生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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599.トライプールの広場にて

 人目を気にせずにあんなやりとりをした結果、俺達はニヤニヤと笑う皆に冷やかされながらトライプールまでの後少しの道を歩く事になった。

 まあ皆の前なのに思いっきり見つめ合った上に、気づいたらしっかりと両手を握り合ってたからね。うん、これは揶揄われても仕方無いと思ったから、俺もハルも何にも言い訳はしなかったよ。

 たぶん俺の顔は真っ赤だったと思うけど、そこに触れる人がいなかったのは、皆の優しさかな。



 トライプールの大門を通過して屋台の並ぶ見慣れた広場に入っていくと、ああ、帰ってきたなーとしみじみと実感する。この依頼で行った船着き場もイーシャルも良い所だったけど、俺はやっぱりここトライプールが好きみたいだ。

 八人揃って広場の隅っこまで移動すると、クリスさんが全員の顔を見回してからおもむろに口を開いた。

「皆さん、お疲れ様でした。何事もなく無事にトライプールまで帰りつけたのは皆さんのおかげです。ありがとうございました」
「そうだな。みんな頼もしかったし、それに楽しかったよ。ありがとな」

 カーディもニッと笑ってそう続けた。

「皆で打ち上げもしたかったんですが…さすがに皆さん疲れてると思いますから、またの機会にしましょうか」

 ルセフさんはクリスさんの言葉に笑みを返した。

「気づかいありがとうございます」
「まあ、さすがに疲れたよな。初めての速度だったし」
「え、そう?俺はまだまだあのウマに乗って走りたかったぐらいだけどなぁ」
「うわーこれが若さか…」
「えーそんなに言うほど年齢違わなくない?」
「いや、結構違うだろ?」

 わいわいといつのの調子で賑やかに言い合うルセフさん達の反応を眺めていると、不意にクリスさんの視線がこちらを向いた。

「俺達は帰りは馬車の中で楽をさせてもらったからな、ルセフ達の良いようにしてやってくれ」

 それで良いかなと向けられたハルの視線に、俺もこくこくと頷いた。

「それではそういう事で。あ、冒険者ギルドへの報告はこちらでしておきますので、明日以降には報酬が受け取れると思います」
「…え、そんな事までさせちゃっていいのか?」

 クリスさんの提案に、ルセフさんは驚いた様子で二人を見返した。カーディとクリスさんは顔を見合わせてから答える。

「護衛で疲れてるんだから、俺達が報告するのは当然じゃないか?」
「ええ、さすがに疲れ果ててる時なら明日に回させて欲しいとお願いする事もありますが、今日はまだ元気ですからね」
「そうだよな」
「あ!もちろんきちんと報告をするかが心配なら、私とカーディの報告に立ち会ってもらっても良いんですが…!」
「ああ、いや、すまない。クリスさんとカーディさんの人柄はもう知ってるし、信用できるからそこは全然問題無いんだが…」
「分かる、その気持ち俺は分かるよ!ルセフ!」

 言い難そうに口ごもったルセフさんに、ファリーマさんはいきなり駆け寄ってそう叫んだ。一体どうしたんだろうと思ったけど、苦笑を浮かべたウォルターさんが答えを教えてくれた。

「すまんな。最近は駄目な護衛依頼が続いたからさ、毎回俺達が報告も押し付けられてたんだよ」
「ああ、そうなんですか…それは、大変でしたね…」

 クリスさんがルセフさんの苦労を労っている隣で、カーディは心底嫌そうに顔を歪めた。

「いるよなーそういう大事な事をあっさり誰かに押し付けるやつ。しかもそういう奴に限って、別に何か重大な理由があってーとかじゃないんだろ?」
「ああ、それならさすがに俺達も文句は無いんだがな。この間の奴は酒が飲みたいからって言い放ったぞ…?」
「うわぁ…」

 黙って聞いてられなくて、思わず声が出てしまった。そんな依頼人っているんだ。この世界に来てから良い人にばっかり会ってるから、かなり驚いてしまった。

「もし私の同業者なら、ぜひとも名前を聞きたいですね…」
「あー依頼人の事は詳しくは言えないが、とりあえずあんたらの同業者じゃないからな」
「そうですか」

 ちょっと残念ですと怖い顔で言ってるクリスさんは、もし同業者なら一体何をするつもりだったんだろうな。怖いから考えるのは止めておこう。

「…あんたらとの仕事は、俺達も楽しかったよ」
「美味しいごはん付きだったしね!」

 にっこりと笑ったブレイズの言葉に、場の空気が一気に和んだ。さすがのワンコ属性だな。
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