生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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657.友人の話

 ハルとクリスさんが友人になったという話を聞くなり、レーブンさんは怪訝そうに眉を寄せた。レーブンさんにとっては、よほど予想外かつ衝撃的な話だったらしい。

 冒険者であり騎士でもあるハルと、魔道具技師でもあり商人でもあるクリスさん。

 二人とも人当たりが良くて穏やかに話す人だから、客観的に見ても相性が悪そうには見えないと思うんだけどな。

 それともレーブンさんから見ると、違って見えるんだろうか。

「ハルは…いや、この部屋は防音結界が聞いてるから本名でも大丈夫か。ハロルドは、昔から友人なんて数える程しかいないだろ?」

 レーブンさんはお前とは長い付き合いだからな、ちゃーんと知ってるぞとさらりと続けた。長い付き合いって言い切れるのは正直羨ましいんだけど、今気になる事を言ったよね?

「えーと…?」

 ハルは顔が広いし、当然友人だって多いんだと勝手に思ってたんだけど…。

 思わず首を傾げた俺に、レーブンさんがちらりと視線を向けた。

「どうした、アキト?」
「……あの、さっき友人が少ないって言ってましたけど…ハルってすごく顔が広いですよね?今日もたまたま出会った衛兵の人と知り合いだったぐらいだし…」

 それに冒険者としての依頼でいろんな村や街に行ったけど、どこに行っても知り会いがたくさんいたのは確かだ。だから友人もたくさんいるんじゃ?と俺が尋ねる前に、レーブンさんが重々しく口を開いた。

「あのな、アキト。顔が広いのと、友人が多いってのは全くの別物だぞ。こいつは広く浅く付き合うから顔見知りは沢山いるが、信頼できる友人は少ない。そんな奴だ」

 びっくりしてハルに視線を向ければ、ハルは苦笑しながらもすぐに頷いた。

「まあそうだな。顔見知りや知り合いは多いが、友人とまで呼べる奴はそこまで多くない」

 本人が認めるって事は本当にそうなのか。正直に言えばちょっと意外だけど、信頼できる友人がたくさんいるんだって言われるよりは良いかな。

 ハルの大事にしてる友人に、嫉妬とかしたくないしな。

「だろう?そんなお前があのクリスと友人になったって…本当なのか?」
「だから本当だって言ってるだろ」

 拗ねたように言い返すハルに、あ、珍しい顔だと嬉しくなってしまった。レーブンさんにはハルも素を見せてる気がする。

「そこまで言うなら信じるが…クリスは魔道具と商売の話が多いし、お前は依頼と任務、後は魔物や採取地の話が多い」

 レーブンさんはそう言うと、ハルに視線を向けた。

「ああ、まあそうだな」
「そんなお前らが、二人揃って…一体何の話をするんだ?」

 これはただの好奇心だから、言いたくないなら別に良いんだが…と律儀に付け加えたレーブンさんに、ハルはあっさりと胸を張って答えた。

「素材や店、抜け道とかの情報交換もしてるが…クリスは主に伴侶自慢、俺は伴侶候補自慢だな!」
「………は?」

 ぽかんと口を開いたまま、レーブンさんは固まってしまった。そんな表情をしたレーブンさんを見たのは、初めてかもしれない。

「だから、クリスはカーディについての惚気、俺はアキトについての惚気で意気投合したんだ!」

 ハルは満面の笑みを浮かべて続けた。

「…惚気」

 何とかそれだけを繰り返したレーブンさんに、ハルはすぐに頷いた。

「あいつはカーディさんに夢中だから、アキトの事を話しても興味を持たれる心配が無いからな」

 安心して惚気られる友人なんだとハルは嬉しそうに続けたけど、あの、レーブンさんまだ呆然としてるからね?

 もうちょっとだけでも待ってあげて欲しい。

「ん?どうした、レーブン。大丈夫か?」

 レーブンさんの表情にようやく気づいたのか心配そうに尋ねたハルの声に、レーブンさんはハッと反応した。

「あー…大丈夫だ…。お前らが伴侶自慢と伴侶候補自慢をしてる所は…うん、あっさり想像できたよ」
「お、それなら信じてくれるか」
「ああ、疑って悪かったな」
「いや、俺もまさか友人が増えるとは思ってなかったからな」

 嬉しそうなハルをちらりと見てから、レーブンさんは俺の方へと視線を向けた。

「…アキトも、カーディと惚気合ってるのか?」
「う…はい」

 カーディは俺の惚気も嬉しそうに聞いてくれるから、ついつい話しちゃうんだよな。

「そうか…まあお前らに気の合う友人が出来て良かったよ」

 疲れたような表情だったけど、レーブンさんはそう言うと優しい笑みを浮かべた。
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