601 / 1,561
600.別れの時間
冒険者ギルドへの報告は、結局クリスさん達におまかせする事に決まった。俺達も馬車で移動組なんだし体力はまだ残ってる。ギルドにも一緒に行こうか?ってハルが聞いてくれたんだけどね、カーディに苦笑しながら断られたんだ。
報告が終わったらクリスさんはすぐに店に戻って作業に入るから、ってのがその理由なんだけどね。魔道具の研究ってなると他が見えなくなるから、間違いなく迷惑をかけるしって愛おしそうに目を細めて言われたら、うん、無理にはついていけないよね。
「今度はストファー魔道具店にも遊びに来てくれよな」
「うん、魔道具にも興味があるし、絶対行く!」
「ハルも、何かあればいつでも頼ってくださいよ?」
「ああ…俺は友人には遠慮なく頼るぞ」
「お待ちしてます」
そんな会話を交わしてから、クリスさんとカーディはこのまま冒険者ギルドへ向かうからと、あっさりと手を振って去っていった。
「ルセフ達はどうするんだ?」
「そうだな…今日はもうさすがに帰るか」
このところ依頼に次ぐ依頼だったから、パーティーメンバーで借りてる家に帰ってのんびりしたいそうだ。
とにかく寝たいよなと既に眠そうな表情のウォルターさんと、お腹減った…としょんぼりしているブレイズ。何故かその隣では、ファリーマさんが次の魔法の理論を考えたいと目を輝かせている。
え、もしかしてファリーマさん、寝ないつもりなの?俺はギョッとしながらファリーマさんを見つめた。
「まったくそれは明日にしろよ、魔法馬鹿」
「えー…?でもさぁ、思いついた事があって…」
「明日はパーティ全員休みにするからな。寝てから考えた方が効率が良いだろ」
「あー…それもそうか。うん、じゃあそうする!」
おお、ルセフさんの提案のおかげでちゃんと寝る事になったみたいだ。良かった。
「じゃあ、ここでお別れだね」
何気なくそう口にした途端、一気に寂しい気持ちに襲われてしまった。また会えると分かっていても、それでもお別れの瞬間はやっぱり寂しい。さっきのクリスさんとカーディの時は、実感する前に去って行ったからな。
「アキトーもうお別れなんて寂しいよー!」
「うわっ…!」
急にそんな事を叫びながら抱き着いてきたブレイズを、俺は慌てて受け止めた。いや、受け止めようとした――だな。ブレイズの長身を支え切れずに見事に転びかけた所を、ハルの手でそっと抱き支えられてしまった。
ハル、ありがとう。
「ブレイズ―、お前自分とアキトの身長差考えろ!」
ウォルターさんの言葉がグサッと突き刺さる。うん、俺の方が年上なのに、ブレイズよりもだいぶ小さいもんね。分かってるけど言われると刺さる。
「そうだぞ!体重だって全然違うんだからな!」
あの、ファリーマさん、それもしっかり刺さりました。どうせ俺は筋肉も少ないですよ。思いっきり拗ねていた俺の背中を、ハルの手が優しく撫でさすってくれる。落ち着いてと言うような優しい手の動きだ。
「アキト。また会えたら声かけるからね!」
「うん!俺も声かけるね!」
この世界には気軽に連絡を取る手段ってのが、あんまり無いんだよね。基本は手紙でやりとりするし、当然だけどPCもスマホも無い。メッセージとかも、もちろんやりとりできない。つまり会えるかどうかすら運なんだ。
また会えるかな。会えるよね。じわりと湧いてくる不安に視線を上げると、ブレイズも同じように不安そうな表情を浮かべていた。
「おいおい、二人してしょんぼりすんなよ!同じ街にいて、しかも同じ冒険者稼業だろう?また会えるさ」
「そうそう」
「今回だって、思ったよりも早く会えたしね」
「そうだよ、アキト」
口々にそう慰めてくれる皆に、俺とブレイズはくっついたまま思わず笑ってしまった。みんな、本当に優しいな。
「あ、そうだ。ハルとアキトさえ良ければ、一緒に依頼を受けたりもしたいんだけど」
「えっ、依頼っ!…ハル?」
ルセフさんの言葉に反応はしてしまったけれど、勝手に返事したら駄目だろうと慌てて様子を伺えば、ハルはにっこりと笑ってくれた。
「ルセフ達のパーティーとなら、俺もぜひ参加してみたいよ」
「おっ、じゃあハルの戦いっぷりが近くで見れるって事か!」
「あ、アキトの魔法がまた見れる!?」
「うわー楽しみ!」
「あのな…期待させて悪いけど、そうすぐに良い依頼があるとは限らないからな?」
