生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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696.久しぶりの採取

 サァァッと森の中を吹き抜けた風に煽られて、木々はサワサワと音を立てながら揺れた。遠くから聞こえてくる虫の声や、鳥や動物の鳴き声を聞きながら、俺とハルは木漏れ日の中をゆっくりと進んでいく。

 いま俺達が歩いているのは、トライプール領都にほど近いキニーアの森だ。

 キニーアの森はトライプールから一番近い採取地で、俺も冒険者になりたての頃から何度も利用した事のある慣れた場所でもある。

 ここは毒々しい色の果物や木の実も全く無くて、差し込む木漏れ日が綺麗な見惚れるほどに美しい森なんだよね。

 マイナスイオンたっぷりの森林浴がいつでも楽しめる素敵な場所なんだけど、とにかくいつ来ても人が多いのが難点だ。初心者にも人気の場所だからなのか、入ってすぐの辺りが特に混雑するんだよね。

 採取地の中に入るなりぐるりと周りを見渡してみれば、今日もやっぱりたくさんの冒険者の姿があった。

「ハル、今日もまっすぐ奥に行くで良いのかな?」

 そう尋ねてみれば、ハルはすぐに頷いてくれた。

「ああ、そうしようか」

 今日の俺達は、これという依頼は特に受けずにここまで来たんだ。

 ハル基準の俺が無理しないちょうど良い依頼ってのが、残念ながらもう無かったんだよね。

 無かったら諦めるなんて約束もしちゃってたし諦めるしかないか。そう思った俺にハルが提案してくれたのが、近場の採取地で採取をしてから買取に出すって方法だったんだ。

 この方法は今までにも何度かやった事があるんだけど、一般的にはかなり難易度が高いものらしい。

 時期によってギルドが必要としている素材、需要の高まる素材、最近話題の素材なんかをきっちり把握してないとなかなかうまく行かないんだって。

 まあ俺達のパーティーには頼れるハルがいるから、そこは全く問題ないんだけどね。いつどんな時でもちゃんと情報収集を欠かさないハルだから、どんな素材をとるべきかなんて判断もさらりとこなしてくれる。

 さすがハルだよね。

「ああ、ここまで来れば、だいぶ人も減ってくるね」

 ハルはそう言うとふわりと笑みを浮かべた。たしかにちらほらとはまだ人の姿があるけど、入口すぐの場所ほどの人口密度は無いね。

「うん。久しぶりに来たけどやっぱり入口近くは混んでるんだね」
「今日は普段よりもさらに人が多かった気がするな…」
「あ、確かに前より多かったかも」

 そんな事を話しながら、俺達は更に奥を目指してのんびりと木々の間を進んでいった。



「アキト、この辺りで良いと思うよ」

 そうハルが声をあげたのは、入口からはかなり距離のある森の最奥に辿り着いてからだった。ここまでくれば人の姿もほとんど無い。

「それじゃあ採取の準備するから、ハルはちょっとだけ待っててね」

 俺はそう言うなり、すぐに魔導収納鞄から自分の図鑑を取り出した。

 これが無いと、俺にはどの素材がどれって判別がまだそんなに出来ないからね。ハルにこれとってあれとってと言われるままに採取するんじゃ、冒険者らしくない気がするし頼りすぎはよくないからね。

 採取用の手袋や小袋もすぐに取り出せるようにと準備すれば、無事に準備完了だ。

「おまたせ、ハル。準備できたよ」
「いや、そんなに待ってないよ。準備、早くなったね」
「先生が良いからね」

 へへと笑ってハルを見返せば、ハルは嬉しそうに笑みを見せてくれた。照れ笑い可愛い。

「それじゃあ行こうか」
「うん、頑張る!」

 久しぶりの採取だと思うとワクワクしてくる。

「あ、あれってポルの実…じゃない?」

 俺はそう言いながら、視界に飛び込んできたプルーンのような実を指差した。たしか何度か納品した、染料として使われる実…だった筈。

「え、どこ?」
「あそこの木の下にある低木の所」

 説明しながらもう片手で図鑑のページを捲ってみれば、ポルの実のページはすぐに見つかった。

 うん。プルーンみたいな見た目意外の特徴も、ちゃんと一致してるみたいだ。
 
「ああ、うん、正解だね。ポルの実は常時買取されてるからいくつか採取していこうか」
「うん!」

 やっぱり久しぶりの採取楽しい。
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