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662.【ハル視点】路地から路地へ
あの路地が閉鎖されたなら、どう迂回するのが一番効率が良いだろうか。道の混雑具合や今の時間帯を考慮しながら、進む道を決めていく。
そういえばこの先の路地は、俺に実体がなくてまだ幽霊だった頃には一度も案内しなかった道だな。
別に犯罪が横行してるとか、物騒な組織が幅を利かせている道だとか、そういうわけでは無い。この道は、恋人探しにうろついてる奴がとにかく多いんだ。なんでもその道で出会って結ばれた幸せな伴侶がいて、そいつらにあやかろうと話が広まったせいらしい。
アキト一人でそんな道を通らせるのは嫌で、一度も案内しなかったんだが今は俺も一緒だからな。繋いだままのアキトの手をもう一度確認してから、俺は口を開いた。
「アキト、次の次の角を左に行くよ」
「うん、分かった。ハルはこんなに路地を知ってるんだからすごいよねー」
アキトはキラキラと尊敬のまなざしで俺を見上げながら、そんな風に褒めてくれた。俺が誰にも声をかけさせないように周りに気を配ってるのは、どうやらアキトにはバレていないらしい。
路地の所々にある気配が、アキトと俺の仲良く繋がれた手に注目しているのを感じる。少なくとも連れがいようと関係ないと声をかけてくる奴はいないようだ。
「ハルは、今の道ってどうやって決めてるの?」
「そうだな…あの路地が閉鎖されたらこっちに迂回する人が多いから、きっとこの道は混雑すると思うから行かない」
「へーそうやって決めるんだ」
俺はにっこりとアキトに笑い返してから、そっと左側の路地を指差した。
「あとはそこから左に続く道は閉鎖された道に繋がってるから、そこも閉鎖されてるかもしれない。だから避けよう…とかね」
「なるほど」
こくりと頷いたアキトは、真剣な表情を浮かべて周りの景色を観察している。俺が案内してくれるから良いやと思わずにちゃんと道を覚えようとする姿勢が、アキトだなぁ。
「次を右だよ」
俺の指示に従って道を曲がると、アキトは一つの建物に気づくなりぴたりと視線を止めた。
「あれ?ハル、ここってもしかして…前にも来た本のお店?」
すぐにそれに気づく事ができるのは、しっかりと観察眼が培われていっているという事だ。俺は笑いながらアキトに声をかけた。
「うん、確かにここは本を取り扱ってるマーゴット商会だよ。それにしてもアキト、一度しか来てない上に看板も見えない位置なのに、よく気づいたね」
さすがアキトだと褒めれば、アキトは戸惑ったような表情を浮かべながらも、ありがとうと口にした。
そのまま何かを考えこんでいるアキトをちらりと見てから、俺は腕輪に収納されている時間の分かる魔道具を取り出した。
レーブンとの約束の時間までは、まだかなり時間はあるな。確か前に買った本は、ほとんど全て読み終わってたはずだ。それならこのままマーゴット商会に寄るのも良いんじゃないか。
俺はニッと笑みを浮かべると、そっとアキトを振り返った。
「まだ時間もあるし、もし良ければ寄っていかない?」
もちろんアキトが今日は別に良いかなと言うなら、無理にとは言わないが。
「んー…うん。新しい本も買いたいし、時間があるなら寄りたいな」
「それじゃあ行こうか」
俺はアキトの手を引いたまま、マーゴット商会の建物に向かって歩き出した。
相変わらず装飾の多い建物だなと眺めながら歩いていくと、ドアの近くに待機していた若い店員達がすかさずドアを開いた。
「いらっしゃいませ、マーゴット商会へようこそ」
柔らかい笑みを浮かべて俺達を迎え入れたのは、前にもアキトを案内していた年配の店員だった。確かジェイデンだったか。
これがただの偶然なのか、それとも気配探知の魔道具を駆使して担当者を向かわせているのかまでは分からないが、アキトが安心したように肩の力を抜いたからこの店員で良かった。
「いらっしゃいませ、アキト様、お待ちしておりました。本日のご案内も、私ジェイデンが担当させて頂いてよろしいでしょうか?」
アキトはきょとんとジェイデンを見つめていたけれど、不意に嬉しそうな笑みを浮かべた。もしかしたら名前まで覚えられているとは思ってなかったのかもしれないな。
「はい、ぜひお願いします」
