610 / 1,561
609.【ハル視点】連絡手段と黒酒
例えきっちりと日程まで決まらなくても、ルセフ達と一緒に依頼を受けられるかもしれないというだけでアキトは嬉しいらしい。
キラキラと目を輝かせるアキトに、同じくらい嬉しそうなブレイズがすぐにくっつきにいった。
その瞬間ルセフとウォルターとファリーマが、ちらりと俺の表情を伺ったのが分かった。ブレイズは確かに距離感こそ近いが、そこに他意は無い。ただ仲の良い友人に懐いているだけと分かってるから問題は無い。
すこし心配そうな視線に、俺はゆるりと首を振った。あからさまにホッとした表情なんだが、俺はどれだけ嫉妬深いと思われているんだろうな。
「一緒に依頼かーブレイズ、楽しみだね!」
「うん、俺もすっごい楽しみ!次はどんな依頼かな?」
「うーん、どんな依頼だろうね?」
「調査依頼は滅多に来ないから、違う依頼かなぁ…」
「違う依頼も楽しそうだよね!」
「あー確かに、アキトとハルさんも一緒なら、どんな依頼でも楽しそう」
アキトとブレイズがニコニコと笑いながら話し合っている姿を視界の端に見つめながら、俺はそっとルセフに近づいた。
「ルセフ、もし良い依頼が見つからないなら、いっそ大型の討伐依頼とかでも良いと思わないか?」
「ああ!うん、そういう手もあったな!」
「大型の討伐依頼も滅多に出ないものではあるから、すぐにとは行かないだろうが…せめて俺達との連絡の取り方だけでも決めておきたいと思ってな」
「は?連絡の取り方…?」
冒険者稼業の奴を相手に連絡を取るというのは、なかなかに難しい事だ。
手紙のやりとり自体は転移魔法陣を応用して都市間で頻繁に行われているが、冒険者は職業柄どうしても移動が多いからな。騎士団なら人を覚えて移動する鳥などを飼いならしているが、あれはよほどの状況でなければ使えない。
即座に連絡を取るのはさすがに難しいが、仲介してくれる人さえいれば連絡を取る手間はかなり省くことができる。
「ああ、あんなに楽しみにしているアキトとブレイズのためにも、実現させないと駄目だと思わないか?」
「あーあんなに目をキラキラさせられたら…な」
ルセフも納得してくれたようだし、ウォルターとファリーマも無言で頷いている。
「俺達の方は長期でトライプールから出る時は、メロウかレーブンのどちらかには必ず伝えるようにしてる。二人にはルセフ達には聞かれたら情報を教えるように頼んでおくよ」
「ああ、すれ違いの手間を減らすための仲介か」
すぐにそう察してくれたルセフは、少し悩みながらも口を開いた。
「それなら、こっちは借りてる家の裏に黒酒を売ってる店があるんだが…知ってるか?」
「黒酒って事は…ラルトか…フレートか?」
黒酒というのは、名前の通りに真っ黒な酒だ。初めて見た人には身体に悪そうだとか、飲むのが怖いと恐れられたりする酒だが、その見ために反してさっぱりとした味だ。もしかしたらアキトも好きかもしれないな。覚えておこう。
その黒酒を取り扱っている店と言われて思い浮かべる事ができるのは、その二店舗ぐらいだ。もしかして他にもあるんだろうかと考えながら尋ねれば、ルセフは感心した様子で笑って答えた。
「やっぱり知ってたか。ラルトの方だ」
「そうか、あの辺りに住んでるのか」
「というか、ラルトの店主が家主なんだよ。こっちも話しは通しておくから、店まで来てくれたら伝言でも手紙でも受け取ってもらえるようになるよ」
ラルトの店主が仲介してくれるのか。
「ブレイズとアキトの期待を裏切らないためにも、実現させような」
「ああ、当然だな」
もうすこし詳細を詰めておくべきかと思ったが、不意にウォルターが口を開いた。
「あー…あのさ、悪ぃんだけど」
「ウォルター?」
「そろそろ眠気が限界なんだけど…俺だけ、先に帰っても良いか?」
「あ、ひきとめて悪かった。今日はこれで解散にしようか」
「すまん。このままだと立ったまま寝そうでな」
「いや、気にしないでくれ」
俺達は自然と手を振って別れた。
トライプールの街並みは、やっぱり落ち着く。そう思いながら隣を歩くアキトを見れば、嬉しそうな笑顔が返ってきた。
「帰ってきたね」
「ああ、帰ってきたな」
噛み締めるようにそう返してから、俺はアキトの手をそっと握った。
まだ早い時間帯のせいか、子どもたちの笑い声や鳥の鳴き声が遠くからかすかに聞こえてくる。そんな和やかな雰囲気を堪能しながら、俺はアキトと繋いだ手を揺らしつつゆっくりと道を歩いて行った。
飾り気の無い見慣れた黒鷹亭の看板が見えてくる。アキトに出会う前の俺にとっては特に思い入れの無い場所だったんだが、今は違う。パァァッと明るくなったアキトの表情の変化を楽しみながら、俺は木製のドアへと近づいた。
俺が手を伸ばすよりも先に、アキトはドアをそっと開いた。受付カウンターにはうつむいて作業をしているレーブンの姿が見えた。
「いらっしゃ…おう、おかえり。アキト、ハル」
入ってきたのが俺達だと気づいたレーブンは、口角を少しだけ上げておかえりと口にした。レーブンの笑顔は常連でも二度見するぐらいには珍しい筈なんだが、アキトと一緒にいると笑顔じゃない方が珍しいんだよな。
