生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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616.報告したい相手予想

「うん、アキトがそうしたいなら、その人に伝えに行こうか」

 あっさりと即答したハルは、ニコニコと満面の笑みを浮かべている。誰に伝えたいかとか、どこにいる人かとか聞かれると思ってたのに、そういう質問もしないんだ?

「ハル、相手が誰かとかどこの人かとかも聞かずに、決めちゃって良いの?」
「うーん、だいたい絞り込めてるから…」
「え、そうなの?」

 俺ってそんなに分かりやすい?

「俺の予想…聞きたい?」

 悪戯っぽく笑ってそう尋ねてきたハルに、俺はすぐにコクコクと頷いた。だってハルが絞り込んでるっていう人の事、気になるよね。

「それじゃあ聞いてもらおうかな」

 にっこりと笑ったハルは明るく続けた。

「まずひとつめ。アキトは差し入れを買いに行くついでにって言われてるのに、トライプール以外の場所を言ったりしないよね」
「ああ、そういう事か」

 今日の夕方にはレーブンさんとローガンさんとの食事会で、しかも差し入れを買いに行く予定。それなのに、他の場所の事は確かに言わないよな。

「だから場所はトライプールで確定した」
「なるほど」
「それで、アキトが伝えたいと思うようなトライプールにいる相手って考えたら…何人か思い当る人がいるんだ」
「例えば?」
「そうだな、メロウとかギルマス、後は騎士団のやつらだな」

 俺が伝えたいと思った人は残念ながらその中にはいないけど、ハルの予想が気になるから続きを聞きたい。

「うんうん」
「でもアキトなら、メロウとギルマスはギルド業務で忙しいのに、わざわざ伝えにいくのも悪いとか考えそうだなと思ったんだ」

 う、すごく当たってる。

 メロウさんにはお世話になってるし大好きだけど、友人というより頼れる仕事相手って感じがするんだよね。だから伴侶候補になりましたって報告だけに行くのは、何だか違う気がする。

「次に騎士団なんだが…俺と伴侶候補になったと報告をしたら、まず相棒は間違いなくニヤニヤしながら全力で冷やかしてくる」
「…あーうん、想像できた」

 ハルの相棒でもあるケルビン団長は、ビシッと決めてる時は騎士団長らしい人だけど、普段は結構やんちゃなこどもっぽい所があるんだよね。冒険者の方が性に合ってるとか言いきっちゃう人だもんな。

 そんなケルビン団長なら――うん、絶対に冷やかしてくるよね。満足するまで全力で俺達を冷やかしてから、最後にやっとお祝いしてくれる。そんな姿があっさりと想像できてしまった。

「それに騎士団の騎士達も、絶対に大騒ぎになるからな…アキトはわざわざ騎士団に足を運びたいとは言わないと思ったんだ」

 アキトはあまり騒がれたくないだろう?と笑うハルの想像力すごすぎない?それとも俺が分かりやす過ぎるだけなのかな。

「ああ、そうそう。副団長のディエゴとはかなり仲良くなってたが、他の騎士団員に会わずに辿り着けないって事で除外した」
「うん、ディエゴにはいつかは伝えたいなーとは思ってるけど、今はまだちょっと勇気は出ないな」

 だってディエゴの隣には、かなりの確率でケルビン団長が一緒にいるからね。決してケルビン団長が嫌いなわけじゃないし、どちらかというと好ましい人だけど、こういう時はあまり会いたくない。

「そこまで考えた結果、最終的に俺が思い浮かんだ候補は一人だけなんだよな」
「…ハルの予想が聞きたいな?」

 ちょっとドキドキしながら尋ねれば、ハルはそっと俺の耳元に顔を寄せてきた。

「カルツさん、じゃないか?」

 ばっちり正解を言い当ててみせたハルに、俺は小さく手を叩きながら笑顔で頷いた。

「やっぱりそうか」

 カルツさんは、この世界に来てから出会った幽霊だ。一番最初に出会った幽霊がハルで、二番目がカルツさんなんだよね。心残りがあって湖の近くに二十年もいたけど、今は家族の営んでいるスラテール商会を見守っている。

「ハル、すごいね!さすがハル!」
「褒めてくれてありがとう。アキトの事を少しでも理解できていれば嬉しいよ」
「少しどころか完璧に理解できてるよね」

 この黒鷹亭に連れてきてくれたのは、ハルとカルツさんだったんだよね。だから黒鷹亭についたら、自然とカルツさんが思い浮かんだんだ。ハルがいなくなって大騒ぎした時もカルツさんには支えてもらったし、恋人同士になったって報告した時もすごく喜んでくれたなーって。

 だから伴侶候補になったって事も報告したいなと思ったんだと伝えれば、ハルはすぐに立ち上がった。

「それじゃあ、今日の予定は報告と買い物だね。行こう、アキト」
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