生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
756 / 1,561

755.【ハル視点】長い買い物

 いつもの買い出しと違うのは、とにかく色んな店を回る必要がある所だ。

 辺境領に行くならあそこの店の魔法薬が欲しいとか、あちらではよく品薄になる採取袋は必ず多めに用意したいとか色々あるからな。

 普段なら近場にある店だけに絞り込んで他は後日にと計画を立てて買い物をするんだが、二日後に出発となるとそうも言っていられない。

 俺とアキトはトライプールの街中を、手を繋いでうろうろと歩き回る事になった。

 街の端から端まであちこちに連れまわされる形になったけれど、アキトは文句ひとつ言わなかった。この世界に来てすぐの頃ならとっくに動けなくなるぐらいの距離を歩いているんだが、アキトは明るい笑顔すら見せていた。

 体力がついて逞しくなったな。そう感心しながら歩いていたら、うっかり目的地の店を通り過ぎかけてしまった。

「あ、アキト、ここも入るよ」

 ごまかすように声をあげたのは、大通りに面した一軒の小さな店の前だった。

 ここは店の作りがちょっと変わっていて、入口は狭いが中は奥に向かって細長く伸びている。その変わった作りの店内には、様々なテントがずらりと並べられている。

 色とりどりのテントは冒険者用の小さなものから、旅行客用の大きめのものまで種類豊富だ。

 アキトはまじまじと店内を見つめてから口を開いた。

「え、ここって…テント屋さん…?」
「うん、正解だよ。ここはテントの専門店なんだ」
「…ハル、テント買い替えるの?」

 心底不思議そうに尋ねてくるアキトに、ゆるりと首を振って答える。

「いや、あのテントはまだ買い替える予定はないんだけど…今日は魔物避けの種類をいくつか揃えたいからここに来たんだ」
「え…?俺知らなかったけど、魔物避けにも種類とかあるの?」
「ああ、小型にしか効果の無いものから、中型、大型を対象としたものまで色々あるんだ」

 俺達が普段トライプールの近辺で野宿をする時に使っているのは、中型までが対象の魔物避けだ。そもそもトライプールの近くには大型の魔物は滅多に生息していないから、中型用が一般的だからな。

 まあこの前のクリスとカーディさんの護衛依頼の時は、大型まで対応のを使っていたせいでクリスに揶揄われたんだが。

「実はアキトも何度か大型用のも使った事はあるんだけどね」
「そうなんだ…?」
「これが小型用で、こっちが中型、これは大型に対応してる魔物避けだね」

 一つずつ指差しながら説明すると、アキトはまじまじと三つの束を見比べ始めた。

 これは使われている薬草の種類がいくつか違うだけだから、ぱっと見て判断するのはなかなかに難しい。売ってる側を信じて、何も考えずに使っている冒険者が大半かもしれないんだが、アキトは真剣な表情で見比べている。

 こういう所がアキトの良い所だよなと黙って見守っていると、不意に小さな声でぼそりと呟くのが聞こえた。

「ううー…違いが…分からない…」
「いつか香りで分かるようになるから」

 うん、アキトならきっと嗅ぎ分けられるようになるよ。



 その後も買い物は長々と続いた。

 さすがにアキトも疲れた様子だったが、最後まで文句も言わずに付き合ってくれたおかげで順調に予定は済んだ。

「こんなものかな。もし他にも思いついたらすぐに言うね」

 必要だと思ったものはほとんど全部揃ったと思うんだが、もし買い忘れがあったら明日買わないとな。

 そう思いながら声をかけた俺は、次の予定はとアキトを振り返った。

「買い物はとりあえず終了したし、次はアキトが辺境に行く前に声をかけたいと思う人達に挨拶に行こうか」
「えっと…挨拶?」

 誰に?と続ぎそうなアキトの言葉に、俺はぐるりと周りを見渡してからそっとアキトの耳元に顔を寄せる。気配探知によれば近くには誰もいないんだが、一応警戒はしておきたい。

「俺達の使う移動手段については、あんまり詳しく説明できないんだけどね…?」

 さすがに領主城にある転移の魔法陣を使わせてもらえるから、一瞬で着くんだーと告げることはできない。でも魔法陣を使う事を告げずに、ただ領主様と一緒に移動するんだと告げることはできる。

 情報として知っているやつや、依頼の関係で知っているやつが自分で気づく分には問題無いからな。

 そう匂わせた俺の言葉に、アキトはコクコクと何度も頷いた。ちゃんと覚えてたよと言いたげなアキトの素直な反応が可愛すぎて、思わずそっと頭を撫でてしまった。

「でも領主様と一緒に辺境領に行くんだっていうのは、別に隠さなくても良いんだ」
「へーそうなんだ」
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。