「ただいま帰りました、レーブンさん!」
キラキラと目を輝かせるアキトに、同じくらい嬉しそうなブレイズがすぐにくっつきにいった。
その瞬間ルセフとウォルターとファリーマが、ちらりと俺の表情を伺ったのが分かった。ブレイズは確かに距離感こそ近いが、そこに他意は無い。ただ仲の良い友人に懐いているだけと分かってるから問題は無い。
すこし心配そうな視線に、俺はゆるりと首を振った。あからさまにホッとした表情なんだが、俺はどれだけ嫉妬深いと思われているんだろうな。
「一緒に依頼かーブレイズ、楽しみだね!」
「うん、俺もすっごい楽しみ!次はどんな依頼かな?」
「うーん、どんな依頼だろうね?」
「調査依頼は滅多に来ないから、違う依頼かなぁ…」
「違う依頼も楽しそうだよね!」
「あー確かに、アキトとハルさんも一緒なら、どんな依頼でも楽しそう」
アキトとブレイズがニコニコと笑いながら話し合っている姿を視界の端に見つめながら、俺はそっとルセフに近づいた。
「ルセフ、もし良い依頼が見つからないなら、いっそ大型の討伐依頼とかでも良いと思わないか?」
「ああ!うん、そういう手もあったな!」
「大型の討伐依頼も滅多に出ないものではあるから、すぐにとは行かないだろうが…せめて俺達との連絡の取り方だけでも決めておきたいと思ってな」
「は?連絡の取り方…?」
冒険者稼業の奴を相手に連絡を取るというのは、なかなかに難しい事だ。
手紙のやりとり自体は転移魔法陣を応用して都市間で頻繁に行われているが、冒険者は職業柄どうしても移動が多いからな。騎士団なら人を覚えて移動する鳥などを飼いならしているが、あれはよほどの状況でなければ使えない。
即座に連絡を取るのはさすがに難しいが、仲介してくれる人さえいれば連絡を取る手間はかなり省くことができる。
「ああ、あんなに楽しみにしているアキトとブレイズのためにも、実現させないと駄目だと思わないか?」
「あーあんなに目をキラキラさせられたら…な」
ルセフも納得してくれたようだし、ウォルターとファリーマも無言で頷いている。
「俺達の方は長期でトライプールから出る時は、メロウかレーブンのどちらかには必ず伝えるようにしてる。二人にはルセフ達には聞かれたら情報を教えるように頼んでおくよ」
「ああ、すれ違いの手間を減らすための仲介か」
すぐにそう察してくれたルセフは、少し悩みながらも口を開いた。
「それなら、こっちは借りてる家の裏に黒酒を売ってる店があるんだが…知ってるか?」
「黒酒って事は…ラルトか…フレートか?」
黒酒というのは、名前の通りに真っ黒な酒だ。初めて見た人には身体に悪そうだとか、飲むのが怖いと恐れられたりする酒だが、その見ために反してさっぱりとした味だ。もしかしたらアキトも好きかもしれないな。覚えておこう。
その黒酒を取り扱っている店と言われて思い浮かべる事ができるのは、その二店舗ぐらいだ。もしかして他にもあるんだろうかと考えながら尋ねれば、ルセフは感心した様子で笑って答えた。
「やっぱり知ってたか。ラルトの方だ」
「そうか、あの辺りに住んでるのか」
「というか、ラルトの店主が家主なんだよ。こっちも話しは通しておくから、店まで来てくれたら伝言でも手紙でも受け取ってもらえるようになるよ」
ラルトの店主が仲介してくれるのか。
「ブレイズとアキトの期待を裏切らないためにも、実現させような」
「ああ、当然だな」
もうすこし詳細を詰めておくべきかと思ったが、不意にウォルターが口を開いた。
「あー…あのさ、悪ぃんだけど」
「ウォルター?」
「そろそろ眠気が限界なんだけど…俺だけ、先に帰っても良いか?」
「あ、ひきとめて悪かった。今日はこれで解散にしようか」
「すまん。このままだと立ったまま寝そうでな」
「いや、気にしないでくれ」
俺達は自然と手を振って別れた。
トライプールの街並みは、やっぱり落ち着く。そう思いながら隣を歩くアキトを見れば、嬉しそうな笑顔が返ってきた。
「帰ってきたね」
「ああ、帰ってきたな」
噛み締めるようにそう返してから、俺はアキトの手をそっと握った。
まだ早い時間帯のせいか、子どもたちの笑い声や鳥の鳴き声が遠くからかすかに聞こえてくる。そんな和やかな雰囲気を堪能しながら、俺はアキトと繋いだ手を揺らしつつゆっくりと道を歩いて行った。
飾り気の無い見慣れた黒鷹亭の看板が見えてくる。アキトに出会う前の俺にとっては特に思い入れの無い場所だったんだが、今は違う。パァァッと明るくなったアキトの表情の変化を楽しみながら、俺は木製のドアへと近づいた。
俺が手を伸ばすよりも先に、アキトはドアをそっと開いた。受付カウンターにはうつむいて作業をしているレーブンの姿が見えた。
「いらっしゃ…おう、おかえり。アキト、ハル」
入ってきたのが俺達だと気づいたレーブンは、口角を少しだけ上げておかえりと口にした。レーブンの笑顔は常連でも二度見するぐらいには珍しい筈なんだが、アキトと一緒にいると笑顔じゃない方が珍しいんだよな。
「ただいま帰りました、レーブンさん!」
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。