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562.【ハル視点】アキトと馬車
いきなり噴き出したアキトの反応には、正直に言えば驚いた。まさか笑われるとは予想外の反応だったけれど、少し考えてみればテント張りの経験値という言い回しが面白かったんだろうなと理解はできた。
さっきの笑いの余韻を引きずっているらしいアキトに、俺はあえて真剣な表情を作ってから声をかけた。
「テント張りにももちろん経験値というのはあるから、間違っては無いだろう?」
俺の言葉に一瞬だけきょとんとしたアキトは、次の瞬間には声をあげて笑い出した。うん、何がそんなに刺さったのかはっきりとは分からないけれど、アキトが楽しそうで何よりだ。
やっとアキトの笑いがひと段落した所で、馬車の影からカーディさんとクリスがひょこっと顔を出した。こっちだと手を振れば、二人は揃って俺達の方へと歩いてきた。
「わ、もうこんなに用意が終わってるのか」
「すこし時間をかけ過ぎましたかね…?」
クリスは心配そうにそう尋ねてきたが、ウマの世話だって立派な役割だろう。少なくとも俺は助かった。もしアキトがウマ当番になって、目の前でウマの事を褒めちぎられたら嫉妬するかもしれないからな。
「気にしなくて良いと思うぞ。はやいのはあっちのパーティーの手際が良いからだしな。それに俺とアキトも、テントを張っただけだよ」
苦笑しながらそう告げれば、アキトもうんうんと頷いて同意してくれた。
「そうなのか…すごいな」
「すごいよねー俺のやる事なくなるかと思ったよ」
「俺は冒険者時代も臨時パーティーぐらいしか組んだ事がないんだ」
「あ、そうなんだ?」
「ああ。本当のパーティーはやっぱりすごいんだな」
嬉しそうにルセフ達のパーティーについて話す二人の声を聞きながら、俺はクリスに話しかけた。
「あ、一応聞いておくけど、クリスとカーディさんは、今日は馬車で良いんだよな?」
「ええ、折角なら今日は皆さんと一緒にテントっていうのもありかと思ったんですが…カーディに叱られましたから諦めます」
「なんだ、そうなのか?」
俺がちらりと視線を向ければ、カーディさんは苦笑を浮かべた。
「いくらテントの方が楽しそうでも、依頼人なら馬車で寝るべき…そうだろ?」
「あー…うん、まあ二人の事はそういう意味で心配はしてないけど、馬車の方が守りやすくはなるから護衛としては助かるよ」
「馬車で寝てくれって説得するのは面倒すぎるからな…」
うん、分かるよ。そう内心で同意しながら、俺は重々しく頷いた。遠い目をしたカーディさんの反応に、クリスは慌てた様子で私は今日はちゃんと馬車で寝ますからねと力強く宣言している。
「あ、馬車の中のベッドの組み立ては、私がしてきますね。カーディはゆっくりしててください」
クリスはにっこりと笑ってそう言い置くと、カーディさんを俺達の前に残したまま軽い足取りで馬車の方へと歩いていった。
「一緒に行かなくて良いの?カーディ」
「ああ、大丈夫だ。というか、あんな風に言われた時について行ったら…拗ねるから」
なるほど、それはすごく簡単に想像できるな。
「そっか…じゃあとりあえず座って話でもする?」
アキトはそう言いながら、キョロキョロと視線を彷徨わせた。
普通の野営地とは違って、停留場には腰を下ろせる切り株等は無い。馬車の移動が最優先だからと、森を切り開く際にもあえて残す事はしないんだよな。
説明を聞いたアキトは、切り株があったら確かに危険だよねと頷いてくれた。
「じゃあ、どうするの?」
「こういう時は、マントだな」
「うん、そうだね」
俺達の言葉を聞くなり、アキトは素直に鞄に手を入れた。
マントにはある程度の厚みがあるから、地面の凹凸も気にならない。しかもよほどの安物か粗悪品でなければ、ほとんどのマントには防水機能が付いている。俺とアキトのマントも当然防水機能付きだ。
今の時期なら特に問題はないが、寒い時期に地面に直接腰を下ろすと体温を奪われるからな。それを防ぐためにも覚えておくべき、冒険者…いや、旅人の知恵だな。
それぞれの鞄から取り出したマントを地面に敷いてから、俺達はそこに腰を下ろした。
「あ、馬車の中のベッド見てみたかったんだけど…言うの忘れてた」
ぽつりとそう呟いたアキトに、カーディさんは見たかったのか?と軽く尋ねた。
「うん、興味あって」
「ああ、馬車自体が初めてなんだっけ。じゃあ組み立て終わってから覗きにいくか」
「良いの?」
「ああ、別に良いと思うぞ。ハルとアキトなら、クリスも別に気にしないだろ!」
カーディさんがそう断言すると、アキトは嬉しそうに笑みを浮かべた。
うーん、伴侶と二人で眠る予定の今夜の寝床を見せてくれなんて言われて、それほど簡単に受け入れてくれるだろうか?アキトががっかりしないと良いなと考えながら、俺は二人の会話に耳を傾けていた。
組み立てが終わったと報告にきたクリスに、カーディさんはアキトの希望をすぐに伝えてくれた。
「ええ、二人なら大丈夫ですよ」
想像以上にあっさりと許可がでたな。カーディさんの予想通りというところか。
「え、ここが外れて、そこにはまるの?」
