生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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580.【ハル視点】見張りの交代

 ブレイズに引きずられてきたウォルターは、手を離された場所に立ち尽くしたまま大きなあくびを繰り返している。全然眠気を隠せていないな。いや、そもそも隠すつもりも無いのか。

「よっし、今日も無事にウォルター兄ちゃんを起こしてきたよ!」
「ああ、さすがブレイズだ!」
「ほんっっっとうに助かるよ…ブレイズ、ありがとな」

 心からの感謝を述べるルセフとファリーマの反応に、今までの苦労が見え隠れしている。ウォルター本人は、ゆらゆらと揺れながら立ち尽くしてるのが気になって仕方がないんだが。

「それじゃあ、俺達はそろそろ寝にいこっか」
「ああ、そうだなー」
「うん、交代しないとね」

 三人はささっとマントを片づると、すぐに立ち上がった。

「おやすみなさい」
「じゃあねーおやすみー」
「おやすみ、後は頼んだ」

 前半担当組の挨拶に、俺とルセフは笑顔でおやすみと返した。ウォルター?まだそこで揺れてるな。

「ねえ、ウォルター兄ちゃんもちゃんと起きてよ?」
「起きた…起きたよ…。あと、俺は…おまえの、兄ちゃんじゃ…ない…」

 今にも閉じてしまいそうな眠たそうな目をしているのに、ちゃんとそこには突っ込めるんだな。思わず感心してしまったが、どう考えても起きてはいないよな。

「あ、そこに文句言えるなら、もうすぐ本当に起きるね」

 ブレイズは慣れた様子でそう言うと、楽し気に笑ってから軽く手を振るとテントの方へと歩いて行った。

「本当にすごいよな、ブレイズは。尊敬するわ」

 ウォルターはちゃんと起きろよーと言い置いて、ファリーマはあくびをしながら歩き出した。アキトはそんな二人の後ろを、楽し気に笑いながら追っていった。

 もう少しぐらいアキトと話したかったな。

 一瞬だけそう思ってしまったけれど、口には出さなかった。たぶんこれは、俺が眠る前に教えた『一流の冒険者は時間を無駄にしない』というあの教えを、ちゃんと守ろうとしてるからだろうしな。邪魔をするわけにはいかない。

 名残惜しいけれど仕方ないなと諦めて見守っていれば、アキトは自分のテントの入口前でくるりとこちらを向いた。あ、目があったなと思った瞬間、口だけを動かしたおやすみの挨拶をもらってしまった。

 自分もさっきやった事だけど、アキトにされるとこんなに嬉しいものなんだな。もしかしてアキトも、さっきの挨拶を嬉しいと思ってくれたんだろうか。

 そんな事を考えながら満面の笑みを浮かべると、俺も声を出さずにおやすみと返す。

 ただそれだけのやりとりで、満足そうにそして幸せそうに笑ってくれるアキトの破壊力ときたらものすごかった。ああ、ほんとうにいつでも可愛いなぁ。あれが俺の伴侶候補なんだよと、誰彼かまわず自慢したくなってくる。

 したくなるだけで、もったいないから誰彼かまわずなんてしないんだけどな。

「ハルとアキトは、相変わらず仲が良いな」

 ふふと楽し気に笑ったルセフには、しっかりやりとりを見られていたらしい。

「まあ、伴侶候補だしな」

 何でもないようにさらりとそう返せば、確かにそうだなと納得した様子のルセフの声が返ってきた。

「あー…やっと、ちょっとだけ…目、覚めてきたわ」

 不意にそう声を上げたウォルターに、俺とルセフは揃って視線を向けた。まだあくびを連発はしているけれど、ゆらゆらと揺れるのも止まったし、今にも目が閉じそうって感じも無くなったな。

「ウォルター、今日はやけに遅かったな?」
「ああー魔物の気配が遠いからだろうなぁ」

 自己分析しながらもマントを敷き始めたウォルターの隣に、俺も自分のマントを取り出して並べる。ルセフはどちらに座ろうか悩んだようだが、最終的には俺の隣に座る事にしたようだ。俺達は三人並んで焚火の前に腰を下ろした。

「ルセフ、ウォルター、花茶でも飲むか?」

 そう尋ねれば、二人からは欲しいとすぐに返事が来た。

 元々俺は花茶はそれほど好んでいなかったんだが、アキトが好きだからと繰り返し飲んでいるうちにすっかり好きになってしまったんだよな。アキトのために練習したから淹れるのもすっかり上手くなってきた。

 取り出した花茶を注いだカップを二人の手に渡してから、俺も自分の花茶を口に運んだ。
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