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554.テント設営
ルセフさんに教えてもらった場所にいそいそと近づいていったけれど、そこに無造作に積み上げられているテントの数は四つだけだった。あれ?四つだけ?と俺はゆるりと首を傾げる。
「ん?アキト、どうかした?」
後ろから追いかけてきてくれたハルを振り返って、俺は尋ねる。
「ハル、この四つあるのってルセフさん達のパーティーの分のテントだよね?」
「うん、そうだろうね。先に俺達のテントも出しちゃおうか」
「あ、うん」
促されるままに自分の鞄に手を入れてテントを取り出しながら、俺はハルを見つめた。
「えっと、じゃあ、クリスさんとカーディのテントも、貰いに行かないとだね」
今もウマの世話をしてくれてるのに、二人の分だけここになかったから張らなかったなんてひどすぎるよね。そう思って提案したんだけど、ハルはああなるほどそれを気にしてたのかと笑みを浮かべた。
「アキト、クリスとカーディさんは今日はテントはいらないと思うよ」
テントはいらない…?え、テントはいるよね?寝ないの?一体どんな理由があればテントがいらないんだろうと色々と考えてはみたけれど、答えは一切出てこなかった。
「テントはいらないって……なんでいらないの?」
「一応後で二人に直接確認はするつもりだけど、今日は多分クリスもカーディさんも馬車で寝ると思うからね」
ハルによると今回みたいに馬車で移動してる時は、基本的に依頼人とか偉い人なんかが馬車の中で寝るっていうのが定番なんだって。
しかも昼間俺達が座ってたあの椅子が、バラシて組み立てると簡易のベッドに早変わりするらしい。何それ、すっごく面白そうだ。もし二人に許可を貰えたら、後で見せてもらえたりするかな。ワクワクしながら聞いていた俺に、不意にハルが尋ねてきた。
「馬車の中ならベッドがあるってのも理由ではあるんだけど、もう一つ大きな理由があるんだ。アキトは分かるじゃば?」
「えー…大きな理由?えっと、虫が来ないとか?」
俺は別に平気だから良いんだけど、野営してるとどうしても虫が寄ってくるんだよね。灯りの無い場所で火を起こすんだから仕方ない事なんだけどさ。
「ああ、虫が苦手な人なら、それも大きな理由になるかもしれないけど…それじゃ無いね」
すぐに否定せずに優しく笑って答えてくれるのが、すごくハルらしい。
「うーん…思いつかないや」
「正解は、もし何か不測の事態が起きた時――例えば魔物とか盗賊の襲来なんかがあった時に、守りやすくするためなんだ」
あーなるほど。だから依頼人とか偉い人にあえて馬車の中で寝て貰うのか。この世界の人達の危機管理能力って本当にすごいよね。いや、それだけ危険が身近にあるって事か。
「それに馬車の中にいてくれれば、最悪の事態になったら馬車ごと移動できるからね」
あの二人ならそういう意味での問題は無いけど、護衛のいう事なんて聞かない依頼人は本当に予想外の動きをするから面倒なんだよねとハルは遠い目をして呟いた。あ、駄目だ。ハルが何かを思い出してる。明らかに目がいつもと違う。
「ハ、ハル!そろそろテント張り始めようか!」
そんなハルの顔を見ていたくなくて慌てて声をあげれば、ハルは苦笑しながらもそうだねと明るく同意してくれた。
二人一緒になって順番にテントを張っていこうかって案も出たんだけど、最終的には二人別々にテントを張る事に決まった。
「どのテントを担当するか、アキトが決めて?」
ふふと楽し気に笑ったハルの優しさで、俺は組み立て方がばっちり分かる自分のテントに加えて、作りが単純そうなハルとブレイズのテントを担当する事になった。
ファリーマさんのはともかく、ルセフさんのとウォルターさんのテントは俺のよりも明らかに部品が多かったんだ。一体どこがどうなるのか、見ててもいまいち分からなかったんだよね。説明書が欲しいと切実に思う作りだった。
「じゃあ、始めようか」
「うん」
まずは自分のテントを組み立てて、次はハルのテントだ。組み立ててる所を見た事があるから、すこし悩みながらも無事に設営が終わった。
「アキト、手伝おうか?」
そんな言葉に驚いて振り返れば、ハルの後ろには三つのテントが並んでいるのが見えた。うわーあのややこしそうなテントまでもう終わったのか。
「ううん、これは自分でやりたい」
「ん、分かった」
ハルはそういうと思ってたと言いたげに、笑って俺の言葉を受け入れてくれた。
「よし、これで完成ー!」
ブレイズのテントを完成させてそう声をあげれば、ずっと見守ってくれていたハルは優しい笑みを浮かべた。
「お疲れ様、アキト」
「ハルもお疲れ様」
「でもアキトもだいぶテントの設営にも慣れてきたね」