簡易ベッドの説明を聞いているアキトは、目をキラキラさせて楽しんでいる。
「ここに枕が収納されてるんですよ」
「そんな所に!?」
うーん、やっぱりいつか馬車は買おう。俺は密かに決意しながら、楽し気なアキトの姿を眺めていた。
さっきの笑いの余韻を引きずっているらしいアキトに、俺はあえて真剣な表情を作ってから声をかけた。
「テント張りにももちろん経験値というのはあるから、間違っては無いだろう?」
俺の言葉に一瞬だけきょとんとしたアキトは、次の瞬間には声をあげて笑い出した。うん、何がそんなに刺さったのかはっきりとは分からないけれど、アキトが楽しそうで何よりだ。
やっとアキトの笑いがひと段落した所で、馬車の影からカーディさんとクリスがひょこっと顔を出した。こっちだと手を振れば、二人は揃って俺達の方へと歩いてきた。
「わ、もうこんなに用意が終わってるのか」
「すこし時間をかけ過ぎましたかね…?」
クリスは心配そうにそう尋ねてきたが、ウマの世話だって立派な役割だろう。少なくとも俺は助かった。もしアキトがウマ当番になって、目の前でウマの事を褒めちぎられたら嫉妬するかもしれないからな。
「気にしなくて良いと思うぞ。はやいのはあっちのパーティーの手際が良いからだしな。それに俺とアキトも、テントを張っただけだよ」
苦笑しながらそう告げれば、アキトもうんうんと頷いて同意してくれた。
「そうなのか…すごいな」
「すごいよねー俺のやる事なくなるかと思ったよ」
「俺は冒険者時代も臨時パーティーぐらいしか組んだ事がないんだ」
「あ、そうなんだ?」
「ああ。本当のパーティーはやっぱりすごいんだな」
嬉しそうにルセフ達のパーティーについて話す二人の声を聞きながら、俺はクリスに話しかけた。
「あ、一応聞いておくけど、クリスとカーディさんは、今日は馬車で良いんだよな?」
「ええ、折角なら今日は皆さんと一緒にテントっていうのもありかと思ったんですが…カーディに叱られましたから諦めます」
「なんだ、そうなのか?」
俺がちらりと視線を向ければ、カーディさんは苦笑を浮かべた。
「いくらテントの方が楽しそうでも、依頼人なら馬車で寝るべき…そうだろ?」
「あー…うん、まあ二人の事はそういう意味で心配はしてないけど、馬車の方が守りやすくはなるから護衛としては助かるよ」
「馬車で寝てくれって説得するのは面倒すぎるからな…」
うん、分かるよ。そう内心で同意しながら、俺は重々しく頷いた。遠い目をしたカーディさんの反応に、クリスは慌てた様子で私は今日はちゃんと馬車で寝ますからねと力強く宣言している。
「あ、馬車の中のベッドの組み立ては、私がしてきますね。カーディはゆっくりしててください」
クリスはにっこりと笑ってそう言い置くと、カーディさんを俺達の前に残したまま軽い足取りで馬車の方へと歩いていった。
「一緒に行かなくて良いの?カーディ」
「ああ、大丈夫だ。というか、あんな風に言われた時について行ったら…拗ねるから」
なるほど、それはすごく簡単に想像できるな。
「そっか…じゃあとりあえず座って話でもする?」
アキトはそう言いながら、キョロキョロと視線を彷徨わせた。
普通の野営地とは違って、停留場には腰を下ろせる切り株等は無い。馬車の移動が最優先だからと、森を切り開く際にもあえて残す事はしないんだよな。
説明を聞いたアキトは、切り株があったら確かに危険だよねと頷いてくれた。
「じゃあ、どうするの?」
「こういう時は、マントだな」
「うん、そうだね」
俺達の言葉を聞くなり、アキトは素直に鞄に手を入れた。
マントにはある程度の厚みがあるから、地面の凹凸も気にならない。しかもよほどの安物か粗悪品でなければ、ほとんどのマントには防水機能が付いている。俺とアキトのマントも当然防水機能付きだ。
今の時期なら特に問題はないが、寒い時期に地面に直接腰を下ろすと体温を奪われるからな。それを防ぐためにも覚えておくべき、冒険者…いや、旅人の知恵だな。
それぞれの鞄から取り出したマントを地面に敷いてから、俺達はそこに腰を下ろした。
「あ、馬車の中のベッド見てみたかったんだけど…言うの忘れてた」
ぽつりとそう呟いたアキトに、カーディさんは見たかったのか?と軽く尋ねた。
「うん、興味あって」
「ああ、馬車自体が初めてなんだっけ。じゃあ組み立て終わってから覗きにいくか」
「良いの?」
「ああ、別に良いと思うぞ。ハルとアキトなら、クリスも別に気にしないだろ!」
カーディさんがそう断言すると、アキトは嬉しそうに笑みを浮かべた。
うーん、伴侶と二人で眠る予定の今夜の寝床を見せてくれなんて言われて、それほど簡単に受け入れてくれるだろうか?アキトががっかりしないと良いなと考えながら、俺は二人の会話に耳を傾けていた。
組み立てが終わったと報告にきたクリスに、カーディさんはアキトの希望をすぐに伝えてくれた。
「ええ、二人なら大丈夫ですよ」
想像以上にあっさりと許可がでたな。カーディさんの予想通りというところか。
「え、ここが外れて、そこにはまるの?」
簡易ベッドの説明を聞いているアキトは、目をキラキラさせて楽しんでいる。
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