589 / 1,561
588.もうひとつの実験
皆に褒められたら、本当に成功したんだなって実感がやっと湧いてきた。じわじわと湧き上がってくる嬉しさを感じながら、俺はバッとファリーマさんを振り返った。
急な俺の動きに、ファリーマさんはかなり驚いたみたいだった。まん丸な目をして俺を見ていたけど謝るのは後回しだ。だって今はどうしても言いたい事があるから。
「ファリーマさん、この魔法すごいです!」
「ああ、ありがとう、アキト。でも、成功したのはアキトのおかげだからな?」
理論上はともかく俺には実行できなかったんだからなと、ファリーマさんは苦笑しながら続けた。いやいや、実行はできなかったとしても、この魔法は間違いなくファリーマさんのおかげだよ。
「でも、俺こんな風に組み合わせて魔法を作るって考えた事も無かったから…やっぱりファリーマさんの方がすごいと思います」
「いや、実行できなかったら意味は無いだろう?アキトの方がすごいよ」
「いいえ、ファリーマさんの方が…」
更に言いつのる俺と、全力で否定するファリーマさん。でもここはそう簡単には引けないよね。だってファリーマさんはすごいんだから。
むむむと見つめ合う俺達に、ブレイズが笑いながら声をかけてきた。
「どっちもすごいで良いんじゃない?」
「ああ、そうだな。ファリーマもアキトもどっちもすごいよ」
優しく諭すように、ハルからもそう声をかけられてしまった。俺とファリーマさんは、顔を見合わせてから二人揃って笑ってしまった。
「ああそうだな、せっかく実験が成功したんだからどっちもすごいで良いか」
「そうですね」
ブレイズとハルの温かい視線が、ちょっとだけ恥ずかしい。ハルはさ、いつもの事だから慣れてるんだ。でも、ブレイズは年下なのに…すごく大人な視線で見られてる。俺と同じく恥ずかしそうにしていたファリーマさんは、話を切り替えるように声をあげた。
「なあ、ところでさ、この魔法の使い心地はどうだった?」
「あ、すごく制御しやすかったですよ。魔力も思ったより減りません」
「そうなのか」
「そもそも俺、火魔法だとここまで制御できないんですよ」
「そうなのか?焚火に火をつけるのは上手かったけど?」
「えっと、火をつけるのはできるんですけど、的めがけて飛ばすのが無理なんです」
火魔法を使って火をつけるーとか、燃え上がらせるーとかは簡単に出来るんだけど、火の玉を飛ばすってのが難しいんだよね。火の玉って想像しちゃうからなのかな。その辺をふよふよと漂わせる事はできるんだけど、的に向かって飛ばすってのが本当に難しい。
俺には向いてないんだって諦めてたんだけど、この魔法なら大丈夫みたいだ。
「ファリーマさん、これからもこの魔法って使っても良いんですか?」
「ああ、それはもちろん。使ってくれた方が嬉しいよ」
「っ!ありがとうございます!」
やった。使って良いって言ってくれた。
「慣れればもっと素早く発動できるかな」
練習しないとなと呟いた俺を、ファリーマさんはじっと見つめてから口を開いた。
「ハル、もう一個だけ実験を追加しても良いかな?」
あ、ハルに聞くんだ。ルセフさんはまだあっちにいるし、監視を頼まれてたのがハルだからかな。ハルは面白そうに笑って答えた。
「ん?内容にもよるね。後アキトの気分次第?」
「内容は、今の実験をどこまで短縮して行えるかどうかっていう実験なんだけど…」
真剣な顔で言ってるけど、要は俺が言った慣れればもっと素早く発動できるかなって疑問を解消しようとしてくれてるって事だよね。
「ああ、そういう検証のための実験なら俺に文句は無いよ。ちなみにアキトは?」
答えは知ってるけどと言いたげな悪戯っぽいハルの笑みに、俺はハイッと元気に挙手をしてから答えた。
「やりたいです!」
「よっし、じゃあ次は全部を連続して行ってみようか」
「連続して?」
「そう。最終的には一瞬で発動できるようにならないかな?」
理論的には無理じゃないと思うんだけどと言うファリーマさんに、俺は笑顔でやってみましょうと答えた。
そこからは何度も何度も魔法の発動を繰り返した。連続して発動するっていうのはあっさりとできたのに、一瞬で発動するようにってなると一気に難易度があがったんだ。
でも難易度があがると、逆に燃えてくるよね。
ファリーマさんにアドバイスをもらい、ブレイズに明るく応援され、ハルに褒められながら、魔法の精度はどんどん上がっていった。
最終的には一瞬で火がついたつぶてを出せるようになったし、何個かまとめて発動する事もできるようになった。
これでファーレスウルフにも対抗できそうだと言った俺に、ブレイズとファリーマさんの困ったような視線が突き刺さった。え、なんで?