「そうかな?ハルと比べたらまだまだ時間かかるけど…」
「そこはほら、俺のテント張り経験値が高いから?」
あありに真剣な顔でそう言い放ったハルに、俺は思わず噴き出してしまった。
「ん?アキト、どうかした?」
後ろから追いかけてきてくれたハルを振り返って、俺は尋ねる。
「ハル、この四つあるのってルセフさん達のパーティーの分のテントだよね?」
「うん、そうだろうね。先に俺達のテントも出しちゃおうか」
「あ、うん」
促されるままに自分の鞄に手を入れてテントを取り出しながら、俺はハルを見つめた。
「えっと、じゃあ、クリスさんとカーディのテントも、貰いに行かないとだね」
今もウマの世話をしてくれてるのに、二人の分だけここになかったから張らなかったなんてひどすぎるよね。そう思って提案したんだけど、ハルはああなるほどそれを気にしてたのかと笑みを浮かべた。
「アキト、クリスとカーディさんは今日はテントはいらないと思うよ」
テントはいらない…?え、テントはいるよね?寝ないの?一体どんな理由があればテントがいらないんだろうと色々と考えてはみたけれど、答えは一切出てこなかった。
「テントはいらないって……なんでいらないの?」
「一応後で二人に直接確認はするつもりだけど、今日は多分クリスもカーディさんも馬車で寝ると思うからね」
ハルによると今回みたいに馬車で移動してる時は、基本的に依頼人とか偉い人なんかが馬車の中で寝るっていうのが定番なんだって。
しかも昼間俺達が座ってたあの椅子が、バラシて組み立てると簡易のベッドに早変わりするらしい。何それ、すっごく面白そうだ。もし二人に許可を貰えたら、後で見せてもらえたりするかな。ワクワクしながら聞いていた俺に、不意にハルが尋ねてきた。
「馬車の中ならベッドがあるってのも理由ではあるんだけど、もう一つ大きな理由があるんだ。アキトは分かるじゃば?」
「えー…大きな理由?えっと、虫が来ないとか?」
俺は別に平気だから良いんだけど、野営してるとどうしても虫が寄ってくるんだよね。灯りの無い場所で火を起こすんだから仕方ない事なんだけどさ。
「ああ、虫が苦手な人なら、それも大きな理由になるかもしれないけど…それじゃ無いね」
すぐに否定せずに優しく笑って答えてくれるのが、すごくハルらしい。
「うーん…思いつかないや」
「正解は、もし何か不測の事態が起きた時――例えば魔物とか盗賊の襲来なんかがあった時に、守りやすくするためなんだ」
あーなるほど。だから依頼人とか偉い人にあえて馬車の中で寝て貰うのか。この世界の人達の危機管理能力って本当にすごいよね。いや、それだけ危険が身近にあるって事か。
「それに馬車の中にいてくれれば、最悪の事態になったら馬車ごと移動できるからね」
あの二人ならそういう意味での問題は無いけど、護衛のいう事なんて聞かない依頼人は本当に予想外の動きをするから面倒なんだよねとハルは遠い目をして呟いた。あ、駄目だ。ハルが何かを思い出してる。明らかに目がいつもと違う。
「ハ、ハル!そろそろテント張り始めようか!」
そんなハルの顔を見ていたくなくて慌てて声をあげれば、ハルは苦笑しながらもそうだねと明るく同意してくれた。
二人一緒になって順番にテントを張っていこうかって案も出たんだけど、最終的には二人別々にテントを張る事に決まった。
「どのテントを担当するか、アキトが決めて?」
ふふと楽し気に笑ったハルの優しさで、俺は組み立て方がばっちり分かる自分のテントに加えて、作りが単純そうなハルとブレイズのテントを担当する事になった。
ファリーマさんのはともかく、ルセフさんのとウォルターさんのテントは俺のよりも明らかに部品が多かったんだ。一体どこがどうなるのか、見ててもいまいち分からなかったんだよね。説明書が欲しいと切実に思う作りだった。
「じゃあ、始めようか」
「うん」
まずは自分のテントを組み立てて、次はハルのテントだ。組み立ててる所を見た事があるから、すこし悩みながらも無事に設営が終わった。
「アキト、手伝おうか?」
そんな言葉に驚いて振り返れば、ハルの後ろには三つのテントが並んでいるのが見えた。うわーあのややこしそうなテントまでもう終わったのか。
「ううん、これは自分でやりたい」
「ん、分かった」
ハルはそういうと思ってたと言いたげに、笑って俺の言葉を受け入れてくれた。
「よし、これで完成ー!」
ブレイズのテントを完成させてそう声をあげれば、ずっと見守ってくれていたハルは優しい笑みを浮かべた。
「お疲れ様、アキト」
「ハルもお疲れ様」
「でもアキトもだいぶテントの設営にも慣れてきたね」
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