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682.【ハル視点】二人の秘密
「あ、あと、これ俺とハルからの差し入れなんですけど」
「え、差し入れなんて良かったんだぞ」
「わざわざ用意してくれたのか」
まさか差し入れを用意しているとは思っていなかったのか、二人は慌てた様子でアキトに視線を向けた。
「はい、でも料理とお酒はお二人が用意してくれるってハルから聞いてたので…」
そんな風に話しながら、アキトは紙の箱に入ったあのケーキを取り出した。箱にはリコーヴェと金色の文字で印刷されている。
リコーヴェ菓子店は味はもちろん、この箱のおかげで特に人気があるんだよな。他ではあまり見ない特別感のある紙製の箱。しかも店名の印刷が入っているから、差し入れに向いてるんだよな。
箱を見ただけでもワクワクしてもらえる差し入れだ。――まあ、二人の反応は違うだろうけどな。
「リコーヴェ菓子店のケーキです!」
レーブンとローガンの目の前にアキトは笑顔で箱を差し出したが、二人は予想通り箱を受け取ってはくれなかった。それどころか箱を凝視したまま、ピタリと動きを止めて固まってしまっている。
うん、やっぱりこうなるよなぁ。
「あーやっぱりそういう反応か…」
「やっぱり?」
「いや、えっとね…」
説明しようとした俺の言葉を、レーブンの声が遮った。
「おう、ハル、いや…ハロルド?」
「ハロルド、ちょっと俺達とお話しようか?」
ようやく動き出した二人は、まるで今が戦闘中であるかのような威圧感を出しながら、滅多に出さない低音声で俺の名前を呼んだ。
ハルじゃなくハロルドと言い直す辺り、かなり怒ってるな。
「なんだよ?」
「お前、勝手にアキトに…その、話したのか?」
「ああ。お前たちが甘い物を好きな事なら、話したが?」
あっさりと答えた俺を、レーブンとローガンはジロリと睨みつけてくる。駆け出しの冒険者ならまず間違いなく怯えるだろう威圧感だが、そうなるだろうなと予想していた俺にとっては何て事は無い。
「別に隠す必要なんて無いだろうが」
「だからって…お前!」
まだ文句を言おうとする二人に内心では少しだけ苛立ちながら、俺はジロリと二人を睨み返して続けた。
「それとも…既に身内扱いしてるアキトを相手に、いつまでもお前らの好みを秘密にする気だったのか?それを知った時にアキトがどう思うか、考えた事はあるのか?」
きっとアキトはまずしょんぼりと肩を落として、でも二人が隠したかったなら仕方ないよねなんて考えるんだろう。
身内扱いまでしておいて、そんな些細な秘密を隠し通すつもりなのかとつきつければ、つい先ほどまで分かりやすく怒りを露わにしていた二人は、うっと呻き声を上げた。
「ちなみにアキトは二人が甘い物が好きだって話を聞いて、別に隠さなくて良いのにって言ってたぞ?」
なあとアキトに向けて笑みを浮かべれば、アキトはへにゃりと笑みを返してくれた。
「アキト…えっと、ハルの話してた事は、本当か…?」
「はい、本当です!」
レーブンの質問に即答したアキトを、ローガンはじっと見つめてから口を開いた。
「アキトは、この強面とこの図体で甘い物が好きだってのは…似合わないとか…恥ずかしいとか思わないのか?」
アキトはすぐにブンブンと首を振った。
「好きなものを好きって言って何が悪いんですか?美味しいと感じるものは人それぞれでしょう?」
安心させたいと必死で言いつのるアキトに、二人は安心した様子でホッと息を吐いた。
「そうか…そうだな」
「ありがとうな、アキト」
「いえ。このケーキ、ハルがお勧めしてくれたんです」
アキトはそう言いながら、そっと箱を開けて中を見せた。出てきたのは淡いピンク色の生地に白いアイシングが施された、何とも可愛らしいケーキだ。
「リコーヴェ菓子店のリコーヴェだな」
「ああ、かなり久しぶりだな」
もう隠す必要がなくなったからか、二人は嬉しそうに笑って感想を口にした。
「リコーヴェ菓子店の…リコーヴェ?」
不思議そうに尋ねたアキトに、レーブンとローガンは笑って教える。
「そう、リコーヴェだ。これは店名がそのままケーキの名前になってるんだ」
「中身は糖度の高い果物の果汁を使ってるからかなり甘いんだが、薄く切って食べれば誰でも楽しめる味だ」
かなり保存が効くのもあって少しずつ食べられるのも人気の理由なんだが、この二人がいたらあっという間になくなるんだろうな。なんといってもこいつらはこれを四角く切り分けて食べられるぐらいの甘いもの好きだからな。
「へー、そうなんですか」
