生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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741.出発予定は

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「ちなみにハルはさ、領主様の申し出、どう思ってるの?」

 ハルの意見も聞いてみたいなと尋ねてみれば、ハルは困り顔で答えた。

「うーん、俺達にとっては正直利点しかない申し出だとは思うよ」

 所要時間は大幅に短縮されるし、二人だけで移動するよりも各段に安全になるからねとハルは続ける。

「そう…だよね」
「でも俺は絶対に魔法陣が良いとは言わないから…あとはアキト次第だね」
「俺…次第?」
「うん、アキトが好きな方を選んでくれたら良いよ」

 もし同行しないと決めたとしても、両親へは圧力をかけるのを止めろと手紙を出すから、領主様の心配はしなくて良いからねとハルは続けた。

 最終的に、俺達はトライプール領主様のご厚意に甘える事に決めた。

 移動時間が短縮されるのは、やっぱり有難いもんね。

 話し合いも終わってからしばらく過ぎた頃、領主様はワゴンを押した数人のメイドさん達を引き連れて部屋へと戻ってきた。

 お茶とお菓子の準備だけでこんなに時間がかかるわけがないから、きっとわざとたっぷりと時間をとってから戻ってきてくれたんだと思う。本当に気づかいのできる優しい人だ。

 音もたてずに優雅にくるくると動き回るメイドさん達によって、テーブルの上にはたくさんのお菓子が並べられた。基本的には一口で食べられるぐらい小さなケーキや、焼き菓子が多かったけど、乾燥させた果物のスライスもあったよ。

 豪華なお茶会の用意を終えたメイドさん達は、これまた優雅に部屋から出ていった。

「…さて、決まったかな?」
「はい、魔法陣で移動させて貰いたいです」

 ハルが即答すれば、領主様はちらりと俺にも目線を向けた。

「アキトくんもそれで良いんだね?」
「はい、お願いします」

 ぺこりと頭を下げれば、領主様は途端にホッとした様子で笑みを浮かべた。

「ああ、これで私も今日の夜は、ゆっくり眠れそうだよ」
「…すみません、俺の実家が…いや両親か…?」
「いやいや、遠縁とは言え私の親戚でもあるからね…」

 疲れたような表情なのにどこか楽し気に言い合うハルと領主様の息の合ったやりとりを、俺は微笑みながら見守った。

「それで、いつ出発予定なんでしょうか?」

 こちらも予定を立てないと駄目なのでと続けたハルの質問に、領主様はにっこり笑ってあっさりと答えた。

「二日後だよ」
「「二日後…?」」

 思わずハルと二人で声を揃えちゃったよね。

 俺達の反応を見た領主様が慌てて説明してくれたんだけど、なんでも数日前から既に転移魔法陣への魔力補充は始めてもらっていたらしい。俺とハルが一緒に行くかどうかはまだ分からなかったけど、近いうちに辺境領で公務があるのは確定していたからだって。

「無駄にならないから良いかと用意を早めにしていたんだが…まずかったかな?…あ、そんなに早い出発では無理だって言うなら、あと二日ぐらいなら後ろに予定をずらす事もできるよ?」

 優しい領主様はそう言ってくれたけど、俺とハルはその申し出は断らさせてもらった。魔法陣なんて便利なものを使わせてもらうんだから、俺達のために予定を変えて貰うのはさすがに申し訳ないからね。

 だから、出発は二日後。

 つまりハルの家族との対面もいきなり二日後に決まったわけだけど、俺も自分でもちょっと不思議なほど落ち着いていた。

 ハルの家族だから信頼できる相手だと思えるっていうのもあるし、それにハルと一緒に会いにいくから――かな。

 緊張とかよりもむしろハルが生まれ育った場所をこの目で見れるんだって、ワクワクしているぐらいだ。

 まあそれを素直にハルと領主様に言ったら、またまじまじと見つめられちゃったんだけどね。

 俺そんなに変な事言ったかな?



 それからはもう、目が回るほどの大忙しだった。

 まず初めにしたのは買い出しだ。

 辺境は危険が多く、街中ですら絶対に安全とは言いきれない。実際に過去には、街中に普通に魔物が出てきたなんて事もあるんだって。

 だからそのための用意をしなきゃねと笑ったハルと、領主城の帰り道に色んなものの買い出しに行ったんだ。

 ハルは相変わらずの豊富な知識量で、たくさんの助言を俺にくれた。

 そっちの虫よけの魔法薬より、こっちの方が気候に合ってるからお勧めとか、植物用の採取袋は辺境ではどうしても手に入りにくいから、多めに買っていこうとかね。

 地元の人じゃないと思いつかない視点の情報は、めちゃくちゃありがたかった。
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