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686.【ハル視点】体質とあの日の話
「さっき、アキトの体質って言ったよな?」
「ああ、アキトは…」
話しだそうとした瞬間、ローガンはさっと手をかざして俺を見た。
「待ってくれ」
真剣な表情を浮かべたローガンの言葉に、俺は開きかけた口を閉じた。
「言ったらまずい事をうっかり口にしただけだっていうなら、わざわざ説明しなくて良いんだぞ?」
「だが、意味が分からないだろう?」
「分からなくてもそのままにしておいた方が良い事だってあるだろう」
アキトが信頼して話してくれるまで待つから良いと軽く続けたローガンに、俺は思わず微笑んでしまった。
「アキトがローガンの事を信頼してるのは知ってるし、その体質については俺が必要だと思ったら話して良いって許可も貰ってる」
「本当に…?」
「ああ、だから問題は無いんだ。アキトを気づかってくれてありがとう」
にっこりと笑ってそう告げれば、ローガンは照れくさそうに視線を反らした。
「ローガンの聞こえる体質やレーブンの悪意を感じる体質みたいに、アキトにも特別な体質があるんだ。それは幽霊が見えるっていう体質だ」
「幽霊?」
「ああ、俺が眠ってたのは、ローガンも当然知ってるよな?」
「もちろん知ってる。毒にやられてたんだろ?」
目の前にはすっかり元気になった俺がいるのに、ローガンは心配そうに答えた。
「俺はあの時身体にいなかったんだ」
「いなかった…?」
「俺は幽霊になってたからな、色んな所に行ったんだがその先でアキトに出会ったんだ。信じられるか?」
「…言ってるのがお前じゃなかったら信じてないかもな」
さらりと告げられた言葉は、俺への信頼に溢れていた。アキトも関係してる事に嘘は吐かないだろうとか言われるかと想像していた俺は、予想外の返しに口ごもった。
「それで?」
自分で動揺させたくせに、ローガンはすこしの遠慮もなく俺を急かしてくる。分かった分かった、話すから少し待ってくれ。
「幽霊の状態でアキトに出会って、最初は道案内をしてたんだ。アキトに黒鷹亭を勧めたのも俺だし、基本的にずっと一緒にいたんだよ」
「ああ、それで一人だったのに一緒にいたって言ったのか」
そうアキトは周りから見れば一人きりに見えていたけど、俺はずっと一緒にいたからな。少なくともレーブンがあんな奇妙な言い回しをした理由は、分かって貰えたみたいだ。
「よし、そこまで分かったならもう良いだろう。なんでアキトが前に酔った時と様子が違うのか説明しろ」
レーブンはそう言いながら、まっすぐに俺の目を見つめてくる。アキトの体質について説明してる間に忘れてくれないかと思ったんだが…駄目だったか。
「あー…落ち着いて聞いて欲しいんだが、あの時のアキトはトライプールの路地裏にある店でな、媚薬を盛られたんだ」
そう口に出した瞬間、部屋の温度が一気に下がったような気がした。
「「は?」」
レーブンとローガンの似たもの兄弟は、二人同時に鬼のような形相になった。それと同時に威圧感どころか、今度は殺気をにじませ始めている。
戦場慣れした俺でも冷や汗が出そうなほどの、本気の殺意がこもっている。
まあ大事な息子と甥っ子に、媚薬を持った奴がいると聞けばそれも無理は無いか。思い出したら俺も腹が立ってきたな。
とはいえ、怒りのままに殺気を滲ませる事はできない。アキトの眠りの妨げになってしまうからな。
俺はレーブンとローガンを呆れ顔で見つめながら口を開いた。
「殺気はやめろって、本当にアキトが起きるだろ?」
「ああ、悪い…ついな」
「俺もすまん」
アキトがと言った瞬間に一瞬で殺気だけを消し去った二人は、怒りを湛えた目で俺を見つめてくる。
「ああ、もちろんアキトは無事だったんだけどね」
「それは何よりだが…お前、一緒にいたのに止めなかったのか?」
不思議そうに尋ねてくるレーブンに、俺は苦笑しながら答えた。
「止めたかったんだが…幽霊だった俺は、当然だが匂いも感じなかったからな…」
「あー…なるほど、それじゃあ気づけないな…」
「幽霊についてよく分かってないのに、責めて悪かったな」
「いや、気にするな。アキトを心配してって事は分かってるから」
そう言いながら俺はちらりとアキトに視線を向けた。
あれほどの殺気に気づかなかったのか、それとも自分には向けられていないと分かっているのか。どちらかは分からないが、アキトはまだ幸せそうにすーすーと寝息を立てていた。
