生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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568.前半組の見張りスタート

 それじゃあ先に見張りよろしくねと口にした後半担当の三人は、笑顔でテントへと向かっていった。

 テントの入口でちらりとこちらを振り返ったハルに、おやすみと声に出さずに呟いてから小さく手を振る。ハルは一瞬だけきょとんとしたけど、次の瞬間にはにっこりと笑っておやすみと口を動かしてくれた。

 任務中の睡眠時間の確保は翌日の護衛の質にも関わるからって、ちゃんとした冒険者ほど時間を無駄にしないらしい。ルセフさんもウォルターさんも、もちろんハルもさすがに一流なんだなぁ。

 人数が半分に減っただけなんだけど、一気に静かになったな。背後の森の暗さもあいまって、少しだけ寂しい気持ちが湧いてきた。

「ねえ、アキト。こっち移動してきたら?」

 ブレイズは小声でそう声をかけてきた。今は俺だけが、焚火を挟んで向かい側に座ってる状態だ。

 うん、確かにここじゃあちょっと喋りにくいよな。テントで寝てるみんなの邪魔もしたくないし。俺はブレイズの手招きに応じて、すぐにレジャーシート兼クッション代わりのマントを掴んで移動を始めた。

「こっちこっち」
「うん」

 って、あれ…?俺は二人の横の端っこに座るつもりだったんだけど、気づいたらブレイズとファリーマさんがささっと移動していたみたいだ。焚火を回り込んで二人に近づいた時には、もう既に二人の間に空間ができてしまっていた。しかもこれ明らかに人が一人座れるぐらいの幅だよね。

「えーと…俺が真ん中?」

 一応と確認してみれば、あっさりと頷かれてしまった。

「うん、アキトはここね」
「そうそう、遠慮せずに真ん中に来いよ」

 二人揃ってニコニコと楽しそうに笑いながらそう言われたら、さすがに俺も嫌だとは言えないよね。実際、二人の間に座るのが嫌なわけじゃないしと、俺は二人の間にマントを敷いた。

「おじゃましまーす」

 一声かけてから腰を下ろすと、ブレイズもファリーマさんも満足そうな笑みを浮かべた。

「それじゃあ、何から話そうか?」

 わくわくした様子のブレイズに、ファリーマさんは笑って答えた。

「お前らがしたがってたお土産交換からで良いと思うぞ」
「え、ファリーマさん、良いの?」
「ああ、良いよ。あ、一応言っておくけど、もちろん後で魔法の話もさせて貰うからな」

 順番は譲るけど、話はすると宣言したファリーマさんに俺達はコクコクと頷いた。

「うん、それはもちろん。ありがとう、ファリーマさん」
「ああ、どういたしまして」

 ニパッと子どものような笑みを浮かべたブレイズは、じゃあ早速と言わんばかりに魔導収納鞄に勢いよく手を突っ込んだ。

「アキト、まずは俺のお土産から、見てくれる?」
「うん!何があるのか楽しみ」
「まずはこれ!」

 まずブレイズが取り出したのは、小ぶりな布製の鞄のようなものだった。一体何が入ってるんだろうと見つめていると、アキトが自分で開けてみてとすぐに手渡された。ワクワクしながらそーっとその鞄を覗いてみれば、小さ目の木の筒がいくつも入っているのが見えた。ざっと数えただけでも8こかな。

 蓋だけ色分けされてる謎の木製の筒が8こ入ってるのは分かったけど――うん、見てみたけど何が入ってるのか全く想像がつかない。

「えっと…ブレイズ。これって…」

 戸惑いつつそう尋ねた俺に、ブレイズは嬉しそうに答えた。

「これはねー色んな調味料が入ってるんだ」
「え、この中に!?」
「うん、臭みを消す薬草とか、上質なスパイスとか…冒険者なら持ってて損は無いってぐらい使いやすいのが多かったから、良いかなーと思って選んだんだけど…あの、もしかしてこういうのもう持ってたりする?」

 急に不安になったのか小声で尋ねてくるブレイズの質問に、俺は慌てて首を振った。

「持ってない!料理も作ってみたいって思ってた所だから、すごく嬉しいよ!」

 この世界の調味料なら俺には馴染みの無いものかもしれないけど、それならそれでハルと二人で試行錯誤するのも楽しそうだよね。一緒に料理…か。それも良いな。

「良かったーあ、使い方の組み合わせはここにある紙に書いてあるからね」

 あ、試行錯誤しなくてもきっちり説明書があるんだ。

「それなぁ、ブレイズが店の人にぐいぐい聞きに行ったせいで気に入られて、特別に付けてもらった紙だから」
「え、そうなの?そんなすごい紙、俺がもらっちゃって良いの?」

 慌てて尋ねた俺へのブレイズの返事は、だってそのために買ったんだから、むしろ貰ってくれないと困るというあっさりしたものだった。
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