生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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602.レーブンさんと

 すごい勢いで距離を詰めた俺にも全く動じず、レーブンさんはふわりと表情を緩めると俺の頭にそっと手を伸ばしてきた。

 あ、撫でてくれるんだ。

 俺、レーブンさんに撫でられるの好きなんだよね。ハルに撫でられた時はまずドキドキするんだけど、レーブンさんに撫でられると何故かすっごく安心できるんだよね。

 あの大きくて温かい手が、すこしぎこちなく、でもゆっくりと頭を撫でてくれるのがすごく嬉しいんだ。いつもあの優しい手の動きに、自然と笑みがこぼれてしまう。

「無事に帰って来てくれて嬉しいよ」

 噛み締めるようにそう口にしたレーブンさんに、俺はにっこりと笑って答えた。

「俺もここに帰って来られて嬉しいです!」

 撫でられる俺と、撫でるレーブンさん。そんな俺達のやりとりを、ハルは何も言わずにただ微笑んで見守ってくれていた。

「あーそれにしても意外だな、ハル。もっとお前は嫌がるかと思ったんだが…」
「アキトにそういう感情がある相手には、絶対に触れさせないが…レーブンは違うだろう」

 家族枠だって知ってるから別に良いんだと笑ったハルに、レーブンさんはへぇと感心したように声をあげた。

「大人になったじゃないか」
「だいぶ前から大人だよ。それにさ、大事な伴侶候補様の気持ちをちゃんと大事にしないと…だしな」

 さらりとそう言ってのけたハルに、レーブンさんは驚いた様子で俺とハルの手首へと視線を向けてきた。

 レーブンさんにはハルとは恋人同士だって紹介はしたけど、ちゃんと伴侶候補になったって事も報告しておかないとだよね。俺は照れ笑いを浮かべながらも、レーブンさんに伴侶候補の腕輪を見せた。

 じっと俺達の腕にはまっている伴侶候補の腕輪を見つめていたレーブンさんは、急に真剣な声で尋ねた。

「…お前の家は大丈夫なんだな?」
「ああ、問題は無いよ。それに偶然だけど、この依頼中にウィル兄にも会ったぞ」
「ウィルか…それで、ウィルは何て?」

 あれ?レーブンさんってウィルさんと面識あるんだ?でないと呼び捨てにはしないよね?

「終始面白そうに見守ってたけど、ちゃんと祝福の言葉を貰ったよ」
「…そうか…それは良かったな」

 ふうとひとつ息を吐いたレーブンさんは、まだ一人とは言え家族公認かと嬉しそうに笑って続けた。

「俺的には、レーブンの反応の方が意外だな。まだ早いだろうとか、急ぎすぎだってもっと怒られるかと思ってたんだが…」

 というか怒られる覚悟は出来ていたんだがと続けたハルに、レーブンさんは真顔になってから答えた。

「は?こんなに嬉しそうに伴侶候補の腕輪を見せてくるアキトを見て、そんな事が言えると思うか?」

 レーブンさんの視線が、ちらりと俺に向けられる。え、俺そんなに嬉しそうにしてた?いや、まあ、ハルと伴侶候補に慣れたのは確かに嬉しい事だから、それが顔に出てたのかも…しれない。

「そんなに俺、嬉しそうでした?」
「ああ、すごくな。まあ二人で幸せになってくれや」

 レーブンさんはそう言うとハルの頭にも手を乗せて、ぽんぽんと軽く叩いてみせた。ハルは居心地悪そうにしていたけど、それでもレーブンさんの手を振り払ったりはしなかった。

「あ、引き留めて悪かったな、疲れてるだろう?ゆっくり休んでくれ」

 レーブンさんはそう言って鍵を差し出してくれたんだけど、俺はその鍵を受け取る前にと慌てて声をあげた。今を逃したら忙しいレーブンさんに、いつ渡せるか分からないからね。

「あのっ、レーブンさんにお土産があるんです!」
「土産…?でもこの前も貰ったじゃねぇか」

 あ、これはもしかしたら受け取ってもらえないやつ?慌てる俺の隣で、ハルはにっこりと艶やかに笑ってみせた。

「レーブン、それこそ受け取らないと駄目だよ」
「だがなあ…ただ元気に帰ってきてくれただけで十分なんだが…」

 さらりとこぼされたレーブンさんの本音に、ぐっと胸が詰まった。駄目だ、油断したら泣きそうだ。そんな風に考えてくれてたんだな。

「気持ちは分かるけど…そのお土産はレーブンのためにって、わざわざアキトが旅先で選んだものなんだよ?受け取らないなんて事できる?」
「…あー。うん、そうか、そうだな」

 ハルのおかげで、どうやら俺のお土産は無事に受け取ってもらえそうだ。さすが、ハル。
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