生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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712.ハルのギャップ※

 自分の服を無造作に脱いでいる時と同じぐらいのスピードで、ハルは俺の服を器用に脱がせていった。

 俺のもたもたした動きとは、全く比べ物にならない。流れるように素早く動くその指先に、思わず感動して見惚れてしまった。

 ハルと同じぐらいの速度で――なんて贅沢は言わないけど、俺ももうちょっとぐらいスマートにさっさと脱がせられるようになれたら良いんだけどな。

 ハルは俺がもたもたしてても、絶対に嫌な顔をしたり文句を言ったりなんてしないんだけどね。

 でもやっぱりちょっとだけ、悔しい気がするんだ。

 上手くなるには、やっぱり練習するしかないのかな。

 ハルにたまに練習させてもらえないか今度聞いてみようかなーなんて考えていると、不意に視界に影が差した。視線をそっと上げてみれば、ちょうどハルが俺に覆いかぶさってくるのが見えた。

 触れ合う素肌と素肌の感触が嬉しくて、俺は寝転がったままそっとハルの背中に腕を回した。

 こんな状況だからもちろんドキドキもしてるんだけど、ハルと抱き合うと不思議と力が抜けるんだよね。一番安心できる場所だって、無意識のうちに思ってるのかもしれない。

 きゅっと力を込めて抱き着けば、不意にハルの顔がぐっと近づいてきた。

 そっと髪をかき上げられて額に。優しく撫でられた頬に。思わず閉じた両瞼に。自然と触れ合った鼻の頭に。指先でくすぐられた耳に。

 唇だけを外して、何度も何度も顔中にキスが降ってくる。

「わっ…ハルっ…ふはっ」

 くすぐったいと声をだして笑えば、ハルも笑いながらやっとキスをやめてくれた。そのまま至近距離からそっと覗き込んできた綺麗な紫色の目と、ぱちりと目が合った。

 いつも思うけど吸い込まれそうな綺麗な目だ。

「はー、アキトは本当に俺を喜ばせる天才だね」
「え?」

 突然褒められた俺は、意味が分からなくて首を傾げた。

「さっきの。大事な伴侶候補に脱がされるのが嫌なわけないって」

 言ったでしょと言われても、あの言葉を先に口にしたのはハルだよね。

「あれはハルが先に大事な伴侶候補って言ってくれたからだよ?」
「まあそうなんだけどね。でも、アキトがそう言ってくれたのが嬉しかったんだ」

 そっか。ハルも嬉しかったのか。俺もあの言葉、すごく嬉しかったんだよね。だからわざとああいう言い方をしたんだけど。

「ね、ハル。俺もね、ハルの言葉が嬉しかったから、わざとその言葉を使ってみたんだよ」

 二人きりの室内だけど、まるで内緒の話をする時のように小声でそう返せば、ハルはふにゃりとどこか無防備な笑みを浮かべた。

 うわー、何、その可愛い笑顔。普段の格好良いハルも、もちろん大好きなんだけど、こういう気の緩んだ笑顔も大好きだ。

 滅多に見れないってのもあるし、そういう笑顔を見せてくれるぐらい俺に心を開いてくれてるんだなーって実感が湧いてくるんだよね。

 可愛いなぁとたまらない気持ちになった俺はハルの腕の中でぐっと伸びをすると、その唇にそっと口づけた。

 何が起きたのかと言いたげな表情のハルは、最初はきょとんと俺を見つめていたけど、次の瞬間にはボッと頬を赤く染めた。

 その反応も可愛いね。

「さっき口だけしてくれなかったから…俺からしちゃった」

 へへと笑いながらそんな言い訳めいた言葉を続けたら、ハルは一瞬でその表情を一変させた。

 ついさっきまでは気が緩んでこどもっぽさすらある可愛らしい笑顔だったのに、今はもうギラギラとした目をした欲望の滲んだ男の顔だ。

 あれ、これはもしかしてやばいやつだったのかなと思った瞬間には、もうハルは動きだしていた。 

「んむっ…ハ…んんっ」

 名前を呼ぼうと反射的に開いた唇から、ぬるりとハルの舌が入り込んできた。最初は探るように舌と舌を触れ合わせただけだったけど、そのままどんどんキスが深くなっていく。

 ハルの巧みなキスにどんどん身体の力が抜けていく。元々抵抗するつもりも無いんだけど、抵抗なんて考える事もできなくなるぐらいぐにゃぐにゃに溶かされてしまった。
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