生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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575.【ハル視点】組み分け

 野営時に重要な事というのはいくつも存在しているが、その中の一つに食べた物の後始末をしっかりとするというものがある。初めてこの決まりを聞いた新人はなかなか信じてくれないが、これがかなり重要なものだ。

 おろそかにすれば料理の香りに釣られて、魔物や野生動物が集まってくるかもしれない。実際にそれで魔物に襲われたなんて事件があったから、決まりになってるんだからな。

 急いでいる時はとりあえず魔導収納鞄にしまっておけと部下には指導していたと話せば、アキトは微妙な顔で黙り込んでしまった。それは何となく嫌だなと言ったアキトは、あっと思いついたように満面の笑みを浮かべた。

「俺が浄化魔法かけるのはどう?」
「…良いのか?」
「うん、みんなのもまとめてかけるよ」

 ああ、まあここにいる奴らにはアキトの豊富な魔力量も精密な魔力操作力もバレてるから良いか。そう思って立ち上がって皿を集めていけば、あちら側からはウォルターが集めてきてくれた。

「ウォルター、ありがとう」
「いや、俺達も助かるからな」

 あっという間に目の前に集められたお皿に、アキトはすこしの躊躇もなくまとめて浄化魔法をかけた。ファリーマは、お皿の目の前に座り込んで笑顔で観察中だ。彼は本当にぶれないな。



 アキトのおかげですぐに終わったと全員でお礼を言ってから、俺達はそれぞれ好きな飲み物を取り出して焚火の近くに腰を下ろした。

「ねえ、ハル?」
「ん?何?」
「背後には真っ暗な夜の森があるのに、この停留場はのんびりした空気がある気がするんだけど…なんでだろ?」
「ああ、それは近くに魔物の気配が一切ないからじゃないかな」

 気配探知が使えない筈なのに、そこまで察知できるのはすごい事だと思う。

「魔物の気配自体は普通にあるけど、近づいてこないんだよね」
「それって、なんで?」
「俺とアキト、それにルセフ達のパーティー、あとは先客の冒険者も強い人ばっかりだからな…今日は魔物の方が避けていくんじゃないかな」

 アキトが浄化魔法のために魔力を練り出した瞬間、あちらのリーダーはこっそりとこちらの様子を伺っていたからな。魔力の時点で反応できて、かつ無駄に騒がずに警戒だけを強める。かなり有能だと思う。

「そうなんだ」

 アキトはへーと呟やきながら先客の方へと視線を向けた。あちらはあちらでのんびりと過ごしているようで、風に乗ってたまに笑い声が聞こえてくる。

 不意に夜空を見上げたアキトは、雲の切れ目から見える星を見てふわりと笑みを浮かべた。本当にアキトは星が好きだな。もっと綺麗に星が見えたら、もっと喜んでもらえるのにな。少しだけ残念に思いながら、俺はアキトに声をかけた。

「ちょっと雲が多いね」
「うん、でも星も綺麗だよ。ハルと一緒だから余計に綺麗に見える」

 アキトがぽつりとこぼした嬉しい言葉に、自然と笑みが浮かんでしまう。うん、確かに今日の星も綺麗に見えるな。俺はアキトと一緒に、黙って星を見上げた。



 夜もだいぶ深まってきた所で、クリスとカーディさんは今夜の寝床である馬車の中へと戻っていった。

 まあ、クリスは皆と話すのが楽しいからまだまだ外にいたいって感じだったんだが、そろそろ戻るぞってカーディさんに手を引いて連れて行かれたんだがな。

 いつまでも依頼人が外にいたら護衛が困るんだって言い聞かせながら、手を引かれて嬉しそうなクリスと一緒に、カーディさんは馬車の中に消えていった。

 あれは間違いなく、手を引いてほしくて我儘を言ってみたんだろうな。おそらくカーディさんはそれを理解した上で甘やかしてるんだろう。お似合いの二人だよ。

 残された俺達は、六人全員で顔を見合わせた。

「それじゃあ見張りを決めようか」
「そうだな」
「今日は六人もいるから、見張りも楽だよな」

 定番の二人組で組んだとしても三組も出来るんだから、当然見張りの受け持ち時間も少なくて済む。

 このメンバーなら、誰と組む事になっても、特に問題は無さそうだな。アキトの友人であるブレイズと、年下の可愛い後輩扱いをしているルセフとファリーマ、ウォルターだからな。誰に決まっても、アキトに手を出されないかと心配する必要は無さそうだ。

 すぐに決まるだろうと思った組み分けは、思いのほか難航した。

「だから、俺はアキトと一緒に魔法談義がしたいんだって!再会した時は譲ってやっただろ、ブレイズ」

 ファリーマはそう言って、一歩も譲らない。

「確かにそれはそうだけど、俺だってアキトともっと色々話したい!それにお土産交換だってしたいんだよ?」

 ブレイズは上目遣いでファリーマを見つめながら、悲しそうにそう口にしている。あ、ファリーマが身じろいだな。さすがに年下の特権を上手く使うな。

「あー俺は別に誰と一緒でも問題はねぇんだけど、どうせならハルと話をしたいな」

 ウォルターがそう言ったのには、少しだけ驚いた。まさか俺と組みたいと言われるとは思っていなかったからな。

「俺、か?」
「ああ、同じ前衛だし、戦術とかにも詳しそうだから色々話てみたいんだよな。嫌なら断ってくれても良いんだぞ?」
「ああ、いや、俺も前衛について話が聞けるんだからそれは構わないが…」

 そう答えかけた俺に、横から声がかかる。

「ちょっと待ってくれ、俺もハルと情報交換がしたいんだが…」

 ルセフまでがそう言い出したのには、俺はさらに驚いた。視界の端でアキトがさすがはハルと言いたげな表情をしているのが、くすぐったくも嬉しい。

「それこそさっき食事の後にしてただろう?」
「あんな少しの時間で情報交換が終わるわけが無いだろう」

 これはまだまだ決まりそうにないな。
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