれは大変だった。しかも途中から魔法の話は禁止だとか言われたし」
「いや、でもあれはお前が条件破りの腹いせに質問責めにした上に、わざと難しい魔法理論の話ばっかり聞かせたからだろうが」
お前のせいで途中からちょっと同情しちゃったからなと、ウォルターは苦笑を洩らす。アキトが驚いた顔で視線を向ければ、ファリーマは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「だってあの依頼人、魔法研究の専門家を名乗ってたんだぜ?なのにあの程度の知識量って…あり得ないだろう?ああいう知識も実力も無いのに偉そうな奴は嫌いなんだ」
本当に魔法研究の専門家なら知らない筈が無い話題を振っただけだと、ファリーマはあっさりと続けた。
なるほど。魔法馬鹿と呼ばれるファリーマさんの逆鱗に触れたわけか。
「あ、そういえばファリーマは魔法が好きだって言ってたが、どういう魔法が好きなんだ?」
何げない様子でカーディさんがファリーマに向かってそう尋ねた瞬間、ルセフは天を扇ぎ、ウォルターは絶句し、ブレイズはそっと視線を反らした。
「カーディ!あんた聞いてくれるのか?良い奴だな!そうだなー俺は魔法ならまあ何でも好きだし嫌いな魔法は無いんだけど、特に自分が使えない魔法にはかなり興味があるな」
急に元気になって早口で喋りだしたファリーマの反応にも、カーディさんは少しも動じなかった。ただ穏やかに笑って尋ねる。
「自分が使えない魔法って、例えば?」
「俺はどちらかというと攻撃特化だからそれ以外の魔法だな。補助魔法は前に使える奴に会った事があるから、今一番気になってるのは強化魔法…かな?」
さらりとそう言ってのけたファリーマに、俺は正直に言うと少しだけ驚いた。今の補助魔法が使える奴というのは、まず間違いなくアキトの事だろう。補助魔法の話を聞いたファリーマが、大興奮してたのを知ってるから間違いは無いだろう。
だが補助魔法は扱いが難しい魔法だ。もしかしたらアキトが補助魔法を使える事を周りに隠しているかもしれない。その可能性を考えて、誰のという所だけをうまくボカシてみせた。頭の回転も早いし、意外に諜報とかに向いてるのかもしれないな。
「なあアキト、会えない間にもしかして使えるようになってたり…しないか?」
俺はじりじりと近づいてくるファリーマから庇うように、アキトに向かって腕を伸ばした。視線で牽制すれば、これ以上は近づかないよとファリーマは両手を上げてみせる。察しも良いのか。
「強化魔法は使えるようになってないです」
残念だなーとぼやくファリーマだったが、カーディさんが笑って声をかける。
「俺、強化魔法使えるぞ?」
「え、本当か!?強化魔法が使えるってひとに初めて会った!この依頼受けて良かったよ!あの、もし答えにくかったら答えなくても良いんだけど、一つだけ質問しても良いか?」
真剣な表情に変わったファリーマに、カーディさんはすぐに頷いた。
「ああ、いいぞ」
「その強化魔法は…生まれつき使えた?それとも成長するにつれて覚えたものか?」
「生まれつきだな。父親も使えたらしいから」
「やっぱり…遺伝式…なのか?過去に手に入れた魔法歴史書に書いてあった事は本当だったのか…それなら…あの本の…」
ぶつぶつと呟きだしたファリーマをじっと見つめていたルセフは、ふうとひとつ大きく息を吐いた。
「騒がせてすまないな。だがこうなった時は逆に静かになるから」
「そうなんですか?」
「今頭の中で色々分析してるんだろう」
だいぶ口から漏れてるけどなと、ウォルターもブレイズも慣れた様子でファリーマを眺めている。
「なるほど、ファリーマさんは研究家気質なんですね」
「あー、本当にそう言ってくれる依頼人ばっかりだったら良いんだがな…」
ああ、うん。ルセフはファリーマの魔法談義にかなり困らされているんだな。
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