ルセフさんは苦笑しながら、テンションの上がった仲間たちをなだめている。分かってるってと言いながらも、皆は嬉しそうに笑い合っている。
報告が終わったらクリスさんはすぐに店に戻って作業に入るから、ってのがその理由なんだけどね。魔道具の研究ってなると他が見えなくなるから、間違いなく迷惑をかけるしって愛おしそうに目を細めて言われたら、うん、無理にはついていけないよね。
「今度はストファー魔道具店にも遊びに来てくれよな」
「うん、魔道具にも興味があるし、絶対行く!」
「ハルも、何かあればいつでも頼ってくださいよ?」
「ああ…俺は友人には遠慮なく頼るぞ」
「お待ちしてます」
そんな会話を交わしてから、クリスさんとカーディはこのまま冒険者ギルドへ向かうからと、あっさりと手を振って去っていった。
「ルセフ達はどうするんだ?」
「そうだな…今日はもうさすがに帰るか」
このところ依頼に次ぐ依頼だったから、パーティーメンバーで借りてる家に帰ってのんびりしたいそうだ。
とにかく寝たいよなと既に眠そうな表情のウォルターさんと、お腹減った…としょんぼりしているブレイズ。何故かその隣では、ファリーマさんが次の魔法の理論を考えたいと目を輝かせている。
え、もしかしてファリーマさん、寝ないつもりなの?俺はギョッとしながらファリーマさんを見つめた。
「まったくそれは明日にしろよ、魔法馬鹿」
「えー…?でもさぁ、思いついた事があって…」
「明日はパーティ全員休みにするからな。寝てから考えた方が効率が良いだろ」
「あー…それもそうか。うん、じゃあそうする!」
おお、ルセフさんの提案のおかげでちゃんと寝る事になったみたいだ。良かった。
「じゃあ、ここでお別れだね」
何気なくそう口にした途端、一気に寂しい気持ちに襲われてしまった。また会えると分かっていても、それでもお別れの瞬間はやっぱり寂しい。さっきのクリスさんとカーディの時は、実感する前に去って行ったからな。
「アキトーもうお別れなんて寂しいよー!」
「うわっ…!」
急にそんな事を叫びながら抱き着いてきたブレイズを、俺は慌てて受け止めた。いや、受け止めようとした――だな。ブレイズの長身を支え切れずに見事に転びかけた所を、ハルの手でそっと抱き支えられてしまった。
ハル、ありがとう。
「ブレイズ―、お前自分とアキトの身長差考えろ!」
ウォルターさんの言葉がグサッと突き刺さる。うん、俺の方が年上なのに、ブレイズよりもだいぶ小さいもんね。分かってるけど言われると刺さる。
「そうだぞ!体重だって全然違うんだからな!」
あの、ファリーマさん、それもしっかり刺さりました。どうせ俺は筋肉も少ないですよ。思いっきり拗ねていた俺の背中を、ハルの手が優しく撫でさすってくれる。落ち着いてと言うような優しい手の動きだ。
「アキト。また会えたら声かけるからね!」
「うん!俺も声かけるね!」
この世界には気軽に連絡を取る手段ってのが、あんまり無いんだよね。基本は手紙でやりとりするし、当然だけどPCもスマホも無い。メッセージとかも、もちろんやりとりできない。つまり会えるかどうかすら運なんだ。
また会えるかな。会えるよね。じわりと湧いてくる不安に視線を上げると、ブレイズも同じように不安そうな表情を浮かべていた。
「おいおい、二人してしょんぼりすんなよ!同じ街にいて、しかも同じ冒険者稼業だろう?また会えるさ」
「そうそう」
「今回だって、思ったよりも早く会えたしね」
「そうだよ、アキト」
口々にそう慰めてくれる皆に、俺とブレイズはくっついたまま思わず笑ってしまった。みんな、本当に優しいな。
「あ、そうだ。ハルとアキトさえ良ければ、一緒に依頼を受けたりもしたいんだけど」
「えっ、依頼っ!…ハル?」
ルセフさんの言葉に反応はしてしまったけれど、勝手に返事したら駄目だろうと慌てて様子を伺えば、ハルはにっこりと笑ってくれた。
「ルセフ達のパーティーとなら、俺もぜひ参加してみたいよ」
「おっ、じゃあハルの戦いっぷりが近くで見れるって事か!」
「あ、アキトの魔法がまた見れる!?」
「うわー楽しみ!」
「あのな…期待させて悪いけど、そうすぐに良い依頼があるとは限らないからな?」
ルセフさんは苦笑しながら、テンションの上がった仲間たちをなだめている。分かってるってと言いながらも、皆は嬉しそうに笑い合っている。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。