「ああ、アキトは…」
話しだそうとした瞬間、ローガンはさっと手をかざして俺を見た。
「待ってくれ」
真剣な表情を浮かべたローガンの言葉に、俺は開きかけた口を閉じた。
「言ったらまずい事をうっかり口にしただけだっていうなら、わざわざ説明しなくて良いんだぞ?」
「だが、意味が分からないだろう?」
「分からなくてもそのままにしておいた方が良い事だってあるだろう」
アキトが信頼して話してくれるまで待つから良いと軽く続けたローガンに、俺は思わず微笑んでしまった。
「アキトがローガンの事を信頼してるのは知ってるし、その体質については俺が必要だと思ったら話して良いって許可も貰ってる」
「本当に…?」
「ああ、だから問題は無いんだ。アキトを気づかってくれてありがとう」
にっこりと笑ってそう告げれば、ローガンは照れくさそうに視線を反らした。
「ローガンの聞こえる体質やレーブンの悪意を感じる体質みたいに、アキトにも特別な体質があるんだ。それは幽霊が見えるっていう体質だ」
「幽霊?」
「ああ、俺が眠ってたのは、ローガンも当然知ってるよな?」
「もちろん知ってる。毒にやられてたんだろ?」
目の前にはすっかり元気になった俺がいるのに、ローガンは心配そうに答えた。
「俺はあの時身体にいなかったんだ」
「いなかった…?」
「俺は幽霊になってたからな、色んな所に行ったんだがその先でアキトに出会ったんだ。信じられるか?」
「…言ってるのがお前じゃなかったら信じてないかもな」
さらりと告げられた言葉は、俺への信頼に溢れていた。アキトも関係してる事に嘘は吐かないだろうとか言われるかと想像していた俺は、予想外の返しに口ごもった。
「それで?」
自分で動揺させたくせに、ローガンはすこしの遠慮もなく俺を急かしてくる。分かった分かった、話すから少し待ってくれ。
「幽霊の状態でアキトに出会って、最初は道案内をしてたんだ。アキトに黒鷹亭を勧めたのも俺だし、基本的にずっと一緒にいたんだよ」
「ああ、それで一人だったのに一緒にいたって言ったのか」
そうアキトは周りから見れば一人きりに見えていたけど、俺はずっと一緒にいたからな。少なくともレーブンがあんな奇妙な言い回しをした理由は、分かって貰えたみたいだ。
「よし、そこまで分かったならもう良いだろう。なんでアキトが前に酔った時と様子が違うのか説明しろ」
レーブンはそう言いながら、まっすぐに俺の目を見つめてくる。アキトの体質について説明してる間に忘れてくれないかと思ったんだが…駄目だったか。
「あー…落ち着いて聞いて欲しいんだが、あの時のアキトはトライプールの路地裏にある店でな、媚薬を盛られたんだ」
そう口に出した瞬間、部屋の温度が一気に下がったような気がした。
「「は?」」
レーブンとローガンの似たもの兄弟は、二人同時に鬼のような形相になった。それと同時に威圧感どころか、今度は殺気をにじませ始めている。
戦場慣れした俺でも冷や汗が出そうなほどの、本気の殺意がこもっている。
まあ大事な息子と甥っ子に、媚薬を持った奴がいると聞けばそれも無理は無いか。思い出したら俺も腹が立ってきたな。
とはいえ、怒りのままに殺気を滲ませる事はできない。アキトの眠りの妨げになってしまうからな。
俺はレーブンとローガンを呆れ顔で見つめながら口を開いた。
「殺気はやめろって、本当にアキトが起きるだろ?」
「ああ、悪い…ついな」
「俺もすまん」
アキトがと言った瞬間に一瞬で殺気だけを消し去った二人は、怒りを湛えた目で俺を見つめてくる。
「ああ、もちろんアキトは無事だったんだけどね」
「それは何よりだが…お前、一緒にいたのに止めなかったのか?」
不思議そうに尋ねてくるレーブンに、俺は苦笑しながら答えた。
「止めたかったんだが…幽霊だった俺は、当然だが匂いも感じなかったからな…」
「あー…なるほど、それじゃあ気づけないな…」
「幽霊についてよく分かってないのに、責めて悪かったな」
「いや、気にするな。アキトを心配してって事は分かってるから」
そう言いながら俺はちらりとアキトに視線を向けた。
あれほどの殺気に気づかなかったのか、それとも自分には向けられていないと分かっているのか。どちらかは分からないが、アキトはまだ幸せそうにすーすーと寝息を立てていた。
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