生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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656.レーブンさんの私室

「ルタス、それじゃあ後は頼んだぞ」
「はいよー任せてくれー!受付の事は何も気にせず、思いっきり楽しんでくれたら良いからな。今日は特別な酒を堪能するんだろ?」
「ああ、そうだな」

 どうやらレーブンさんは、依頼の目的をちゃんと話していたらしい。

 しかもルタスさんの言い方からして、食事会のためにとかじゃなくて、特別な酒を堪能するためにってはっきり言ったんだろうな。特別な酒は場を整えてから飲まないと後悔するからなーとしきりに頷いてるから、ルタスさんもお酒が好きな人なんだろうな。

 それにしても、いつもどっしり落ち着いているレーブンさんのワクワクした様子が伝わってきて、ちょっと微笑ましい。

「あ、もし対処できない事があったら、明日に回しておくで良いんだよな?」
「ああ、そうしてくれ」

 途中で邪魔が入らない事が一番大事だからなと、レーブンさんは上機嫌だ。

「了解!アキトとハルも楽しんでくれよー」
「ああ、ありがとう」
「ありがとうございます」

 朗らかに笑って手を振ってくれるルタスさんに見送られて、俺達はそのままレーブンさんの私室へと向かった。

「ここだ。入ってくれ」

 レーブンさんはカチリとドアの鍵だけを開けると、俺とハルに向かってそう声をかけた。

 そっと開いたドアから部屋の中を覗き込めば、まず最初に目に飛び込んできたのは大きな長テーブルだった。木製の大きな長テーブルには、テーブルを挟むようにして六つの椅子が並んでいる。

 室内をぐるりと見回してみれば、そこにある家具や雑貨はどれも飾り気の無い、どちらかと言うとシンプルなものばかりだった。無骨な感じもするけど、でも不思議と温かみも感じる。うん、これはレーブンさんらしい部屋だな。

「あーここが食事を楽しむための部屋で、その右側のドアは俺の寝室、左側のドアは来客用の寝室に繋がってる」

 レーブンさんの説明によると、来客用の寝室の中にはベッドがいくつか並べられているそうだ。もし酔いつぶれたり眠たくなったら、自由に使って良いらしい。

 寝落ちしても良いなんてすごい環境だな。まあこれは黒鷹亭に泊まってない人を招待した時のために用意してあるんだろうな。俺とハルは階段を上ればすぐに自分たちの部屋に戻れるから使わないだろうけど…どんな部屋なのか気になる。

「もし気になるなら、中も見てみるか?」

 目敏く俺の反応に気づいたレーブンさんが、そう尋ねてくれた。

「はい、ぜひ!」
「ああ、そうだな。俺もちょっと気になる」

 あ、ハルも気になってたんだ。仲間がいて良かった。

「鍵はかかってないから、覗いて来て良いぞ。俺は先にテーブルの用意をしとく」

 レーブンさんの提案に俺とハルは一瞬だけ目を見合わせてから、ドアの方へと近づいていった。

 そっと左側のドアを開いてみれば、そこには5つのベッドがずらりと並んでいた。部屋の広さに対してベッドが多いからちょっと圧迫感はあるけど、椅子の数とベッドの数を合わせてくれるんだろうな。

「ベッドがこんなに並んでると、なんかすごいね」
「ああ、思いっきり飲んでいつでも潰れて良いぞって気持ちが伝わってくるな」

 苦笑しながら、ハルはボソリとそう呟いた。うん、それは確かにそうかもしれない。



 来客用の寝室から出ると、レーブンさんはテーブルの上に食器を並べている所だった。

「あ、俺も手伝います」
「いや、大丈夫だ。料理はこの中だしな」

 レーブンさんは近くにあった木製のワゴンをコンと軽く叩いてみせた。

「ワゴン式の魔導収納か…?」
「ああ、ストファー魔道具店のワゴン式魔導収納だよ」
「クリスさんとカーディのお店の?」
「ああ、そうだ。これは試作品だから市販品よりも保温と保冷の効果が短いんだそうだ」
「そうなのか…」
「と言ってクリスが置いていっただけだから、本当はどうかは知らないがな」

 あいつはカーディをここで雇ってたからってやけに俺に恩を感じてるんだよなぁと、レーブンさんは困り顔でぼやいた。

「もう十分だっていってるんだが…」
「そうか…もし良かったら俺からも言っておこうか?」
「お前から…?」

 レーブンさんは不思議そうにじっとハルを見つめた。

「ああ、依頼を受けた関係で俺はクリスと友人になったんだ」
「友人…」
「俺もカーディと友達になりましたよ!」
「ああ、アキトとカーディは気が合うと思うんだが…ハルとクリス…?」

 嘘だろうと言いたげな表情のレーブンさんに、ハルはまあそうなるよなぁと苦笑を返した。
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