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630.【ハル視点】視野の狭さ
知っていたというのは一体どういう意味だろう。俺達はクリスとカーディさんの依頼中に伴侶候補になった。トライプールに帰ってきたのはまだ昨日の事だし、昨日は碌に出歩かずにすぐに黒鷹亭で眠ってしまった。
カルツさんが俺達の様子を見るためにわざわざ黒鷹亭に来たなんて事は無いだろう。自由に動き回れるカルツさんだが、彼にとって一番優先されるのは間違いなく家族だろうからな。
「黙っているのも、何だか騙すようで嫌だなと思ったんですが…突然こんな話をしてすみません」
カルツさんが申し訳なさそうにそう続けたのを聞き流しながら、俺は考えを巡らせた。わざわざ自分で情報を探ったのでなければ、誰かが俺達の事を噂していたという事になるよな。
もしかしたらその相手は、異世界人を探しているという貴族の息がかかった相手かもしれない。
もしアキトが異世界人かもしれないと疑われているとしたら、きっと最初に来るのは調査をするための手勢だろう。そしてアキトを調査すれば、自然と伴侶候補がいるらしいという話題になるかもしれない。
俺はぐっと奥歯を噛み締めた。少しでも可能性がある限り、これは聞かずに流すわけにはいかないな。
「なあ、カルツさん。その情報をいつ、どこで、どんな奴から聞いたのか…聞いても良いか?」
もしそいつが俺とアキトを引き離そうとするのなら、全力で抗うぞと覚悟を決めた。
「ええ、もちろんです。実は昨日、冒険者らしき方々が話しているのを聞いたんです」
「冒険者らしき奴ら…そいつらの見た目や特徴は説明できるか?」
カルツさんの記憶力ならそれぐらいは覚えているだろうと確信しての質問だったが、カルツさんは慌てた様子でぶんぶんと手を振った。
「あの、そんなに警戒する必要はありませんよ」
「警戒する必要が無い…とは?」
貴族からの依頼で動いている冒険者かもしれないのに?思わず睨むような視線を向けてしまったが、カルツさんは少しも怯まずにすぐに口を開いた。
「ええ。紛らわしい言い方をしてしまいましたね…おそらくあの方々は、お二人のお知り合いなのだと思います」
「…知り合いだと判断した理由は何だ?」
疑ってかかった俺の質問にも、カルツさんは穏やかな笑みを浮かべていた。
「まさかハルとアキトが伴侶候補になるとはなと一人が口にしたら、別に意外でも無いだろうと他の人達が笑っていたから…ですね」
あれは間違いなく、話題の人達に対しての親しみのこもった声色でしたとカルツさんは続けた。
「元商人の目を信じて頂けるなら、決して警戒するような相手では無かったんです」
「そう…か…」
カルツさんが警戒する必要が無いとはっきりと断言するような人達で、しかも俺とアキトが伴侶候補になった事を知っている。見た目からして明らかに冒険者だと判断できる相手。
その全てに当てはまる奴なんて、そんなのあいつら以外にいないだろう。
「あーすまない、カルツさん。思い当る奴らが浮かんだよ…もしかしてそいつらは四人組だったか?」
「ええ、確かに四人組でしたよ」
俺はカルツさんの答えを聞くなり、ふうーっと思いっきり息を吐いた。
あれだけ情報があったのに、何故すぐに気づけなかったんだろう。アキトに何かあったらと考えていたせいで、視野が狭くなっていたのかもしれないな。なんとも情けないと反省しながら、俺は口を開いた。
「なるほど、ルセフ達か」
「ええ、確かにそんなお名前でしたね。後はウォルさんと、ブレイさん、あとファリーアさん…でしたか」
「ウォルターに、ブレイズ、それにファリーマだな」
うろ覚えとはいえ、名前まで覚えてくれているのか。うん、やっぱりカルツさんの記憶力は抜群だな。感心している俺の隣で、さっきまで黙りこんでいたアキトが口を開いた。
「つまり…ルセフさん達がこの近くを通りかかったって事?」
すごい偶然だとアキトが呟いたのを聞いて、俺はふとある事を思い出してしまった。ルセフ達がこの場所を通るのには、ちゃんとした理由がある。それも知っていたのに、本当に何故思いつかなかったんだろうな。
「ああ、そうみたいだな。まあよくよく考えてみれば、黒酒を売ってるラルトの酒屋っていうのは、ちょうどこの近くにあるんだ…だから不思議って訳でも無い」
「えっと…黒酒を売ってるお酒屋さんって、ルセフさん達と連絡を取れるって言ってたあの?」
アキトの質問に、俺は笑って頷いた。
「ああそうだ。つまりあいつらはこの近くに住んでるって事になる。自分たちの家の近くで普通に世間話として俺達の事を喋っていたのを、たまたまカルツさんが聞いたんだろう」
「そういう事か」
「カルツさん、焦らせてすまなかった」
勝手に警戒して質問責めにしてしまった事を、俺はすぐに謝罪した。
「お気になさらず」
カルツさんはあっさりと俺の謝罪を受け入れてくれた。
「それにしても、ハルさん…何か、ありましたか?」
そう続けたカルツさんは、心配そうに俺の表情を伺ってくる。うん、さすがに鋭いな。
「何か…とは?」
ごまかすように質問に質問で返せば、カルツさんはすぐに答えてくれた。
「元々アキトさんに関しては過保護でしたが、あんな風に誰かに噂されていたってだけでピリピリしたりしない人だったでしょう?」