「うまいからアキトも一緒に食べような」
「はい!」
「え、差し入れなんて良かったんだぞ」
「わざわざ用意してくれたのか」
まさか差し入れを用意しているとは思っていなかったのか、二人は慌てた様子でアキトに視線を向けた。
「はい、でも料理とお酒はお二人が用意してくれるってハルから聞いてたので…」
そんな風に話しながら、アキトは紙の箱に入ったあのケーキを取り出した。箱にはリコーヴェと金色の文字で印刷されている。
リコーヴェ菓子店は味はもちろん、この箱のおかげで特に人気があるんだよな。他ではあまり見ない特別感のある紙製の箱。しかも店名の印刷が入っているから、差し入れに向いてるんだよな。
箱を見ただけでもワクワクしてもらえる差し入れだ。――まあ、二人の反応は違うだろうけどな。
「リコーヴェ菓子店のケーキです!」
レーブンとローガンの目の前にアキトは笑顔で箱を差し出したが、二人は予想通り箱を受け取ってはくれなかった。それどころか箱を凝視したまま、ピタリと動きを止めて固まってしまっている。
うん、やっぱりこうなるよなぁ。
「あーやっぱりそういう反応か…」
「やっぱり?」
「いや、えっとね…」
説明しようとした俺の言葉を、レーブンの声が遮った。
「おう、ハル、いや…ハロルド?」
「ハロルド、ちょっと俺達とお話しようか?」
ようやく動き出した二人は、まるで今が戦闘中であるかのような威圧感を出しながら、滅多に出さない低音声で俺の名前を呼んだ。
ハルじゃなくハロルドと言い直す辺り、かなり怒ってるな。
「なんだよ?」
「お前、勝手にアキトに…その、話したのか?」
「ああ。お前たちが甘い物を好きな事なら、話したが?」
あっさりと答えた俺を、レーブンとローガンはジロリと睨みつけてくる。駆け出しの冒険者ならまず間違いなく怯えるだろう威圧感だが、そうなるだろうなと予想していた俺にとっては何て事は無い。
「別に隠す必要なんて無いだろうが」
「だからって…お前!」
まだ文句を言おうとする二人に内心では少しだけ苛立ちながら、俺はジロリと二人を睨み返して続けた。
「それとも…既に身内扱いしてるアキトを相手に、いつまでもお前らの好みを秘密にする気だったのか?それを知った時にアキトがどう思うか、考えた事はあるのか?」
きっとアキトはまずしょんぼりと肩を落として、でも二人が隠したかったなら仕方ないよねなんて考えるんだろう。
身内扱いまでしておいて、そんな些細な秘密を隠し通すつもりなのかとつきつければ、つい先ほどまで分かりやすく怒りを露わにしていた二人は、うっと呻き声を上げた。
「ちなみにアキトは二人が甘い物が好きだって話を聞いて、別に隠さなくて良いのにって言ってたぞ?」
なあとアキトに向けて笑みを浮かべれば、アキトはへにゃりと笑みを返してくれた。
「アキト…えっと、ハルの話してた事は、本当か…?」
「はい、本当です!」
レーブンの質問に即答したアキトを、ローガンはじっと見つめてから口を開いた。
「アキトは、この強面とこの図体で甘い物が好きだってのは…似合わないとか…恥ずかしいとか思わないのか?」
アキトはすぐにブンブンと首を振った。
「好きなものを好きって言って何が悪いんですか?美味しいと感じるものは人それぞれでしょう?」
安心させたいと必死で言いつのるアキトに、二人は安心した様子でホッと息を吐いた。
「そうか…そうだな」
「ありがとうな、アキト」
「いえ。このケーキ、ハルがお勧めしてくれたんです」
アキトはそう言いながら、そっと箱を開けて中を見せた。出てきたのは淡いピンク色の生地に白いアイシングが施された、何とも可愛らしいケーキだ。
「リコーヴェ菓子店のリコーヴェだな」
「ああ、かなり久しぶりだな」
もう隠す必要がなくなったからか、二人は嬉しそうに笑って感想を口にした。
「リコーヴェ菓子店の…リコーヴェ?」
不思議そうに尋ねたアキトに、レーブンとローガンは笑って教える。
「そう、リコーヴェだ。これは店名がそのままケーキの名前になってるんだ」
「中身は糖度の高い果物の果汁を使ってるからかなり甘いんだが、薄く切って食べれば誰でも楽しめる味だ」
かなり保存が効くのもあって少しずつ食べられるのも人気の理由なんだが、この二人がいたらあっという間になくなるんだろうな。なんといってもこいつらはこれを四角く切り分けて食べられるぐらいの甘いもの好きだからな。
「へー、そうなんですか」
「うまいからアキトも一緒に食べような」
「はい!」
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