「アキト、ファーレスウルフはそうそう遭遇しない魔物だからね」
あ、そうなんだ。
急な俺の動きに、ファリーマさんはかなり驚いたみたいだった。まん丸な目をして俺を見ていたけど謝るのは後回しだ。だって今はどうしても言いたい事があるから。
「ファリーマさん、この魔法すごいです!」
「ああ、ありがとう、アキト。でも、成功したのはアキトのおかげだからな?」
理論上はともかく俺には実行できなかったんだからなと、ファリーマさんは苦笑しながら続けた。いやいや、実行はできなかったとしても、この魔法は間違いなくファリーマさんのおかげだよ。
「でも、俺こんな風に組み合わせて魔法を作るって考えた事も無かったから…やっぱりファリーマさんの方がすごいと思います」
「いや、実行できなかったら意味は無いだろう?アキトの方がすごいよ」
「いいえ、ファリーマさんの方が…」
更に言いつのる俺と、全力で否定するファリーマさん。でもここはそう簡単には引けないよね。だってファリーマさんはすごいんだから。
むむむと見つめ合う俺達に、ブレイズが笑いながら声をかけてきた。
「どっちもすごいで良いんじゃない?」
「ああ、そうだな。ファリーマもアキトもどっちもすごいよ」
優しく諭すように、ハルからもそう声をかけられてしまった。俺とファリーマさんは、顔を見合わせてから二人揃って笑ってしまった。
「ああそうだな、せっかく実験が成功したんだからどっちもすごいで良いか」
「そうですね」
ブレイズとハルの温かい視線が、ちょっとだけ恥ずかしい。ハルはさ、いつもの事だから慣れてるんだ。でも、ブレイズは年下なのに…すごく大人な視線で見られてる。俺と同じく恥ずかしそうにしていたファリーマさんは、話を切り替えるように声をあげた。
「なあ、ところでさ、この魔法の使い心地はどうだった?」
「あ、すごく制御しやすかったですよ。魔力も思ったより減りません」
「そうなのか」
「そもそも俺、火魔法だとここまで制御できないんですよ」
「そうなのか?焚火に火をつけるのは上手かったけど?」
「えっと、火をつけるのはできるんですけど、的めがけて飛ばすのが無理なんです」
火魔法を使って火をつけるーとか、燃え上がらせるーとかは簡単に出来るんだけど、火の玉を飛ばすってのが難しいんだよね。火の玉って想像しちゃうからなのかな。その辺をふよふよと漂わせる事はできるんだけど、的に向かって飛ばすってのが本当に難しい。
俺には向いてないんだって諦めてたんだけど、この魔法なら大丈夫みたいだ。
「ファリーマさん、これからもこの魔法って使っても良いんですか?」
「ああ、それはもちろん。使ってくれた方が嬉しいよ」
「っ!ありがとうございます!」
やった。使って良いって言ってくれた。
「慣れればもっと素早く発動できるかな」
練習しないとなと呟いた俺を、ファリーマさんはじっと見つめてから口を開いた。
「ハル、もう一個だけ実験を追加しても良いかな?」
あ、ハルに聞くんだ。ルセフさんはまだあっちにいるし、監視を頼まれてたのがハルだからかな。ハルは面白そうに笑って答えた。
「ん?内容にもよるね。後アキトの気分次第?」
「内容は、今の実験をどこまで短縮して行えるかどうかっていう実験なんだけど…」
真剣な顔で言ってるけど、要は俺が言った慣れればもっと素早く発動できるかなって疑問を解消しようとしてくれてるって事だよね。
「ああ、そういう検証のための実験なら俺に文句は無いよ。ちなみにアキトは?」
答えは知ってるけどと言いたげな悪戯っぽいハルの笑みに、俺はハイッと元気に挙手をしてから答えた。
「やりたいです!」
「よっし、じゃあ次は全部を連続して行ってみようか」
「連続して?」
「そう。最終的には一瞬で発動できるようにならないかな?」
理論的には無理じゃないと思うんだけどと言うファリーマさんに、俺は笑顔でやってみましょうと答えた。
そこからは何度も何度も魔法の発動を繰り返した。連続して発動するっていうのはあっさりとできたのに、一瞬で発動するようにってなると一気に難易度があがったんだ。
でも難易度があがると、逆に燃えてくるよね。
ファリーマさんにアドバイスをもらい、ブレイズに明るく応援され、ハルに褒められながら、魔法の精度はどんどん上がっていった。
最終的には一瞬で火がついたつぶてを出せるようになったし、何個かまとめて発動する事もできるようになった。
これでファーレスウルフにも対抗できそうだと言った俺に、ブレイズとファリーマさんの困ったような視線が突き刺さった。え、なんで?
「アキト、ファーレスウルフはそうそう遭遇しない魔物だからね」
あ、そうなんだ。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。