「最近、色々あってな…警戒を怠れないんだ」
それだけを答えた俺に、カルツさんはそれ以上は何も聞かなかった。ただにっこりと笑うと、話したいと思ったらいつでも聞きますからねと声をかけてくれた。
カルツさんが俺達の様子を見るためにわざわざ黒鷹亭に来たなんて事は無いだろう。自由に動き回れるカルツさんだが、彼にとって一番優先されるのは間違いなく家族だろうからな。
「黙っているのも、何だか騙すようで嫌だなと思ったんですが…突然こんな話をしてすみません」
カルツさんが申し訳なさそうにそう続けたのを聞き流しながら、俺は考えを巡らせた。わざわざ自分で情報を探ったのでなければ、誰かが俺達の事を噂していたという事になるよな。
もしかしたらその相手は、異世界人を探しているという貴族の息がかかった相手かもしれない。
もしアキトが異世界人かもしれないと疑われているとしたら、きっと最初に来るのは調査をするための手勢だろう。そしてアキトを調査すれば、自然と伴侶候補がいるらしいという話題になるかもしれない。
俺はぐっと奥歯を噛み締めた。少しでも可能性がある限り、これは聞かずに流すわけにはいかないな。
「なあ、カルツさん。その情報をいつ、どこで、どんな奴から聞いたのか…聞いても良いか?」
もしそいつが俺とアキトを引き離そうとするのなら、全力で抗うぞと覚悟を決めた。
「ええ、もちろんです。実は昨日、冒険者らしき方々が話しているのを聞いたんです」
「冒険者らしき奴ら…そいつらの見た目や特徴は説明できるか?」
カルツさんの記憶力ならそれぐらいは覚えているだろうと確信しての質問だったが、カルツさんは慌てた様子でぶんぶんと手を振った。
「あの、そんなに警戒する必要はありませんよ」
「警戒する必要が無い…とは?」
貴族からの依頼で動いている冒険者かもしれないのに?思わず睨むような視線を向けてしまったが、カルツさんは少しも怯まずにすぐに口を開いた。
「ええ。紛らわしい言い方をしてしまいましたね…おそらくあの方々は、お二人のお知り合いなのだと思います」
「…知り合いだと判断した理由は何だ?」
疑ってかかった俺の質問にも、カルツさんは穏やかな笑みを浮かべていた。
「まさかハルとアキトが伴侶候補になるとはなと一人が口にしたら、別に意外でも無いだろうと他の人達が笑っていたから…ですね」
あれは間違いなく、話題の人達に対しての親しみのこもった声色でしたとカルツさんは続けた。
「元商人の目を信じて頂けるなら、決して警戒するような相手では無かったんです」
「そう…か…」
カルツさんが警戒する必要が無いとはっきりと断言するような人達で、しかも俺とアキトが伴侶候補になった事を知っている。見た目からして明らかに冒険者だと判断できる相手。
その全てに当てはまる奴なんて、そんなのあいつら以外にいないだろう。
「あーすまない、カルツさん。思い当る奴らが浮かんだよ…もしかしてそいつらは四人組だったか?」
「ええ、確かに四人組でしたよ」
俺はカルツさんの答えを聞くなり、ふうーっと思いっきり息を吐いた。
あれだけ情報があったのに、何故すぐに気づけなかったんだろう。アキトに何かあったらと考えていたせいで、視野が狭くなっていたのかもしれないな。なんとも情けないと反省しながら、俺は口を開いた。
「なるほど、ルセフ達か」
「ええ、確かにそんなお名前でしたね。後はウォルさんと、ブレイさん、あとファリーアさん…でしたか」
「ウォルターに、ブレイズ、それにファリーマだな」
うろ覚えとはいえ、名前まで覚えてくれているのか。うん、やっぱりカルツさんの記憶力は抜群だな。感心している俺の隣で、さっきまで黙りこんでいたアキトが口を開いた。
「つまり…ルセフさん達がこの近くを通りかかったって事?」
すごい偶然だとアキトが呟いたのを聞いて、俺はふとある事を思い出してしまった。ルセフ達がこの場所を通るのには、ちゃんとした理由がある。それも知っていたのに、本当に何故思いつかなかったんだろうな。
「ああ、そうみたいだな。まあよくよく考えてみれば、黒酒を売ってるラルトの酒屋っていうのは、ちょうどこの近くにあるんだ…だから不思議って訳でも無い」
「えっと…黒酒を売ってるお酒屋さんって、ルセフさん達と連絡を取れるって言ってたあの?」
アキトの質問に、俺は笑って頷いた。
「ああそうだ。つまりあいつらはこの近くに住んでるって事になる。自分たちの家の近くで普通に世間話として俺達の事を喋っていたのを、たまたまカルツさんが聞いたんだろう」
「そういう事か」
「カルツさん、焦らせてすまなかった」
勝手に警戒して質問責めにしてしまった事を、俺はすぐに謝罪した。
「お気になさらず」
カルツさんはあっさりと俺の謝罪を受け入れてくれた。
「それにしても、ハルさん…何か、ありましたか?」
そう続けたカルツさんは、心配そうに俺の表情を伺ってくる。うん、さすがに鋭いな。
「何か…とは?」
ごまかすように質問に質問で返せば、カルツさんはすぐに答えてくれた。
「元々アキトさんに関しては過保護でしたが、あんな風に誰かに噂されていたってだけでピリピリしたりしない人だったでしょう?」
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