生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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673.【ハル視点】ローガンの能力

「レーブン、俺も返しておくよ」
「ああ、確かに受け取った」

 手のひらに載せられた二つの丸い石を小袋に入れると、レーブンはすぐにポケットへとしまいこんだ。信頼してくれているのは嬉しい事だが、無事に返却できた事にすこしだけホッとした。あれはかなりの貴重品だからな。

「ハルとアキトも、待たせてすまなかったな」

 ローガンは律儀にも俺達にまで謝罪をしてきた。別に気にしなくて良いんだが。

「いや、俺は別に」
「俺も全く気にしてません。レーブンさんとのんびり喋れたなーぐらいの気持ちですから」

 ニコッと笑いながらそんな素直な感想を口にしたアキトに、ローガンはようやく笑みを浮かべた。後ろにいるレーブンも満面の笑みだな。レーブンとのんびり喋れて嬉しいと言われたも同然だから、無理も無いか。

「それにしても、お前が遅くなるなんて珍しいよな」

 レーブンの言葉に、俺も質問を重ねる。

「何か…あったのか?」
「ああ、成り行きで衛兵の手伝いをする事になってな」

 さらりと答えたローガンの返事は、予想外のものだった。

「は?衛兵の手伝いをしてたのか?」

 怪訝そうな顔で不思議そうに尋ねたレーブンに、ローガンはあっさりと頷いてみせた。

「あーまず前提として、今日手配中の盗賊が街中に出たって通報があったらしいんだが、それは知ってるか?」
「ああ、もし怪しいのが宿に来たらぜひ教えて欲しい――って衛兵が言いに来たな」

 衛兵さんが言いに来るの?と言いたげなアキトに、レーブンは普段からよくあるんだと優しく教えている。元々世話焼きだからよく初心者冒険者には説明をしているのをよく見るが、それにしてもアキト相手だと本当に丁寧に説明するんだな。

「あ、俺達も買い物帰りに路地を通ろうとしたら閉鎖中だって言われて、迂回して帰ってきました。ね、ハル」
「ああ、他の路地も混みそうだったから道を選んで帰ってきたんだ」

 俺達の返事を聞いて、ローガンはひとつ頷いて続けた。

「ああ、皆知ってたなら話が早いな」
「その盗賊関係で何かあったって事か?」
「ああ、近道をしようとたまたま裏道を歩いていたら、空き家の中から会話が聞こえてな」

 なるほど、そういう事か。近くにたまたまローガンがいたなんて、運の悪い盗賊だな。

「ちなみにそれって…どんな会話だったんだ?」

 会話が聞こえるだけじゃあ盗賊とは断定できないだろう。そう思って尋ねてみれば、ローガンはすぐに答えてくれた。

「トライプールの衛兵は質が高いと言われてたが、ここまで厄介だとはと言ってたな。あと頭、これからどうしますか?ってな」
「あー…それは結構微妙だな。頭呼びは職人でもする奴がいるからな。よく通報したな?」

 もし聞こえていたとしても、もしかしたら勘違いかもしれないと思えるような会話だ。

「ああ、そいつが盗賊だと断言はできなかったが、少なくとも衛兵を厄介だと言う奴なら何かやましい事はあるだろうと考えたんだ。それにトライプールの衛兵は例え誤報であっても文句は言わないからな」

 まあそうだな。街によっては誤報なんて許されないなんて衛兵がいる街もあるが、すくなくともここの衛兵は誤報であってもまず通報してきた事を褒めるだろう。

「ああ、なるほど」
「それは遅れても仕方ないな」

 レーブンは納得顔で頷いている。

「そいつらは無事に捕まったのか?」
「ああ、もちろん!全員捕まったぞ」

 自慢げに胸を張って答えたローガンに、俺達は三人揃ってパチパチと拍手を送った。

「でも迂闊な人で良かったですね」
「ん?迂闊?」
「だって空き家の中から声が聞こえたって事は、窓を閉め忘れてたりしてたって事ですよね?」

 何気なく口にしたアキトのその一言に、レーブンとローガンは顔を見合わせた。

「あー…アキト、多分窓はしっかりしまってたと思うよ」

 よくよく考えれば、アキトにローガンの能力について話した事は無かった――な。

「そういえば、アキトには言って無かった…か?」

 ローガンの唐突な質問に、アキトはびっくり顔で答えた。

「言って無かったって…何がですか?」
「俺は生まれつき耳が良いんだよ。裏路地から戸締りされた部屋の中の会話が聞こえるぐらいにはな」

 大人になってからは制御も出来るようになったから常にって訳じゃないぞと、ローガンは笑って続けた。

「あの時は衛兵がバタバタしてるのが気になって、自然と耳を澄ませていたから気づいたんだ」

 本当に運の悪い盗賊だな。
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