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571.もうひとつのお土産
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ブレイズは誰かのためにお土産を選ぶのは初めてだったって言ってたけど、実は俺もそんなにきちんとお土産を選んで買ったっていう記憶は無い。
修学旅行の時はもちろん両親にお土産を買ったけど、あれは自分で選んだっていうより周りの勢いに乗せられて買っただけな気がするんだよな。
それ以外っていうと…帰省するんだって話をたまたました友人達と、それぞれの地元の美味しいものを買って帰って物々交換したのぐらいかな。珍しいものから名前だけ知ってるものまで、色んなお菓子や食べ物が集まってすごく楽しかった。でもあれも食べ物縛りだったから、また違うかな。
だから自分の意思で誰かのためにお土産を選ぶのって考えたら、俺ももしかしたら初めてかもしれない。
人のためにって選んだお土産が喜んでもらえるのって、こんなに嬉しいんだな。すこしでも油断すると、ついついへらりと笑ってしまいそうになる。
「あ、アキト。俺、もう一種類お土産があるんだー!」
「え…俺ももう一種類あるよ?」
二人して無言のまま見つめ合ってから、思わずクスクスと笑い合う。
「買いすぎたかなーと思ったけど、どうしてもこれも贈りたくてさ」
「あーうん、俺も全く一緒だよ」
もし万が一そんなに受け取れないよって受け取って貰えなかったら、自分たちで消費すれば良いし。そう自分に言い聞かせながら買ったんだよな。
「じゃあ同時に見せあいっこしようか」
「うん、そうだね。そうしよう」
俺達のそんなやりとりを微笑ましそうに聞いていたファリーマさんは、面白そうに笑いながら口を開いた。。
「それじゃあ、俺が数を数えようか?」
「ファリーマさん、ありがと!よろしく!」
「ありがとうございます。お願いします!」
「まかせろ」
ファリーマさんからの目くばせを合図に、俺達は二人同時にそれぞれ自分の魔導収納鞄に手を入れた。
「いくぞー3、2、1…0!」
ゼロのかけ声と同時に、俺は鞄からさっと小ぶりの瓶を取り出した。透明の瓶には青いリボンが可愛らしく巻かれている。
これはハルと屋台巡りをしてた時にたまたま見かけた、通りに面したお店で買ったものだ。お客さんがたくさん集まっていて一際賑わってたから、どうしても気になって立ち寄ってみたんだ。
長い列に並んでいた時は何のお店かすら知らなかったんだけど、周りから聞こえてくる声を聞きながらここは食べ物屋さん?いやお酒屋さんなのかな?とハルと一緒に推理しながら待つのはかなり楽しかった。
結果としては俺達の予想通りのお酒屋さんだったんだけど、売っているものはかなりの予想外だった。
普段はたくさんの種類のお酒を取りそろえた専門店らしいんだけど、なんとトリク祭りの間は販売するのは一種類のみ――トリクの花と果物を合わせて作った果実酒だけなんだって。
しかもこのお酒、名前も『トリク』な上に、毎年トリク祭りの日に初めて売りに出されるっていうこだわりっぷりらしい。売れ残れば祭りが終わっても販売するって言いつつ、毎年たった二日で完売してしまうそうだ。
つまり一種類しか商品が無いと知った上で、それでも買うために長蛇の列に並ぶほどのお酒って事だ。そんなの絶対美味しいよね。
臨時でパーティーを組んでもらったあの時、ルセフさんもウォルターさんもファリーマさんも、それにブレイズもそれぞれ美味しそうにお酒を飲んでたから、美味しくて珍しいお酒なら喜んでもらえるかと思ったんだ。
さあブレイズの反応はと視線をあげれば、ブレイズは鞄から取り出した真っ赤な瓶を握りしめたまま俺の方を見つめていた。
「アキト、それの中身って…なに?」
「トリクっていう名前の、トリク祭りで初売りするお酒だよ」
「トリク…」
これってもしかして…もしかする?俺達どれだけ気が合うんだよ。
「あの、ブレイズの持ってる瓶の中身って…?」
「俺のも酒だよ。サースフェールっていう有名なやつ」
やっぱりそうだよね。
ちなみにブレイズの説明によると、サースフェールはかーなーりー度数が強いお酒らしい。そのまま飲むのは余程の酒好きかドワーフ、あとは無謀な馬鹿ぐらいらしい。
へーこの世界ってドワーフいるんだ。ゲームとかファンタジーなお話だとよく出てくるよね、ドワーフ。物作りが得意だとか、凄腕の鍛冶師だとか作品によっていろいろだけど、総じて酒豪でお酒好きって印象がある。
これは多分知ってて当然な事だろうから反応はしないけどね。覚えてたら今度ハルに聞いてみようかな。
「あ、でも、これを選んだ理由はね、果実水にちょっと足して飲むとすごく美味しいからなんだ。アキト、果実水好きでしょう?」
「うん、果実水ばっかり飲んでるよ」
「それにアキトは結構お酒も強いから、いけるかなーと思って」
「ありがとう、すごく嬉しい」
割って飲むお酒はこの世界では初めて聞いたかもしれない。果実水によっても味が全然変わるんだろうなと思うと、どれにしようかと想像するだけでもワクワクする。
