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734.【ハル視点】厄介な呼び出し
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初の護衛依頼も無事に終わって、領都トライプールを拠点として動きまわる俺とアキトの日常が帰ってきた。
二人で手を繋いで一緒にのんびりと街中を歩いてみたり、冒険者ギルドであれこれと依頼を探して達成してみたり、はたまた美味しいお店を探し歩いてみたりもした。
アキトと一緒だとそういう些細な出来事でさえ、本当に楽しいと思えるから不思議だ。
前と変わったのは、アキトにも知り合いが少しずつ増えてきた事だろうな。
街中を歩いていると、声をかけてくる人が増えてきているのが分かる。
よく行くお気に入りの屋台の店主や、毎朝前を通る黒鷹亭近くの店の店員、それに黒鷹亭の他の宿泊客の冒険者とかもだな。
最初の頃こそ俺が嫌がるだろうかと探るような視線で見られていたが、俺が一切邪魔をしない事に気がつくと段々遠慮がなくなってきた。
別にアキトの交友関係を制限して、俺だけに縛り付けたいわけじゃないからな。色を含んだ視線を向けてくるような相手でなければ、交流の邪魔をするつもりは無い。
最近は何故か、アキトと俺の友人達にもよく遭遇するな。それこそわざと狙っているのか?と、思わず尋ねるぐらいの遭遇率だ。
狙ってないよ、何となく気が向いて出てきただけだと、ルセフには面白そうに笑われたんだけどな。
この前なんて、冒険者ギルドの受付で依頼の達成報告をし終えて振り返ったら、俺達のいた受付ブースの列の後ろに並んでいたからな。あれにはかなり驚いた。
まああの時は皆で笑い合って、そのままギルドの酒場で一緒に食事をしたんだが。
クリスとカーディさんのやってるストファー魔道具店には、あれから何度か訪れた。
店だけじゃなく工房まで覗かせてくれるとは思っていなかったが、不思議な見た目をした珍しい魔道具や、アキトが興味深そうに見つめる魔道具まで色んなものがあった。
ちなみにクリスはまだ火竜の魔石を使った魔道具の開発を続けているらしく、明らかに注意力が落ちているし気も散っていた。その上最愛であるカーディさんが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれているのに、俺の伴侶が可愛すぎると騒がないのにも驚いた。
もうしばらくかかるからまた来て欲しいと誘ってもらって何度か訪れたが、今のところまだ魔道具は完成していないらしい。
そろそろ冒険者ランクをもう一つあげようかなんて話しも出始めていた頃、その知らせは唐突にやってきた。
窓から爽やかな光が差し込んでいる朝の黒鷹亭。自分たちの部屋のドアの前で、俺は固まっていた。視線は、わざわざ部屋まで訪れたレーブンが手渡してくれた、淡い緑色の封筒に釘付けだ。
いつかは来るかもしれないなとは思っていたが、本当に来たな。それも想定よりもかなり早い。
「えっと…ハル…大丈夫?」
心配そうにそっと後ろから覗き込んでくるアキトに、俺はぎこちなく笑ってみせた。
「…あーうん、ありがとう。大丈夫だよ」
とりあえず口ではそう答えたけど、元気がないのはバレているんだろうな。
「あー…まあそうなるだろうなとは思ってたけどな…」
レーブンは苦笑しながらも、納得した様子で俺の反応を見つめている。
「まだ手紙の中身も見てないのに…?」
アキトは不思議そうに首を傾げてそう呟いた。この封筒の意味を知らなければ、確かにそう思うだろうな。説明しようと口を開きかけた俺よりも先にレーブンが答えた。
「アキト、それは封筒を見ただけで差出人が分かる手紙なんだよ」
レーブンはそう言うと、そっと封筒を指差した。アキトに説明をすると可愛い反応をするからって、最近はたまにこうして説明を奪われるんだよな。まあレーブンとローガンになら文句は言わないが。
「え、封筒だけで差出人が?……レーブンさん、でも署名もないみたいですけど…」
「ああ、この色自体が署名みたいなものだからな」
「色?」
不思議そうなアキトは、淡い緑色の封筒を真剣な目をして観察している。端の方に入っている白と黄色の花の模様は、トライプール領主にゆかりのある花だ。
「えっと…綺麗な封筒ですね」
確かに客観的に見えばそう思えるだろうな。俺には厄介な呼び出しが来たなとしか受け取れないんだが。
もしこれが特別な依頼をするための呼び出しなら、まだ良い。だがその可能性は低いんだよな。他の地域ならともかく、トライプールの領主様なら騎士団か冒険者ギルドを通して正式に依頼してくるだろう。
他の可能性を色々と考えてみても、答えはひとつしか無いんだよな。
ぐるぐるとそんな事を考えている間に、封筒が領主しか使えないものだという説明は終わったらしい。
「おい、ハル。いい加減にアキトに説明してやれよ」
そんなよびかけに俺はハッとすると、アキトとレーブンを交互に見つめた。
「ごめんね、アキト。レーブン、ありがとう」
「ああ、俺も不意打ちで出して悪かったな」
何も悪くないのに律儀にもそう謝ってくるレーブンに、俺はゆるりと首を振った。たしかに驚きはしたが、これを受付や食堂で渡される方が確実に困る。
知ってるやつは知ってるからな。領主から呼び出しされてるぞと噂が広まりかねない。
「いや、人がいない場所を狙って渡してくれたんだろ」
