生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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615.食事会の場所

 起きだすなり大急ぎで身支度を整えた俺達は、食堂の朝食時間内にギリギリの所で間に合った。折角ならレーブンさんのご飯を食べて帰って来たなって実感したかったから、間に合って良かったよ。

 久しぶりに食べるレーブンさんが作ってくれた朝食は、やっぱりすごくおいしかった。

 レーブンさんの作る朝食って野菜もお肉もたっぷり使われてて、朝から元気が出る料理って感じがするんだよね。宿泊客には冒険者稼業の人が多いから、そういう人が動けるようにってメニューを考えてるのかな。レーブンさんならそういう事も考えて作ってくれてそうだよね。本当に優しい人だから。

「「ごちそうさまでした」」

 食事を終えて声を揃えた俺達に、ようやく厨房での仕事がひと段落したのかレーブンさんがふらりと近づいてきた。レーブンさんの料理に夢中になっている間に、みんなは食事を終えていたらしい。周りをぐるりと見回してみれば、食堂内にはもう数人しか人が残っていなかった。

「おはようございます、レーブンさん!」
「おはよう、レーブン」

 俺たちからの朝の挨拶に、レーブンさんはニッと口の端だけを上げて答えた。

「おう、二人ともおはよう」
「わざわざどうしたんだ?」

 自分の隣の椅子を勧めつつ用事があって来たんだろう?とハルが尋ねれば、レーブンさんはすぐに腰を下ろしてから笑って頷いた。

「今日の夜なんだが、場所はここじゃなくて俺の部屋にするつもりだって、一応先に言っておこうと思ってな」
「レーブンさんの部屋――ですか?」
「ああ、あっちの受付の裏に俺の私室があるんだよ」

 いつ誰が受付に来ても良いようにって、あえてそこに自分の部屋を作ってあるんだそうだ。レーブンさんらしい気づかいだ。

「レーブンの私室か」
「そういえば、ハルも入った事は無かったか?」
「ああ、確かに無かったな」

 ハルも入った事は無いのかと思いながら二人のやりとりを見守っていると、人がいない時を狙って食堂で話してたからねとハルが教えてくれた。

 ああ、そっか。ハルがいなくなっちゃって、俺が団長と話したあの時と同じか。あの時も話をしたのは食堂で、防音結界の魔道具を使ってた。

 懐かしい気持ちで思いだしていると、ハルはレーブンさんに尋ねた。

「私室でするのは良いんだが…夜の受付はどうするんだ?」
「ああ、受付は信頼できる冒険者にちゃんと依頼を出してあるからな。今日は宿の事は何も気にしなくて大丈夫だ」
「そうか。それは良かった。それならレーブンも思いっきり酒を楽しめそうだな?」

 揶揄うようにそう口にしたハルに、レーブンさんはすぐに答えた。

「ああ、受付業務なんて挟んでたら、気持ちよく酔えないからなぁ」
「レーブン…本気で飲む気だな?」
「当然だろう。北ノールの酒だぞ?」
「まあそうだな」
「あの酒に合いそうな料理を、色々考えてる。楽しみにしててくれ」

 レーブンさんはそう言いながら、すぐに立ち上がった。

「それじゃあな。今日の夜は、直接俺の部屋まで来てくれ」
「はい、楽しみにしてます!」
「俺も楽しみだよ」

 俺達の答えを聞くなりふわりと笑ったレーブンさんは、笑顔を浮かべたままで食堂から出ていった。まだ座って喋りこんでいた冒険者達が、すっごく驚いた顔でレーブンさんを見つめてたけど何かあったのかな。

 不思議には思ったけれど、俺がその疑問を口にするよりも前に、ハルが笑顔で口を開いた。

「それじゃあ今日は、食事会のための差し入れを買いに行こうか」
「うん、そうだね」
「ついでにしておきたい事とかある?」

 しておきたい事か。一つだけあるんだけど、これって迷惑にはならないのかな。

「あ、えーっと…」

 今の所、伴侶候補になったって報告をしたのは、クリスさん、カーディ、ハルの兄であるウィリアムさん、ルセフさん達4人とレーブンさんだ。でももう一人、俺の口から報告したい人がいるんだよね。

「アキトのしたい事、ちゃんと教えて欲しいな」

 優しい声に誘われるように、俺はそっと口を開いた。

「ハルと伴侶候補になれた事を、俺の口から報告したい人が…いるんだ」

 ハルは一瞬だけ驚いた様子だったけれど、次の瞬間とろりと蕩けるような笑みを浮かべた。
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