俺の果実水好きを知ってるハルが色んな所で買い集めてくれてるから、俺の鞄の中だけでもたくさんの種類があるんだよね。
修学旅行の時はもちろん両親にお土産を買ったけど、あれは自分で選んだっていうより周りの勢いに乗せられて買っただけな気がするんだよな。
それ以外っていうと…帰省するんだって話をたまたました友人達と、それぞれの地元の美味しいものを買って帰って物々交換したのぐらいかな。珍しいものから名前だけ知ってるものまで、色んなお菓子や食べ物が集まってすごく楽しかった。でもあれも食べ物縛りだったから、また違うかな。
だから自分の意思で誰かのためにお土産を選ぶのって考えたら、俺ももしかしたら初めてかもしれない。
人のためにって選んだお土産が喜んでもらえるのって、こんなに嬉しいんだな。すこしでも油断すると、ついついへらりと笑ってしまいそうになる。
「あ、アキト。俺、もう一種類お土産があるんだー!」
「え…俺ももう一種類あるよ?」
二人して無言のまま見つめ合ってから、思わずクスクスと笑い合う。
「買いすぎたかなーと思ったけど、どうしてもこれも贈りたくてさ」
「あーうん、俺も全く一緒だよ」
もし万が一そんなに受け取れないよって受け取って貰えなかったら、自分たちで消費すれば良いし。そう自分に言い聞かせながら買ったんだよな。
「じゃあ同時に見せあいっこしようか」
「うん、そうだね。そうしよう」
俺達のそんなやりとりを微笑ましそうに聞いていたファリーマさんは、面白そうに笑いながら口を開いた。。
「それじゃあ、俺が数を数えようか?」
「ファリーマさん、ありがと!よろしく!」
「ありがとうございます。お願いします!」
「まかせろ」
ファリーマさんからの目くばせを合図に、俺達は二人同時にそれぞれ自分の魔導収納鞄に手を入れた。
「いくぞー3、2、1…0!」
ゼロのかけ声と同時に、俺は鞄からさっと小ぶりの瓶を取り出した。透明の瓶には青いリボンが可愛らしく巻かれている。
これはハルと屋台巡りをしてた時にたまたま見かけた、通りに面したお店で買ったものだ。お客さんがたくさん集まっていて一際賑わってたから、どうしても気になって立ち寄ってみたんだ。
長い列に並んでいた時は何のお店かすら知らなかったんだけど、周りから聞こえてくる声を聞きながらここは食べ物屋さん?いやお酒屋さんなのかな?とハルと一緒に推理しながら待つのはかなり楽しかった。
結果としては俺達の予想通りのお酒屋さんだったんだけど、売っているものはかなりの予想外だった。
普段はたくさんの種類のお酒を取りそろえた専門店らしいんだけど、なんとトリク祭りの間は販売するのは一種類のみ――トリクの花と果物を合わせて作った果実酒だけなんだって。
しかもこのお酒、名前も『トリク』な上に、毎年トリク祭りの日に初めて売りに出されるっていうこだわりっぷりらしい。売れ残れば祭りが終わっても販売するって言いつつ、毎年たった二日で完売してしまうそうだ。
つまり一種類しか商品が無いと知った上で、それでも買うために長蛇の列に並ぶほどのお酒って事だ。そんなの絶対美味しいよね。
臨時でパーティーを組んでもらったあの時、ルセフさんもウォルターさんもファリーマさんも、それにブレイズもそれぞれ美味しそうにお酒を飲んでたから、美味しくて珍しいお酒なら喜んでもらえるかと思ったんだ。
さあブレイズの反応はと視線をあげれば、ブレイズは鞄から取り出した真っ赤な瓶を握りしめたまま俺の方を見つめていた。
「アキト、それの中身って…なに?」
「トリクっていう名前の、トリク祭りで初売りするお酒だよ」
「トリク…」
これってもしかして…もしかする?俺達どれだけ気が合うんだよ。
「あの、ブレイズの持ってる瓶の中身って…?」
「俺のも酒だよ。サースフェールっていう有名なやつ」
やっぱりそうだよね。
ちなみにブレイズの説明によると、サースフェールはかーなーりー度数が強いお酒らしい。そのまま飲むのは余程の酒好きかドワーフ、あとは無謀な馬鹿ぐらいらしい。
へーこの世界ってドワーフいるんだ。ゲームとかファンタジーなお話だとよく出てくるよね、ドワーフ。物作りが得意だとか、凄腕の鍛冶師だとか作品によっていろいろだけど、総じて酒豪でお酒好きって印象がある。
これは多分知ってて当然な事だろうから反応はしないけどね。覚えてたら今度ハルに聞いてみようかな。
「あ、でも、これを選んだ理由はね、果実水にちょっと足して飲むとすごく美味しいからなんだ。アキト、果実水好きでしょう?」
「うん、果実水ばっかり飲んでるよ」
「それにアキトは結構お酒も強いから、いけるかなーと思って」
「ありがとう、すごく嬉しい」
割って飲むお酒はこの世界では初めて聞いたかもしれない。果実水によっても味が全然変わるんだろうなと思うと、どれにしようかと想像するだけでもワクワクする。
俺の果実水好きを知ってるハルが色んな所で買い集めてくれてるから、俺の鞄の中だけでもたくさんの種類があるんだよね。
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