658 / 1,561
657.友人の話
ハルとクリスさんが友人になったという話を聞くなり、レーブンさんは怪訝そうに眉を寄せた。レーブンさんにとっては、よほど予想外かつ衝撃的な話だったらしい。
冒険者であり騎士でもあるハルと、魔道具技師でもあり商人でもあるクリスさん。
二人とも人当たりが良くて穏やかに話す人だから、客観的に見ても相性が悪そうには見えないと思うんだけどな。
それともレーブンさんから見ると、違って見えるんだろうか。
「ハルは…いや、この部屋は防音結界が聞いてるから本名でも大丈夫か。ハロルドは、昔から友人なんて数える程しかいないだろ?」
レーブンさんはお前とは長い付き合いだからな、ちゃーんと知ってるぞとさらりと続けた。長い付き合いって言い切れるのは正直羨ましいんだけど、今気になる事を言ったよね?
「えーと…?」
ハルは顔が広いし、当然友人だって多いんだと勝手に思ってたんだけど…。
思わず首を傾げた俺に、レーブンさんがちらりと視線を向けた。
「どうした、アキト?」
「……あの、さっき友人が少ないって言ってましたけど…ハルってすごく顔が広いですよね?今日もたまたま出会った衛兵の人と知り合いだったぐらいだし…」
それに冒険者としての依頼でいろんな村や街に行ったけど、どこに行っても知り会いがたくさんいたのは確かだ。だから友人もたくさんいるんじゃ?と俺が尋ねる前に、レーブンさんが重々しく口を開いた。
「あのな、アキト。顔が広いのと、友人が多いってのは全くの別物だぞ。こいつは広く浅く付き合うから顔見知りは沢山いるが、信頼できる友人は少ない。そんな奴だ」
びっくりしてハルに視線を向ければ、ハルは苦笑しながらもすぐに頷いた。
「まあそうだな。顔見知りや知り合いは多いが、友人とまで呼べる奴はそこまで多くない」
本人が認めるって事は本当にそうなのか。正直に言えばちょっと意外だけど、信頼できる友人がたくさんいるんだって言われるよりは良いかな。
ハルの大事にしてる友人に、嫉妬とかしたくないしな。
「だろう?そんなお前があのクリスと友人になったって…本当なのか?」
「だから本当だって言ってるだろ」
拗ねたように言い返すハルに、あ、珍しい顔だと嬉しくなってしまった。レーブンさんにはハルも素を見せてる気がする。
「そこまで言うなら信じるが…クリスは魔道具と商売の話が多いし、お前は依頼と任務、後は魔物や採取地の話が多い」
レーブンさんはそう言うと、ハルに視線を向けた。
「ああ、まあそうだな」
「そんなお前らが、二人揃って…一体何の話をするんだ?」
これはただの好奇心だから、言いたくないなら別に良いんだが…と律儀に付け加えたレーブンさんに、ハルはあっさりと胸を張って答えた。
「素材や店、抜け道とかの情報交換もしてるが…クリスは主に伴侶自慢、俺は伴侶候補自慢だな!」
「………は?」
ぽかんと口を開いたまま、レーブンさんは固まってしまった。そんな表情をしたレーブンさんを見たのは、初めてかもしれない。
「だから、クリスはカーディについての惚気、俺はアキトについての惚気で意気投合したんだ!」
ハルは満面の笑みを浮かべて続けた。
「…惚気」
何とかそれだけを繰り返したレーブンさんに、ハルはすぐに頷いた。
「あいつはカーディさんに夢中だから、アキトの事を話しても興味を持たれる心配が無いからな」
安心して惚気られる友人なんだとハルは嬉しそうに続けたけど、あの、レーブンさんまだ呆然としてるからね?
もうちょっとだけでも待ってあげて欲しい。
「ん?どうした、レーブン。大丈夫か?」
レーブンさんの表情にようやく気づいたのか心配そうに尋ねたハルの声に、レーブンさんはハッと反応した。
「あー…大丈夫だ…。お前らが伴侶自慢と伴侶候補自慢をしてる所は…うん、あっさり想像できたよ」
「お、それなら信じてくれるか」
「ああ、疑って悪かったな」
「いや、俺もまさか友人が増えるとは思ってなかったからな」
嬉しそうなハルをちらりと見てから、レーブンさんは俺の方へと視線を向けた。
「…アキトも、カーディと惚気合ってるのか?」
「う…はい」
カーディは俺の惚気も嬉しそうに聞いてくれるから、ついつい話しちゃうんだよな。
「そうか…まあお前らに気の合う友人が出来て良かったよ」
疲れたような表情だったけど、レーブンさんはそう言うと優しい笑みを浮かべた。
冒険者であり騎士でもあるハルと、魔道具技師でもあり商人でもあるクリスさん。
二人とも人当たりが良くて穏やかに話す人だから、客観的に見ても相性が悪そうには見えないと思うんだけどな。
それともレーブンさんから見ると、違って見えるんだろうか。
「ハルは…いや、この部屋は防音結界が聞いてるから本名でも大丈夫か。ハロルドは、昔から友人なんて数える程しかいないだろ?」
レーブンさんはお前とは長い付き合いだからな、ちゃーんと知ってるぞとさらりと続けた。長い付き合いって言い切れるのは正直羨ましいんだけど、今気になる事を言ったよね?
