生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
570 / 1,561

569.俺の番

「ありがとう、じゃあ大事に使わせてもらうね」

 ブレイズは大事にとっておくとかより、使って欲しいって言いそうな気がするな。なんとなくだけどそう思って口にした俺の言葉に、ブレイズは嬉しそうに目を細めて笑ってくれた。

「どういたしまして」

 へへーと笑いながら差し出されたお土産の鞄を大事に両手で受け取って、それじゃあ今度は俺の番だなと自分の魔導収納鞄に手を入れた。

 喜んでくれるかなとワクワクしてたんだけど、そこでふと気になる事に気づいてしまった。ブレイズ達のパーティーはは依頼を受けてイーシャルに来たんだって言ってたけど、トリク祭り自体には参加してたのかな。

 いや、だって俺の持ってるお土産って、ほとんどがイーシャル領で買ったものだからね。変わった物もいくつかは買ってるけど、トリク祭りで人気のお土産とかも選んでるから、もし参加してたなら自分で買ってるかもしれないってことだよね。

 うーん、こうなったら先に聞くしかないかな。

 そう決意した俺は、自分の魔道収納鞄の中に手を入れたまま視線をあげた。

「えーと、ごめんなさい。二人に一個質問があるんですけど…」
「うん?」
「どうしたの、アキト?」
「あのさ、みんなってトリク祭りには参加してたんですか?」

 なんでいきなりそんな事を聞かれるんだろう?そう言いたげにきょとんと見つめてくるブレイズとファリーマさんに、俺は慌てて付け加える。

「よく考えたら、俺の持ってるお土産ってほとんどがトリク祭りで買ったものなんだよね。だからみんなも参加してたならもしかしてもう買ってるかもしれないなーって…今気づいたんだけど」

 先に我に返ってくれたのはファリーマさんだった。俺を安心させるような笑みを浮かべて口を開いた。

「アキト、俺達はさ、昨日の夜中にギリギリでイーシャルに着いたんだ」
「あ、そうなんですか?」
「そうなんだよ。なんならもしかして依頼に間に合わないかもなーって、途中で考えちゃったぐらいにギリギリだったよ」

 あのルセフさんがリーダーとして時間を管理してるのに?と一瞬だけ考えてしまったけど、ルセフさん達のパーティーはその前にも依頼を受けてたらしいから、それで…かな。しかもファリーマさんいわく最悪の依頼人だったって言ってたし、それはもう色々あったんだろうな。

 想像するだけでも疲れてきそうだ。そんな事を考えていると、不意にブレイズがびっくりした様子でファリーマさんに話しかけた。

「え、ファリーマさん、もしかしたら間に合わないかもーって考えてたの?」
「なんだよ、さすがにあれは考えても仕方ないだろ?」

 いくら俺でも転移魔法は使えないんだしさと少し悔しそうに呟いたファリーマさんに、ブレイズはむしろ尊敬の眼差しで続けた。

「そうじゃなくてさー、俺なんて一回完全に諦めたよ?」
「は?おまえ、途中で諦めてたのか?」

 いつでも前向きなブレイズが!?と俺もファリーマさんも思わず驚いてしまった。

「だってさ、トリク祭りのせいでウマぜーんぶ出払ってて借りれなかったし、かといって徒歩で移動しようとしても道はトリク祭りに向かう人で混んでるし…あれは諦めるよ」
「あー…そうだよなぁ」

 なるほど。あれだけの人がイーシャルに集まってるんだから、周りの街や村からも移動手段が無くなってたりするのか。それだけトリク祭りが人気って事もあるんだろうけど。

「まさかウォルター兄ちゃんが、知り合いの冒険者と交渉して人数分のウマを調達してくるとは思わなかったからね」
「あーそれにリーダーがウマの通れる抜け道知ってたのもかなり予想外だったよな」
「うん、あれはびっくりした」

 そんな大変な思いをして、みんなはようやくイーシャルに辿り着いたんだな。

「すごく大変だったんですね」
「ああいや、ごめん。ちょっと話がそれてたな」
「いえ。二人のお話楽しかったので気にしないでください」

 ああ、仲良しなんだなーって伝わってくるから、二人がパーティーメンバーの事を話してるのを聞くのは本当に楽しかった。

「ありがとうな。まあ、それでな、疲れてたから到着後はすぐに宿に向かったから、店は前を通ったぐらいで買い物はほとんどできてないな」
「夜食だけ屋台で買って、食べたらすぐに寝ちゃったんだ…ちょっと残念だったな」

 初めてのトリク祭りだったのにと、ブレイズはちょっと不満そうだ。へたりと寝てしまっている耳が見える気がしてくる。美味しいものとか珍しいものとかいっぱい探したかったというブレイズに、俺はあわてて鞄に入れたままだった手を動かした。

「あ、じゃあこれ!」

 そういいながら俺が魔導収納鞄から取り出したのは、カラフルな色んな果物飴の入った大きめの瓶だ。カットしてある果物に薄めの飴がかかってるあの果物飴、本当に美味しかったんだよね。すっかり気に入ったから、みんなへのお土産用にたくさん買ってきたんだ。

 喜んでくれるかなと俺はブレイズの反応を待った。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。