637 / 1,561
636.カーディの惚気
「よし、それじゃあ折角だし一緒に行くか!」
明るい笑顔でそう提案したカーディに、俺とハルは顔を見合わせてからすぐに揃って頷いた。
店の詳細までは聞いてないんだってハルも言ってたしね。そもそもどんな料理なのかすら知らないんだし、もしカーディの好きそうなお店がいくつかあったら、どれが正解かすら分からないっていう残念な事になる所だったんだ。
そんな行き当たりばったりの俺達の前に、まさかの本人が現れてお気に入りのお店に案内してくれるって言うんだから断る理由なんて無い。
「それにしても、今日はクリスは一緒じゃないんだな?」
三人で並んで歩き出すと、不意にハルが口を開いた。
ああ、確かに。クリスさんが一緒じゃないのには、俺もちょっとびっくりした。ずっと二人で一緒にいる所ばかり見てたから、それが普通のような気がしてたんだよね。
「こんな所に来るって言ったら絶対について来そうなのにな」
あーうん。人が多い場所にこんなに可愛いカーディを一人で行かせて何かあったら、心配でたまらないですとか言いそうだよね。クリスさんなら。
カーディはハルの質問に、苦笑を浮かべながら答えた。
「あー昨日さ、冒険者ギルドに行って報告した後から、あいつ、ず――――っとあの赤い魔石をいじってるんだよ」
「え、ずっと!?」
「ああ、ずっとだな」
「寝てないの?」
恐る恐る尋ねれば、カーディはいいやとあっさりと否定してくれた。良かった、寝てはいるんだ。ずっとってのは起きてる間はずっとって意味なのかな。そう考えを巡らせた瞬間、カーディは困った顔で続けた。
「クリスが一緒に寝ないなら俺も徹夜するって言って脅したら、何とか寝てはくれたんだ」
「脅した」
「えっとな…それぐらいしないと寝ないんだよ、クリスは」
魔道具の事に夢中になると自分の事は一切気にしなくなるのに、俺のためなら寝ないと駄目だって思うらしいから仕方なくなとそうさらりと続ける。愛されてるね、カーディ。
「じゃあクリスは家にいるのか」
「ああ、家というか店というか…多分俺が出てきたのにも気づいてないぞ」
あんなに自分の伴侶が大好きなあのクリスさんが、大事な大事なカーディの不在に気づかないって…そんな事ある?
びっくり顔で見つめてしまったけれど、カーディは重々しく頷いただけだった。
あ、うん。その反応で分かったよ。本当に気づかないんだな。
「なるほど…カーディさんは、一人で昼食の買い出しに来たのか」
「ああ。適当な飯を用意しても後で食べるって言うのが分かってるから、あえて俺の好物を買いたくてな」
「えっと、クリスさんの好物じゃなくて?」
「まあそこの屋台飯はクリスも好きだが…こういう時は俺の好物を用意して、お前のために俺がわざわざ買ってきたのに食べないのか?って言った方が食べるんだよ」
なるほど。こういう時のクリスさんにご飯を食べさせるための攻略法がそれって事か。
「それは…大変だな」
何と言えば良いのか言葉に悩んだらしいハルは、しばらく黙り込んでからぽそりとそう返した。きっと考えに考えてやっと出た言葉なんだろうな。俺なんて何て言って良いかわららなくて黙ったままだから、ハルはすごいと思う。
「うん…まあ、そうだな。正直に言えば楽では無いし大変なんだが…そういう所も可愛いと思うんだから仕方ない」
さらりと返ってきたカーディのそんな言葉に、俺は思わず頬を赤く染めてしまった。
何ていうかこう、カーディはクリスさんの事を愛おしいと思ってるんだなってのをしみじみ実感しちゃったんだよ。下手な惚気話よりも強烈な言葉だった。
「あれ、アキト、なんで赤くなってるんだ?」
カーディは不思議そうな顔だけど、隣を歩いているハルは気持ちは分かるよと言いたげな優しい笑みを見せてくれた。うう、ハルの優しさが染みる。
「さっきの言葉でカーディがクリスさんの事を大好きなんだなーって実感したからだよ。惚気話よりも強烈だったからね!」
恥ずかしくなってもおかしくないと思うと必死で主張した俺に、カーディはへらりと笑ってみせた。
「ああ、まあな。それにアキトもハルの事大好きだろうが」
揶揄ったらあっさり肯定された上に、予想外の返しが返ってきてしまった。
「あ…うん、それは…そうだね」
その言葉を否定もできないからと頬を赤く染めながら肯定すれば、繋いだままだった手がキュッと握られた。
