生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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745.四人の冒険者の家

 そっと口を押さえて固まったウォルターさんとファリーマさんを見て、ブレイズもぴたりと動きを止めた。

 うん、気持ちは分かるよ、ブレイズ。今変に騒いだら、確実にルセフさんに怒られるもんね。別に自分が怒られたわけでもないのに、俺までついつい口を押さえて固まってしまうぐらいの迫力だったからね。

「あー驚かせて悪かったな」

 ルセフさんは俺の反応をちらりと見てから、申し訳なさそうにそう呟いた。

「いや、気にするな」

 急に来て悪かったなと普段通りに答えたハルに、ルセフさんはホッとしたようにうっすらと笑みを浮かべた。ウォルターさんとファリーマさんがそっと手を離したのを見て、俺も口から手を離した。

「それで、二人は何か用事があってきたんだよな?」
「ああ、ちょっと報告しておきたい事があってな」
「そうか…もし二人さえ良ければ、中に入って話しをしないか?」
「いいのか?」
「いいんですか?」

 思わず綺麗に声を重ねた俺とハルに、ルセフさんは相変わらず二人は仲が良いなと楽し気に笑った。

「家に入った方が近所迷惑じゃないしな…報告がどんな内容だとしても、こいつらは絶対また叫ぶから」

 賭けても良いと苦笑したルセフさんは、言い返そうと口を開きかけたウォルターさんをじろりと睨みつけた。視線だけで周りを牽制できるルセフさん、すごいな。

 感心しながら見つめていると、ルセフさんは俺とハルに向かって笑いかけた。

「まあ、とりあえず入ってくれ」



 四人の家の外観は温かみのあるなんだか可愛らしい作りで、どこからどうみても男四人の冒険者が住んでいる家には見えなかった。どちらかというと可愛らしいお婆ちゃんとかが、お花とかを育てながら住んでいそうな印象だったんだよね。

 でも皆を追って一歩家に入れば、玄関には装備を置くための広い棚が設置されていた。黒鷹亭にもあるけど、冒険者には必要な家具だもんな。

 よく考えてみれば、冒険者の家に入るのは初めてかもしれない。俺は少しだけワクワクしながら周りに視線を巡らせた。

「悪い、ハル。鍵頼む」

 ルセフさんの声に一番後ろにいたハルが、かちゃりと音を立てて鍵を閉めた。

「この家、防音結界が付いてるのか」
「ああ、主にうるさい奴らのためにな。よーし、お前ら、喋って良いぞ」
「あー疲れた!って誰がうるさい奴らだよ!」

 盛大に叫んだウォルターさんは、ガチャガチャと音を立てながら鎧を外し始めている。

「間違いなくお前がうるさい奴だよ!後ファリーマ!」
「えー俺ウォルターよりはだいぶ静かだと思うんだけどな…」

 そう言い返しながら、ファリーマさんは床に直接座り込んでしまった。

「あー…無事に帰り着いた…な…」

 なんだか今日はかなり疲れてるみたいだ。

「悪いな、ちょっとだけ待っててくれ、ハル、アキト」
「ああ、俺達の事は気にするな」

 律儀に俺達を気にして声をかけてくれるルセフさんに、ハルは笑って手を振った。冒険者の装備の解除に時間がかかるのは、俺達も身をもって知ってるからね。いくらでも待てるよ。

 そう思ってハルと笑い合っていると、不意に後ろから声がかかった。

「アキト!」
「ブレイズ!」
「せっかく来てくれたのにバタバタしててごめんね。数日かけた依頼がやっと終わって帰ってきたばっかりなんだ」

 そう言いながら、ブレイズは慣れた手つきで装備を解除していく。

「え、俺達、よりによってそんな時に来ちゃったの…?」

 それは疲れてる筈だよね。邪魔しちゃったなとは思ったけど、じゃあ帰るって今さらいうのも変だよな。家の中にまで入れてもらっちゃってるんだし。

「ううん。依頼前だったら話す時間もなかったかもだし、一番良い時に来てくれたよ!」

 ブレイズは明るくそう言うと、俺も装備置いてくるから待っててーと元気に去っていった。

「今日もいっぱい動いたなぁ」

 装備を外したウォルターさんは、ぐいーっと伸びをしてからまだ座りこんでいるファリーマさんに視線を向けた。

「なあ、ファリーマ、俺の全身に浄化魔法かけてくれよ」
「えー今日は疲れてるから無理だよ…」

 そもそも魔法使いまくってたの見てただろうがとファリーマさんは、珍しくそうぼやいている。魔法が使えるチャンスだって、いつもなら嬉々として使ってるのにね。

「あ、浄化魔法なら俺がかけましょうか?」
「いや、アキトそれはさすがに悪いから」

 二人のやりとりをのんびりと眺めていたルセフさんは、俺の提案に慌てた様子で口を挟んだ。

「え、でもファリーマさんも疲れてるみたいだし……ね。ハル、駄目?」
「うん、まあアキトがしたいなら別に良いんじゃないか?」

 俺の好きにして良いよとあっさりと言ってくれたハルは、やっぱり俺の事をよく分かってくれていると思う。
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