「まあな…後は二人で部屋で話すと良い」
レーブンはそう言うとすぐに部屋から出て行った。二人でじっくり話し合えと言いたいんだろうな。
二人で手を繋いで一緒にのんびりと街中を歩いてみたり、冒険者ギルドであれこれと依頼を探して達成してみたり、はたまた美味しいお店を探し歩いてみたりもした。
アキトと一緒だとそういう些細な出来事でさえ、本当に楽しいと思えるから不思議だ。
前と変わったのは、アキトにも知り合いが少しずつ増えてきた事だろうな。
街中を歩いていると、声をかけてくる人が増えてきているのが分かる。
よく行くお気に入りの屋台の店主や、毎朝前を通る黒鷹亭近くの店の店員、それに黒鷹亭の他の宿泊客の冒険者とかもだな。
最初の頃こそ俺が嫌がるだろうかと探るような視線で見られていたが、俺が一切邪魔をしない事に気がつくと段々遠慮がなくなってきた。
別にアキトの交友関係を制限して、俺だけに縛り付けたいわけじゃないからな。色を含んだ視線を向けてくるような相手でなければ、交流の邪魔をするつもりは無い。
最近は何故か、アキトと俺の友人達にもよく遭遇するな。それこそわざと狙っているのか?と、思わず尋ねるぐらいの遭遇率だ。
狙ってないよ、何となく気が向いて出てきただけだと、ルセフには面白そうに笑われたんだけどな。
この前なんて、冒険者ギルドの受付で依頼の達成報告をし終えて振り返ったら、俺達のいた受付ブースの列の後ろに並んでいたからな。あれにはかなり驚いた。
まああの時は皆で笑い合って、そのままギルドの酒場で一緒に食事をしたんだが。
クリスとカーディさんのやってるストファー魔道具店には、あれから何度か訪れた。
店だけじゃなく工房まで覗かせてくれるとは思っていなかったが、不思議な見た目をした珍しい魔道具や、アキトが興味深そうに見つめる魔道具まで色んなものがあった。
ちなみにクリスはまだ火竜の魔石を使った魔道具の開発を続けているらしく、明らかに注意力が落ちているし気も散っていた。その上最愛であるカーディさんが甲斐甲斐しく世話を焼いてくれているのに、俺の伴侶が可愛すぎると騒がないのにも驚いた。
もうしばらくかかるからまた来て欲しいと誘ってもらって何度か訪れたが、今のところまだ魔道具は完成していないらしい。
そろそろ冒険者ランクをもう一つあげようかなんて話しも出始めていた頃、その知らせは唐突にやってきた。
窓から爽やかな光が差し込んでいる朝の黒鷹亭。自分たちの部屋のドアの前で、俺は固まっていた。視線は、わざわざ部屋まで訪れたレーブンが手渡してくれた、淡い緑色の封筒に釘付けだ。
いつかは来るかもしれないなとは思っていたが、本当に来たな。それも想定よりもかなり早い。
「えっと…ハル…大丈夫?」
心配そうにそっと後ろから覗き込んでくるアキトに、俺はぎこちなく笑ってみせた。
「…あーうん、ありがとう。大丈夫だよ」
とりあえず口ではそう答えたけど、元気がないのはバレているんだろうな。
「あー…まあそうなるだろうなとは思ってたけどな…」
レーブンは苦笑しながらも、納得した様子で俺の反応を見つめている。
「まだ手紙の中身も見てないのに…?」
アキトは不思議そうに首を傾げてそう呟いた。この封筒の意味を知らなければ、確かにそう思うだろうな。説明しようと口を開きかけた俺よりも先にレーブンが答えた。
「アキト、それは封筒を見ただけで差出人が分かる手紙なんだよ」
レーブンはそう言うと、そっと封筒を指差した。アキトに説明をすると可愛い反応をするからって、最近はたまにこうして説明を奪われるんだよな。まあレーブンとローガンになら文句は言わないが。
「え、封筒だけで差出人が?……レーブンさん、でも署名もないみたいですけど…」
「ああ、この色自体が署名みたいなものだからな」
「色?」
不思議そうなアキトは、淡い緑色の封筒を真剣な目をして観察している。端の方に入っている白と黄色の花の模様は、トライプール領主にゆかりのある花だ。
「えっと…綺麗な封筒ですね」
確かに客観的に見えばそう思えるだろうな。俺には厄介な呼び出しが来たなとしか受け取れないんだが。
もしこれが特別な依頼をするための呼び出しなら、まだ良い。だがその可能性は低いんだよな。他の地域ならともかく、トライプールの領主様なら騎士団か冒険者ギルドを通して正式に依頼してくるだろう。
他の可能性を色々と考えてみても、答えはひとつしか無いんだよな。
ぐるぐるとそんな事を考えている間に、封筒が領主しか使えないものだという説明は終わったらしい。
「おい、ハル。いい加減にアキトに説明してやれよ」
そんなよびかけに俺はハッとすると、アキトとレーブンを交互に見つめた。
「ごめんね、アキト。レーブン、ありがとう」
「ああ、俺も不意打ちで出して悪かったな」
何も悪くないのに律儀にもそう謝ってくるレーブンに、俺はゆるりと首を振った。たしかに驚きはしたが、これを受付や食堂で渡される方が確実に困る。
知ってるやつは知ってるからな。領主から呼び出しされてるぞと噂が広まりかねない。
「いや、人がいない場所を狙って渡してくれたんだろ」
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インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
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