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621.カルツさんの驚き
うつむいてしまったハルは何かを考えこんでたみたいだけど、不意にバッと顔を上げた。真剣な表情を浮かべたハルは、そのままカルツさんと俺を順番に見つめてくる。
これから何か大事な話をするんだろうな。表情を見るだけでそう悟ってしまうぐらいの真剣さだった。
「ハル?」
名前を呼んでもハルはぴくりとも動かなかった。ただただじっと俺を見つめている。
あの…そんなキリッとした顔で見つめられると、絶対そんな事を気にしてる場合じゃないって分かってても、ドキッとするんだけど。
ニコニコ笑ってる優しいハルも好きだけど、こういうキリリとしたハルも格好良くて大好きだな。現実逃避みたいにそんな事を考えていると、不思議そうなカルツさんが尋ねた。
「どうかしましたか、ハルさん?」
「いや…無理に聞いてくるつもりは無いって事は分かってる。分かってるけれど、やっぱりカルツさんには言っておいた方が良いかなと思ったんだ…アキトはどう思う?」
「俺?俺はカルツさんなら何でも大丈夫だと思います」
というか、よくよく考えたら俺カルツさんには出会ってすぐにぺろっと異世界人だってバラしちゃってるんだよね。カルツさんは驚いてたけど、ハルと二人でこの世界の常識を教えてくれたんだよね。
一番隠さないと駄目な秘密である俺が異世界人である事も、二番目に隠したい幽霊が見える体質も、カルツさんにはバレてるからね。
「カルツさん、これ使っても良いかな?」
ハルは魔導収納鞄の中から、防音結界の魔道具を取り出してみせた。
「それは…?」
「防音結界の魔道具だよ」
ハルの説明を聞いたカルツさんは、興味深そうに魔道具に近づいていく。
「防音結界の魔道具を持ち運べるんですか?ああ…今はこんなに小さくなっているんですね」
「そんなに小さくないと思うんだが」
不思議そうにもっと小型化された物もあるからなとハルが付け加えれば、カルツさんは苦笑を浮かべて答えた。
「私が知ってるのは二十年ほど前の防音結界ですからね――当時は大事な商談や会議を行う部屋の四隅に、巨大な魔石と一緒に設置されてたんですよ」
ちなみにこのぐらいの大きさでしたとカルツさんが手で示したのは、なんとハルよりも大きなサイズだった。うん、それは持ち歩けるサイズじゃないよね。
しかも当時の防音結界は、その魔道具で囲われた範囲にしか効かなかったんだって。つまり四対セットで使ってたらしい。ハルよりも巨大な魔道具を四つも持ち運ぶっていうのは、いくら便利な魔導収納鞄があってもさすがに現実的じゃないと思う。
カルツさんはひとしきり魔道具を観察してから、申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
「すみません、あまりに小型軽量化されている事に驚きすぎて、すこし動揺しました」
「いや、気にしないでくれ」
「どうぞ、使って頂いて大丈夫ですよ。お二人が私に打ち明けてくれるというなら、どんな話でも聞きます」
「そうか…許可をありがとう、カルツさん」
ふわりと笑みを浮かべてお礼を言ったハルに、カルツさんはいえいえと笑ってみせた。
ハルは周囲を警戒するように視線を巡らせると、すぐに防音結界の魔道具を発動した。発動した途端に、遠くからうっすらと聞こえていた街の喧噪や鳥の鳴き声などが、ぴたりと消えた。
「こんなに小さいのに、これほどまでの精度ですか!」
「ああ、範囲はそれほど広くないけどな」
「いえ、むしろ広くない方が便利でしょう――こうして人目も場所も気にせずに秘密の会話が出来るんですから」
カルツさんはそう言って楽し気に笑いだした。生前にこれがあれば色々と役立ったでしょうねとさらりと口にする辺り、カルツさんはやっぱり根っからの商人さんなんだな。
「アキトが異世界から来たって話は覚えているか?」
「ええ。心のそこから驚きましたから、忘れたりしてませんよ」
「俺達も噂程度でしか知らない話なんだが…」
そう前置きをしたハルは、とある国で異世界人が召喚された事と、その国の貴族が異世界人を探している事を話した。
「それはつまり、召喚された場所がズレてしまったという事ですか?」
「俺がアキトと出会ったのは森の中だった」