「それでは、お連れ様もご一緒にこちらへどうぞ」
そういえばこの先の路地は、俺に実体がなくてまだ幽霊だった頃には一度も案内しなかった道だな。
別に犯罪が横行してるとか、物騒な組織が幅を利かせている道だとか、そういうわけでは無い。この道は、恋人探しにうろついてる奴がとにかく多いんだ。なんでもその道で出会って結ばれた幸せな伴侶がいて、そいつらにあやかろうと話が広まったせいらしい。
アキト一人でそんな道を通らせるのは嫌で、一度も案内しなかったんだが今は俺も一緒だからな。繋いだままのアキトの手をもう一度確認してから、俺は口を開いた。
「アキト、次の次の角を左に行くよ」
「うん、分かった。ハルはこんなに路地を知ってるんだからすごいよねー」
アキトはキラキラと尊敬のまなざしで俺を見上げながら、そんな風に褒めてくれた。俺が誰にも声をかけさせないように周りに気を配ってるのは、どうやらアキトにはバレていないらしい。
路地の所々にある気配が、アキトと俺の仲良く繋がれた手に注目しているのを感じる。少なくとも連れがいようと関係ないと声をかけてくる奴はいないようだ。
「ハルは、今の道ってどうやって決めてるの?」
「そうだな…あの路地が閉鎖されたらこっちに迂回する人が多いから、きっとこの道は混雑すると思うから行かない」
「へーそうやって決めるんだ」
俺はにっこりとアキトに笑い返してから、そっと左側の路地を指差した。
「あとはそこから左に続く道は閉鎖された道に繋がってるから、そこも閉鎖されてるかもしれない。だから避けよう…とかね」
「なるほど」
こくりと頷いたアキトは、真剣な表情を浮かべて周りの景色を観察している。俺が案内してくれるから良いやと思わずにちゃんと道を覚えようとする姿勢が、アキトだなぁ。
「次を右だよ」
俺の指示に従って道を曲がると、アキトは一つの建物に気づくなりぴたりと視線を止めた。
「あれ?ハル、ここってもしかして…前にも来た本のお店?」
すぐにそれに気づく事ができるのは、しっかりと観察眼が培われていっているという事だ。俺は笑いながらアキトに声をかけた。
「うん、確かにここは本を取り扱ってるマーゴット商会だよ。それにしてもアキト、一度しか来てない上に看板も見えない位置なのに、よく気づいたね」
さすがアキトだと褒めれば、アキトは戸惑ったような表情を浮かべながらも、ありがとうと口にした。
そのまま何かを考えこんでいるアキトをちらりと見てから、俺は腕輪に収納されている時間の分かる魔道具を取り出した。
レーブンとの約束の時間までは、まだかなり時間はあるな。確か前に買った本は、ほとんど全て読み終わってたはずだ。それならこのままマーゴット商会に寄るのも良いんじゃないか。
俺はニッと笑みを浮かべると、そっとアキトを振り返った。
「まだ時間もあるし、もし良ければ寄っていかない?」
もちろんアキトが今日は別に良いかなと言うなら、無理にとは言わないが。
「んー…うん。新しい本も買いたいし、時間があるなら寄りたいな」
「それじゃあ行こうか」
俺はアキトの手を引いたまま、マーゴット商会の建物に向かって歩き出した。
相変わらず装飾の多い建物だなと眺めながら歩いていくと、ドアの近くに待機していた若い店員達がすかさずドアを開いた。
「いらっしゃいませ、マーゴット商会へようこそ」
柔らかい笑みを浮かべて俺達を迎え入れたのは、前にもアキトを案内していた年配の店員だった。確かジェイデンだったか。
これがただの偶然なのか、それとも気配探知の魔道具を駆使して担当者を向かわせているのかまでは分からないが、アキトが安心したように肩の力を抜いたからこの店員で良かった。
「いらっしゃいませ、アキト様、お待ちしておりました。本日のご案内も、私ジェイデンが担当させて頂いてよろしいでしょうか?」
アキトはきょとんとジェイデンを見つめていたけれど、不意に嬉しそうな笑みを浮かべた。もしかしたら名前まで覚えられているとは思ってなかったのかもしれないな。
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「それでは、お連れ様もご一緒にこちらへどうぞ」
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