生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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601.連絡手段

 ルセフさん達のパーティーと一緒に、また依頼を受けられるのか。

 うん、それだけでもすごく楽しみだけど、今は生身のハルも俺の隣にいてくれる。つまりハルも一緒に堂々と依頼を受けられるって事だ。前も一緒にはいてくれたんだけど、皆の前では話しもできなかったからね。

 そんなの、想像するだけでもワクワクしてくるよね。

 そう思いながら顔をあげれば、明るい笑みを浮かべたブレイズがトンっとくっついてきた。

 ブレイズって結構距離が近いんだけど、ワンコ属性のせいかあまり気にならないんだよね。ブレイズならくっついてても問題無いって、ハルが言ってくれるせいもあるかもしれない。

「一緒に依頼かーブレイズ、楽しみだね!」
「うん、俺もすっごい楽しみ!次はどんな依頼かな?」

 すぐに同意してくれる友人がいると、更にテンションが上がってくる。

「うーん、どんな依頼だろうね?」
「調査依頼は滅多に来ないから、違う依頼かなぁ…」
「違う依頼も楽しそうだよね!」
「あー確かに、アキトとハルさんも一緒なら、どんな依頼でも楽しそう」

 俺がニコニコとブレイズと笑いながら話し合っている間に、気づけばハルは少し離れた所に立っていたルセフさんの前に立っていた。あれ、いつの間に移動したのかな?あとすごく真剣な顔で話し込んでるんだけど、一体何の話をしてるんだろう?

「ねえ、二人が何話してるか知りたい?」

 耳元でこっそりとそう尋ねられた俺は、慌ててブレイズに視線を戻した。なんでそんな事を聞かれたんだろう。不思議に思って首を傾げれば、ブレイズはふふと笑って続けた。

「アキトは知ってるよね?俺の耳の事」

 そう言いながら、ブレイズは自分の耳にそっと指を向けてみせた。

 あ、そっか。ブレイズは獣人の血が入ってるから、普通の人よりも耳が良いんだよね。だからこそ、俺と幽霊だったハルのあの内緒の会話が聞こえちゃってたわけだし。

 思いだしたとうんうんと頷けば、ブレイズは悪戯っぽい笑みを浮かべてみせた。

「それで、どう?アキトは知りたい?」
「えーと…俺が知っても良い内容なら知りたいんだけど…そうじゃないなら知りたくないんだよね」

 いや、当然知りたいとは思うんだよ。思うんだけど、話の内容がもし俺に聞かせたくないってハルが思うような事だったとしたら、それは勝手に盗み聞きしたら駄目だと思うんだ。もしそうなら、俺が自分でハルに尋ねた方が良いと思うんだ。

「悪いけど、そこはブレイズが判断してくれる…?」

 そんな我儘な俺の答えにブレイズは呆れるでも無く、ただ面白そうに笑ってから口を開いた。

「うん、大丈夫。これは絶対に知っても良い内容だよ!あんなに楽しみにしてるアキトと俺のためにも実現させなきゃーって二人で連絡取る方法を相談してるってだけだから」

 こんな場面でブレイズが嘘を吐くとは思わないけど、それでもすぐには信じられなかった。だって二人揃ってあんなに真剣な顔をしてるのに?本当に?そんな話をしてるの?

「え、本当に?あんなに真剣な表情なのに?」
「うん、ハルさんは長期でトライプールから出る時は、メロウさんかレーブンさんに絶対伝えてるから二人に聞いて欲しいって言ってる」
「はー」

 そういえば、ハルはいつもメロウさんかレーブンさんどちらかには声をかけてたな。あれってそういう意味があったんだ。

「それで今は、リーダーが俺達の家の家主に伝言か手紙を残してくれたらーって詳しく説明中だね」

 ブレイズによれば今パーティーで住んでる家は、とあるお店の店主さんから借りてるものなんだって。そのお店まで行けば、ブレイズ達に連絡が取れるって事らしい。

「あ、そんなに有名な店じゃないのに、ハルさんは知ってるんだなぁ」
「ハルは物知りだからねぇ」
「あんなに物知りな人って、リーダーぐらいだと思ってたよ」

 ブレイズはそう言うとニコッと楽しそうに笑ってみせた。

 結局ウォルターさんがそろそろ眠気が限界なんだけど先に帰って良いかと言い出すまで、ハルとルセフさんの会話は続いたよ。ウォルターさん、眠いのに引き留めてごめんなさい。

 また会おうねと笑いあって、俺達は自然と手を振って別れた。



 トライプールの街並みは、馴染みがあるせいか他の街よりも落ち着く気がする。

「帰ってきたね」
「ああ、帰ってきたな」

 まだ早い時間帯のせいか、子どもたちの笑い声や鳥の鳴き声が遠くからかすかに聞こえてくる。そんな和やかな雰囲気を堪能しながら、俺はハルと繋いだ手を揺らしつつゆっくりと道を歩いて行った。

 見慣れた黒鷹亭の看板が見えてきた時は、なんだか一気に肩の力が抜けた気がした。街並み以上に帰ってきたなーって実感が湧いたからかな。

 木製のドアをそっと開けば、受付カウンターにはうつむいて作業をしているレーブンさんの姿が見えた。

「いらっしゃ…おう、おかえり。アキト、ハル」

 当然のようにおかえりと言ってくれるレーブンさんに、俺は満面の笑みで答えた。

「ただいま帰りました、レーブンさん!」
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