「アキトさんが探されているかもしれないと思ってるんですね」
察しの良いカルツさんに、ハルは重々しく一つ頷いてみせた。
これから何か大事な話をするんだろうな。表情を見るだけでそう悟ってしまうぐらいの真剣さだった。
「ハル?」
名前を呼んでもハルはぴくりとも動かなかった。ただただじっと俺を見つめている。
あの…そんなキリッとした顔で見つめられると、絶対そんな事を気にしてる場合じゃないって分かってても、ドキッとするんだけど。
ニコニコ笑ってる優しいハルも好きだけど、こういうキリリとしたハルも格好良くて大好きだな。現実逃避みたいにそんな事を考えていると、不思議そうなカルツさんが尋ねた。
「どうかしましたか、ハルさん?」
「いや…無理に聞いてくるつもりは無いって事は分かってる。分かってるけれど、やっぱりカルツさんには言っておいた方が良いかなと思ったんだ…アキトはどう思う?」
「俺?俺はカルツさんなら何でも大丈夫だと思います」
というか、よくよく考えたら俺カルツさんには出会ってすぐにぺろっと異世界人だってバラしちゃってるんだよね。カルツさんは驚いてたけど、ハルと二人でこの世界の常識を教えてくれたんだよね。
一番隠さないと駄目な秘密である俺が異世界人である事も、二番目に隠したい幽霊が見える体質も、カルツさんにはバレてるからね。
「カルツさん、これ使っても良いかな?」
ハルは魔導収納鞄の中から、防音結界の魔道具を取り出してみせた。
「それは…?」
「防音結界の魔道具だよ」
ハルの説明を聞いたカルツさんは、興味深そうに魔道具に近づいていく。
「防音結界の魔道具を持ち運べるんですか?ああ…今はこんなに小さくなっているんですね」
「そんなに小さくないと思うんだが」
不思議そうにもっと小型化された物もあるからなとハルが付け加えれば、カルツさんは苦笑を浮かべて答えた。
「私が知ってるのは二十年ほど前の防音結界ですからね――当時は大事な商談や会議を行う部屋の四隅に、巨大な魔石と一緒に設置されてたんですよ」
ちなみにこのぐらいの大きさでしたとカルツさんが手で示したのは、なんとハルよりも大きなサイズだった。うん、それは持ち歩けるサイズじゃないよね。
しかも当時の防音結界は、その魔道具で囲われた範囲にしか効かなかったんだって。つまり四対セットで使ってたらしい。ハルよりも巨大な魔道具を四つも持ち運ぶっていうのは、いくら便利な魔導収納鞄があってもさすがに現実的じゃないと思う。
カルツさんはひとしきり魔道具を観察してから、申し訳なさそうにぺこりと頭を下げた。
「すみません、あまりに小型軽量化されている事に驚きすぎて、すこし動揺しました」
「いや、気にしないでくれ」
「どうぞ、使って頂いて大丈夫ですよ。お二人が私に打ち明けてくれるというなら、どんな話でも聞きます」
「そうか…許可をありがとう、カルツさん」
ふわりと笑みを浮かべてお礼を言ったハルに、カルツさんはいえいえと笑ってみせた。
ハルは周囲を警戒するように視線を巡らせると、すぐに防音結界の魔道具を発動した。発動した途端に、遠くからうっすらと聞こえていた街の喧噪や鳥の鳴き声などが、ぴたりと消えた。
「こんなに小さいのに、これほどまでの精度ですか!」
「ああ、範囲はそれほど広くないけどな」
「いえ、むしろ広くない方が便利でしょう――こうして人目も場所も気にせずに秘密の会話が出来るんですから」
カルツさんはそう言って楽し気に笑いだした。生前にこれがあれば色々と役立ったでしょうねとさらりと口にする辺り、カルツさんはやっぱり根っからの商人さんなんだな。
「アキトが異世界から来たって話は覚えているか?」
「ええ。心のそこから驚きましたから、忘れたりしてませんよ」
「俺達も噂程度でしか知らない話なんだが…」
そう前置きをしたハルは、とある国で異世界人が召喚された事と、その国の貴族が異世界人を探している事を話した。
「それはつまり、召喚された場所がズレてしまったという事ですか?」
「俺がアキトと出会ったのは森の中だった」
「アキトさんが探されているかもしれないと思ってるんですね」
察しの良いカルツさんに、ハルは重々しく一つ頷いてみせた。
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