生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
582 / 1,561

581.【ハル視点】心配性な二人

 口に含めばふわりと広がる花の香りを楽しめば、肩の力が一気に抜ける気がする。花茶には目を覚まさせる効果もあるから、今の時間にはちょうど良いだろう。

「それで、二人は一体何を話したいんだ?」

 この二人は頭の回転も、もちろん戦闘での腕も良い。性格も良い上に、アキトを可愛がってくれている。アキトが懐いている相手だし、俺も正直に言えば気に入っている。

 だからまあ、正直に言うなら俺は話題なんて何でも良いんだ。例えどんな話題を選んだとしても、俺にとっても楽しい時間となるだろう。

 それでも一応尋ねてみたのは、わざわざ俺と一緒に見張りがしたいと主張した二人の、聞きたい事が気になったからだ。

「あー…色々気になってた事があるんだけど…いくつか聞いても良いか?」
「ああ、何だ?」
「先に言っておくが、もし答え難いと思う内容があったら、ちゃんと断ってくれよ?」

 無理をして答える必要は無いんだからなと前置きをするルセフに、俺は笑って頷いた。

 もし俺の一存ではどうする事もできないような情報を求めてくるなら、適当に誤魔化そうかと思っていたんだがな。どうやらこれは、誤魔化すよりもちゃんと断る方が良さそうだ。ここまで気づかってくれる相手を、騙すような真似はしたくないしな。

「俺が気になってたのはハルの本職についてなんだ。アキトは、お前の本職を知ってるのか?」

 今は防音結界が無いからと、誰に聞かれても良いように言葉を選んでくれているのが分かる。

 本職。つまり騎士団員である事をアキトが知っているかという質問と、今も俺が騎士団に所属しているのかって探りだな。

 その程度なら別に隠すほどの事でも無いなと、俺はすぐに答えた。

「ああ、知ってるよ」
「そうか…知ってるのか…」

 ルセフはホッとした表情でへにゃりと笑ってみせた。ああ、そういえば幽霊の時にアキトと出会ったとは言ったが、アキトのおかげで目が覚めたんだとは言わなかったな。

 もし万が一アキトが騎士団について知らなかった場合、自分たちもアキトに隠すべきなのか?その理由はあるのか?とか色々聞きたかったんだろうな。

「アキトへの気づかい、ありがとうな」
「あーそこまであっさりバレるのか…ハルの思考能力って怖いな。…どういたしまして」

 ルセフはすこし疲れた顔をしていたけれど、それでも感謝の言葉は受け取ってくれた。

「俺もひとつ聞いても良いか?」
「ああ、どうぞ?」

 ウォルターはまっすぐに俺を見据えて、口を開いた。

「ハルの実家についても、アキトは知ってるのか?」

 ウォルターの口から飛び出したのも、アキトが知ってるかどうかという質問か。本当にこの二人は、心からアキトの事を可愛がってくれているんだな。ふわりと温かくなった胸に笑みをこぼしながら俺は答える。

「ああ、それもちゃんと知ってるよ。ついでに言うならこの間、二番目の兄には偶然出会ったよ」
「二番目って事は…ウィリアムさんか…」

 ルセフは真剣な顔でぼそりとそう呟いた。

 俺の家族はそれなりに有名だから知っていても別におかしくは無いんだが、二番目と聞くなり名前まで出てくるとはさすがに思わなかったな。それともアキトと一緒にいる所を見られてから、調べたりしたんだろうか。

「……なあ、その時、お前の兄貴はアキトについて何か言ってたか?」
「祝福の言葉をもらったよ」

 さらりとそう告げれば、ウォルターとルセフは顔を見合わせてから、ふぅーと大きく息を吐いた。ああ、そこも気になっていたのか。

「良かった…貴族は色々あるからって心配してたんだ」
「心配は有難いが…うちの家は貴族って感じじゃないからな。それこそ強い人なら何でもありなんだよ」
「強いってのは、戦いか…?」

 アキトなら大丈夫だろうけどと、ルセフは続ける。

「いや、もちろん戦闘面でも良いんだが、心が強いとか、計算に強いとか、商いに強いでも何でも良いんだ」

 そう言いきった俺に、ウォルターは驚いたみたいだ。そんな貴族がいるのかと聞かれたけど、いるんだよなぁ。

 一方ルセフは聞いた事はあったけど、さすがに脚色かと思ってたと苦笑しながら教えてくれた。脚色じゃないんだよ。

「俺は元々、誰かに執着したって経験がなくてな」
「そうなのか?」
「ああ、本気で誰かを好きになったのは、アキトが初めてだ」
「惚気るねぇ」

 口では揶揄うようにそう言いながらも、ウォルターはニヤニヤと楽し気に笑っている。

「だから、家族にはむしろ早く会わせろって言われてるぐらいだから、そういう心配はしなくて大丈夫だ」

 そう告げれば、二人は嬉しそうに笑ってくれた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。