生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
687 / 1,561

686.【ハル視点】体質とあの日の話

「さっき、アキトの体質って言ったよな?」
「ああ、アキトは…」

 話しだそうとした瞬間、ローガンはさっと手をかざして俺を見た。

「待ってくれ」

 真剣な表情を浮かべたローガンの言葉に、俺は開きかけた口を閉じた。

「言ったらまずい事をうっかり口にしただけだっていうなら、わざわざ説明しなくて良いんだぞ?」
「だが、意味が分からないだろう?」
「分からなくてもそのままにしておいた方が良い事だってあるだろう」

 アキトが信頼して話してくれるまで待つから良いと軽く続けたローガンに、俺は思わず微笑んでしまった。

「アキトがローガンの事を信頼してるのは知ってるし、その体質については俺が必要だと思ったら話して良いって許可も貰ってる」
「本当に…?」
「ああ、だから問題は無いんだ。アキトを気づかってくれてありがとう」

 にっこりと笑ってそう告げれば、ローガンは照れくさそうに視線を反らした。

「ローガンの聞こえる体質やレーブンの悪意を感じる体質みたいに、アキトにも特別な体質があるんだ。それは幽霊が見えるっていう体質だ」
「幽霊?」
「ああ、俺が眠ってたのは、ローガンも当然知ってるよな?」
「もちろん知ってる。毒にやられてたんだろ?」

 目の前にはすっかり元気になった俺がいるのに、ローガンは心配そうに答えた。

「俺はあの時身体にいなかったんだ」
「いなかった…?」
「俺は幽霊になってたからな、色んな所に行ったんだがその先でアキトに出会ったんだ。信じられるか?」
「…言ってるのがお前じゃなかったら信じてないかもな」

 さらりと告げられた言葉は、俺への信頼に溢れていた。アキトも関係してる事に嘘は吐かないだろうとか言われるかと想像していた俺は、予想外の返しに口ごもった。

「それで?」

 自分で動揺させたくせに、ローガンはすこしの遠慮もなく俺を急かしてくる。分かった分かった、話すから少し待ってくれ。

「幽霊の状態でアキトに出会って、最初は道案内をしてたんだ。アキトに黒鷹亭を勧めたのも俺だし、基本的にずっと一緒にいたんだよ」
「ああ、それで一人だったのに一緒にいたって言ったのか」

 そうアキトは周りから見れば一人きりに見えていたけど、俺はずっと一緒にいたからな。少なくともレーブンがあんな奇妙な言い回しをした理由は、分かって貰えたみたいだ。

「よし、そこまで分かったならもう良いだろう。なんでアキトが前に酔った時と様子が違うのか説明しろ」

 レーブンはそう言いながら、まっすぐに俺の目を見つめてくる。アキトの体質について説明してる間に忘れてくれないかと思ったんだが…駄目だったか。

「あー…落ち着いて聞いて欲しいんだが、あの時のアキトはトライプールの路地裏にある店でな、媚薬を盛られたんだ」

 そう口に出した瞬間、部屋の温度が一気に下がったような気がした。

「「は?」」

 レーブンとローガンの似たもの兄弟は、二人同時に鬼のような形相になった。それと同時に威圧感どころか、今度は殺気をにじませ始めている。

 戦場慣れした俺でも冷や汗が出そうなほどの、本気の殺意がこもっている。

 まあ大事な息子と甥っ子に、媚薬を持った奴がいると聞けばそれも無理は無いか。思い出したら俺も腹が立ってきたな。

 とはいえ、怒りのままに殺気を滲ませる事はできない。アキトの眠りの妨げになってしまうからな。

 俺はレーブンとローガンを呆れ顔で見つめながら口を開いた。

「殺気はやめろって、本当にアキトが起きるだろ?」
「ああ、悪い…ついな」
「俺もすまん」

 アキトがと言った瞬間に一瞬で殺気だけを消し去った二人は、怒りを湛えた目で俺を見つめてくる。

「ああ、もちろんアキトは無事だったんだけどね」
「それは何よりだが…お前、一緒にいたのに止めなかったのか?」

 不思議そうに尋ねてくるレーブンに、俺は苦笑しながら答えた。

「止めたかったんだが…幽霊だった俺は、当然だが匂いも感じなかったからな…」
「あー…なるほど、それじゃあ気づけないな…」
「幽霊についてよく分かってないのに、責めて悪かったな」
「いや、気にするな。アキトを心配してって事は分かってるから」

 そう言いながら俺はちらりとアキトに視線を向けた。

 あれほどの殺気に気づかなかったのか、それとも自分には向けられていないと分かっているのか。どちらかは分からないが、アキトはまだ幸せそうにすーすーと寝息を立てていた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。