「えーと…?」
ハルは顔が広いし、当然友人だって多いんだと勝手に思ってたんだけど…。
思わず首を傾げた俺に、レーブンさんがちらりと視線を向けた。
「どうした、アキト?」
「……あの、さっき友人が少ないって言ってましたけど…ハルってすごく顔が広いですよね?今日もたまたま出会った衛兵の人と知り合いだったぐらいだし…」
それに冒険者としての依頼でいろんな村や街に行ったけど、どこに行っても知り会いがたくさんいたのは確かだ。だから友人もたくさんいるんじゃ?と俺が尋ねる前に、レーブンさんが重々しく口を開いた。
「あのな、アキト。顔が広いのと、友人が多いってのは全くの別物だぞ。こいつは広く浅く付き合うから顔見知りは沢山いるが、信頼できる友人は少ない。そんな奴だ」
びっくりしてハルに視線を向ければ、ハルは苦笑しながらもすぐに頷いた。
「まあそうだな。顔見知りや知り合いは多いが、友人とまで呼べる奴はそこまで多くない」
本人が認めるって事は本当にそうなのか。正直に言えばちょっと意外だけど、信頼できる友人がたくさんいるんだって言われるよりは良いかな。
ハルの大事にしてる友人に、嫉妬とかしたくないしな。
「だろう?そんなお前があのクリスと友人になったって…本当なのか?」
「だから本当だって言ってるだろ」
拗ねたように言い返すハルに、あ、珍しい顔だと嬉しくなってしまった。レーブンさんにはハルも素を見せてる気がする。
「そこまで言うなら信じるが…クリスは魔道具と商売の話が多いし、お前は依頼と任務、後は魔物や採取地の話が多い」
レーブンさんはそう言うと、ハルに視線を向けた。
「ああ、まあそうだな」
「そんなお前らが、二人揃って…一体何の話をするんだ?」
これはただの好奇心だから、言いたくないなら別に良いんだが…と律儀に付け加えたレーブンさんに、ハルはあっさりと胸を張って答えた。
「素材や店、抜け道とかの情報交換もしてるが…クリスは主に伴侶自慢、俺は伴侶候補自慢だな!」
「………は?」
ぽかんと口を開いたまま、レーブンさんは固まってしまった。そんな表情をしたレーブンさんを見たのは、初めてかもしれない。
「だから、クリスはカーディについての惚気、俺はアキトについての惚気で意気投合したんだ!」
ハルは満面の笑みを浮かべて続けた。
「…惚気」
何とかそれだけを繰り返したレーブンさんに、ハルはすぐに頷いた。
「あいつはカーディさんに夢中だから、アキトの事を話しても興味を持たれる心配が無いからな」
安心して惚気られる友人なんだとハルは嬉しそうに続けたけど、あの、レーブンさんまだ呆然としてるからね?
もうちょっとだけでも待ってあげて欲しい。
「ん?どうした、レーブン。大丈夫か?」
レーブンさんの表情にようやく気づいたのか心配そうに尋ねたハルの声に、レーブンさんはハッと反応した。
「あー…大丈夫だ…。お前らが伴侶自慢と伴侶候補自慢をしてる所は…うん、あっさり想像できたよ」
「お、それなら信じてくれるか」
「ああ、疑って悪かったな」
「いや、俺もまさか友人が増えるとは思ってなかったからな」
嬉しそうなハルをちらりと見てから、レーブンさんは俺の方へと視線を向けた。
「…アキトも、カーディと惚気合ってるのか?」
「う…はい」
カーディは俺の惚気も嬉しそうに聞いてくれるから、ついつい話しちゃうんだよな。
「そうか…まあお前らに気の合う友人が出来て良かったよ」
疲れたような表情だったけど、レーブンさんはそう言うと優しい笑みを浮かべた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。