明るい笑顔でそう提案したカーディに、俺とハルは顔を見合わせてからすぐに揃って頷いた。
店の詳細までは聞いてないんだってハルも言ってたしね。そもそもどんな料理なのかすら知らないんだし、もしカーディの好きそうなお店がいくつかあったら、どれが正解かすら分からないっていう残念な事になる所だったんだ。
そんな行き当たりばったりの俺達の前に、まさかの本人が現れてお気に入りのお店に案内してくれるって言うんだから断る理由なんて無い。
「それにしても、今日はクリスは一緒じゃないんだな?」
三人で並んで歩き出すと、不意にハルが口を開いた。
ああ、確かに。クリスさんが一緒じゃないのには、俺もちょっとびっくりした。ずっと二人で一緒にいる所ばかり見てたから、それが普通のような気がしてたんだよね。
「こんな所に来るって言ったら絶対について来そうなのにな」
あーうん。人が多い場所にこんなに可愛いカーディを一人で行かせて何かあったら、心配でたまらないですとか言いそうだよね。クリスさんなら。
カーディはハルの質問に、苦笑を浮かべながら答えた。
「あー昨日さ、冒険者ギルドに行って報告した後から、あいつ、ず――――っとあの赤い魔石をいじってるんだよ」
「え、ずっと!?」
「ああ、ずっとだな」
「寝てないの?」
恐る恐る尋ねれば、カーディはいいやとあっさりと否定してくれた。良かった、寝てはいるんだ。ずっとってのは起きてる間はずっとって意味なのかな。そう考えを巡らせた瞬間、カーディは困った顔で続けた。
「クリスが一緒に寝ないなら俺も徹夜するって言って脅したら、何とか寝てはくれたんだ」
「脅した」
「えっとな…それぐらいしないと寝ないんだよ、クリスは」
魔道具の事に夢中になると自分の事は一切気にしなくなるのに、俺のためなら寝ないと駄目だって思うらしいから仕方なくなとそうさらりと続ける。愛されてるね、カーディ。
「じゃあクリスは家にいるのか」
「ああ、家というか店というか…多分俺が出てきたのにも気づいてないぞ」
あんなに自分の伴侶が大好きなあのクリスさんが、大事な大事なカーディの不在に気づかないって…そんな事ある?
びっくり顔で見つめてしまったけれど、カーディは重々しく頷いただけだった。
あ、うん。その反応で分かったよ。本当に気づかないんだな。
「なるほど…カーディさんは、一人で昼食の買い出しに来たのか」
「ああ。適当な飯を用意しても後で食べるって言うのが分かってるから、あえて俺の好物を買いたくてな」
「えっと、クリスさんの好物じゃなくて?」
「まあそこの屋台飯はクリスも好きだが…こういう時は俺の好物を用意して、お前のために俺がわざわざ買ってきたのに食べないのか?って言った方が食べるんだよ」
なるほど。こういう時のクリスさんにご飯を食べさせるための攻略法がそれって事か。
「それは…大変だな」
何と言えば良いのか言葉に悩んだらしいハルは、しばらく黙り込んでからぽそりとそう返した。きっと考えに考えてやっと出た言葉なんだろうな。俺なんて何て言って良いかわららなくて黙ったままだから、ハルはすごいと思う。
「うん…まあ、そうだな。正直に言えば楽では無いし大変なんだが…そういう所も可愛いと思うんだから仕方ない」
さらりと返ってきたカーディのそんな言葉に、俺は思わず頬を赤く染めてしまった。
何ていうかこう、カーディはクリスさんの事を愛おしいと思ってるんだなってのをしみじみ実感しちゃったんだよ。下手な惚気話よりも強烈な言葉だった。
「あれ、アキト、なんで赤くなってるんだ?」
カーディは不思議そうな顔だけど、隣を歩いているハルは気持ちは分かるよと言いたげな優しい笑みを見せてくれた。うう、ハルの優しさが染みる。
「さっきの言葉でカーディがクリスさんの事を大好きなんだなーって実感したからだよ。惚気話よりも強烈だったからね!」
恥ずかしくなってもおかしくないと思うと必死で主張した俺に、カーディはへらりと笑ってみせた。
「ああ、まあな。それにアキトもハルの事大好きだろうが」
揶揄ったらあっさり肯定された上に、予想外の返しが返ってきてしまった。
「あ…うん、それは…そうだね」
その言葉を否定もできないからと頬を赤く染めながら肯定すれば、繋いだままだった手がキュッと握られた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。