生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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698.帰り道の異変

 ハルと二人で相談した結果、お昼ご飯を食べた後は早めに領都トライプールまで帰る事に決まった。

 正直に言うと、楽しくなってきた所だしもう少しぐらい採取したいなーって気持ちもあったんだけどね。

 でもさっきまであんなに自由に採取させてもらってたからある程度は満足したし、なにより心配そうに眉を下げたハルに、今日は早めに帰ろう?って言われたら拒否できるわけがないよね。

「思ったよりもいろいろ採れたね」
「そうだねーハルのおかげだよ」

 色々教えてくれてありがとうと伝えた俺に、ハルはそれは違うよと首を振った。

「今日は俺が教えたのよりも、アキトが自分で気づいた素材の方が多いからね」
「そう、かな…」
「うん、そうだよ。ちゃんと自分で調べて見つけてたし、そういう所、さすがアキトだなって思ってるからね」

 よくできましたと言いたげな笑みを浮かべたハルが口にした率直な誉め言葉に、俺はちょっとだけ、いやかなり本気で照れてしまった。

 さらりと褒められるから余計に恥ずかしいんだよ。もちろん嬉しいんだけどね。嬉しくたって恥ずかしいものは恥ずかしいんだ。

 思わずハルの温かい目からそっと視線を反らして空を見上げてみれば、木々の枝の隙間からすこしだけ青空が覗いていた。

「あー、えっと、今日も天気が良くて良かったよねー」

 照れて話を反らしてるのは明らかにバレバレだと思うんだけど、ハルはふふと笑っただけでそれには何も言わずに答えてくれた。

「そうだね。トライプール領都の辺りは、例年今の時期は特に晴天が多いかな」

 話にのってくれたハルの気づかいに感謝しながら、俺は口を開く。

「へーそうなんだ。季節的にって事?」
「うん。あとはまあ風の向きにもよるんだけどね」
「風の向きかぁ…」

 そんな事をのんびりと話しつつ森の中を歩いていけば、視界に入ってくる冒険者の数は段々と増えていった。



 入口近くまで辿り着いた俺達は、目の前の光景を眺めながら、その場で呆然と立ち尽くしていた。

 元々この辺りは混雑してるのが普通の状態なんだけど、それにしても人が多い。明らかに初心者じゃない冒険者もたくさん混ざっているように見えるし、さっき通った時よりも更に人が増えているみたいだ。

「なんだろ…なんか、人が増えた…ね?」
「ああ、さすがにこれはちょっと多すぎるな」

 不思議そうに首を傾げたハルの隣を、数人の冒険者達が通り過ぎていく。

「なあ、俺今日ずーっと探してた武器の強化素材手に入れたんだ」
「本当か?俺も依頼の期限ぎりぎりの素材、採取できたんだ」
「え、あの季節外れなのに依頼受けちゃったって焦ってたやつか?」
「そうそう。あの初心者泣かせの依頼な」

 そんな事を話し合う二人は、今日は運が良い日って話本当だったなと嬉しそうに笑い合っている。

 待って。運が良い日って何?

 不思議に思いながら視線を転じれば、そこにはベテランらしき冒険者達の姿があった。

「おい、見てくれ!ついに黒曜キノコ手に入れたぞ!」
「はぁっ!?」
「これで金はいらんから黒曜キノコを採って来いって言うあの鍛冶屋に、やっと相手してもらえるっ!さて防具か武器かどっちを作ってもらうか…」
「おい、俺もちょっと奥まで行ってくるわ。運が良い日って本当だったのかよ…」
「ああ、行ってこい」

 ここでも運が良い日か。

「気づいたらさ、今日は運が良い日だって話になってるよな…」
「ああ、たぶん最初は…レーブンさんのあの話だよな?」
「だと思う…」
「でも笑顔みてない人も運が良いらしいぞ?」
「何が起きてるのかは分からないけど、この流れには乗るしかないだろう!もう一回奥まで行くぞー!」
「おー!」

 バタバタと奥を目指して駆けていく朝も見かけた気がする冒険者の一団を見送って、俺はハルと顔を見合わせた。

「運が良い日」
「レーブン」
「笑顔」

 二人揃って、ブハッと笑ってしまった。

「これなら、すくなくともレーブンが責められる事は無さそうだな」
「うん、レーブンさんは関係なく、今日は運が良い日って事になってるみたいだしね」
「一番領都から近いから、噂を確かめに人が集まってるんだろうな」

 だから人が多いのかと納得しながら、俺達は軽い足取りで歩き出した。
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