生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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667.【ハル視点】本の質

「おまたせしました」

 ジェイデンが部屋に戻って来た時には、少しだけホッとした。これで俺の理性も今まで以上に仕事に励めるだろう。

 ジェイデンの両手には、以前アキトが訪れた時と同じく真っ赤な布のかかったトレイがおさまっている。あの布の下には、俺達の頼んだ新しい本が並んでいるんだろう。仰々しいやり方だが、どんな本が出てくるのかとワクワクするからきっと意味があるんだろう。

「本日はこちらをお持ちしました」

 さっと布をどければそこには比較的薄めの本が四冊と、図鑑のような分厚い本が一冊、更にその上を行くまるで分厚い辞書のような本が二冊並んでいた。

「まずこちらがアキト様のご希望の料理本です。比較的説明が細かくて初心者でも作りやすいものだけを選んでいます」

 そう説明をしながら、ジェイデンはテーブルの上に薄めの本を四冊並べてくれた。

「こちらは雪深い北部の料理、こちらは逆に南国の料理が主ですね」

 白と水色でデザインされた見るからに涼し気な表紙の本と、驚くほどカラフルな色合いをした表紙の本だな。それぞれの地域の雰囲気にあった装丁だ。

「こちらは魚の料理が主で、こちらは幅広い地域の家庭料理を集めたものです」

 魚料理の本にはちゃんと表紙に魚の絵が描かれていたし、幅広い地域の家庭料理が載ってるという本の表紙は美味しそうなスープの絵だった。

 料理の本なんて見た事は無いが、どれも表紙を見るだけで内容が分かるんだな。

「こちらはセスミアの旅行記の続編です」

 アキトは嬉しそうに目を輝かせながら、その本を見つめている。あんなに楽しそうに読んでいた本の続編なら、そりゃあアキトも嬉しいよな。幸せそうなアキトを微笑ましい気持ちで見守っていると、ジェイデンの視線が俺の方へと向いた。

「続きまして、こちらがハル様ご希望の魔物の研究書ですね。こちらは上下巻のロサダールの魔物研究書です。ロサダール自身は最近になって初めて本を出した方ではありますが、その知識量は一線を画しています」
「ロサダール…か」

 聞いた事の無い名前だが、ジェイデンがそこまで断言するような研究家なのか。思わず身を乗り出してしまった俺の前に並べられたのは、あの分厚い辞書のような二冊の本だ。

 見た目にもこだわっているのか、重厚な装丁が施されていてかなりの迫力だ。

「上巻が小型及び中型の魔物、下巻が大型の魔物を対象としていますので、どちらかを選んで購入される方も多いです」

 ジェイデンいわく、そこが作者のこだわりポイントらしい。買う人の興味がある分野で買う本を選べるるようにと、わざと分けてあるそうだ。

 研究を続けるためにと金策に励む魔物研究家も多いんだが、ロサダールは金策を優先するような奴らとは違うらしいな。

 後は内容次第だが、そういう考え方は嫌いじゃない。

「それでは、どうぞご自由にご覧になってください」

 俺とアキトはジェイデンの言葉に、そっと本に手を伸ばした。

 アキトはパラパラと料理の本の中身を見ては、嬉しそうに笑みをこぼしている。どうやら気に入ったらしいな。

 俺も中身を見てみようとページを捲っっていく。

 うん、これはかなりすごいな。以前なら冒険者の噂話程度で共有されていただけの弱点の情報などが、しっかりと載っている。

 しかも検証済みのものにはきちんとそう記載されているし、まだ検証されていないものには信憑性は薄いがそういう噂があるという書き方が徹底されている。

 これは情報を集めて書斎で研究をする魔物研究家というよりも、最前線で実際に戦ってる人の視点な気がするな。もしくは伴侶が冒険者だとか騎士だとか衛兵だとか、そういう戦う職業についていたりするんだろうか。

 もちろんそんな事は本の中でも説明されていないから、真偽は不明だしただの想像なんだが。

 これは買う価値のある本だな。ロサダールか。しっかりと名前を覚えておこう。

 そう決めて視線を上げれば、何故かアキトとジェイデンはニコニコと笑い合っていた。セスミアの本の表紙に手が載せられているから、そういう話でもしていたのかな。

「いかがでしたか?」

 すぐに俺が顔を上げた事に気づいたジェイデンは、穏やかな声でそう尋ねてきた。

「俺も確認は終わったよ。上下巻、両方とも貰っていこう」
「気に入って頂けましたか?」
「ああ。以前に読んだ魔物研究書よりも、更に一歩踏み込んだ情報が入っていて面白い」

 もちろん知っている情報もあったが、知らない情報も多かった。

「アキトはどうする?」
「俺も、これ全部欲しいです!」

 ジェイデンはまた全部?と驚いたようだが、俺はアキトならきっとそう言うと思ってたよ。 
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