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761.【ハル視点】ルセフの躾
早くハルとアキトを部屋に案内しろと叱るだけ叱って、ルセフはすぐにまた厨房へと戻っていった。片手に調理器具を持ったままだったし、調理中だったのにこっちの騒ぎが気になって来てくれたんだろうな。
そのおかげで荒ぶっていたウォルターとファリーマも落ち着いたようだ。
去っていくルセフの背中をじーっと見送っていたウォルターとファリーマは、ハッと我に返るなり俺達を振り返った。
「ハル、アキト。案内もせずに盛り上がって、悪かったな」
「俺も、騒いで悪かった」
「いや、別に気にしなくて良いぞ。そもそもアキトの浄化魔法がすごすぎるせいだからな」
正直に言えば、だいぶ前からアキトの浄化魔法を誰かに自慢したかったんだよな。
どうだ俺の伴侶候補はすごいだろうと自慢したいが、その一方で便利な魔法を使えるんだなと変な奴らに目を付けられるのは絶対に避けたかった。
その点、ルセフ、ウォルター、ファリーマ、ブレイズの四人は、アキトの浄化魔法を便利だと思っても利用しようとはしないだろう。
そう信じられる相手だから、アキトの優しさからの提案に反対しなかったんだからな。
俺が上機嫌で笑っているのを見て、ウォルターとファリーマはさっとアキトに視線を向けた。俺が許してもアキトが許してくれないかもしれないと思ったんだろうな。
まあ、アキトはよっぽどの事が無いと許さないなんて選択肢はしないんだが。
俺の予想通り、アキトはコクコクと何度も頷いて答えている。
「二人ともありがとうな。あー…じゃあ案内するな。こっちだ、ついてきてくれ」
先導するように廊下を歩き出したウォルターの背中を二人揃って追っていると、不意にファリーマの怖かったという言葉が後ろから聞こえてきた。
「えールセフさん、別に怖くはないよね」
「ブレイズは気に入られてるからだろう」
「ウォルター兄ちゃんとファリーマさんも、すっごく気に入られてるよ?」
自信満々でそう断言したブレイズに、ファリーマは苦笑しつつ答えている。
「あー…うん、ありがとな?」
そんな平和なブレイズとファリーマのやりとりを流し聞きながら進んでいくと、不意にウォルターがひとつのドアの前で立ち止まった。
「ここだ」
そう言いながらさっとドアを開いてくれたんだが、部屋の中には大きなソファがひとつと、テーブルと椅子がいくつも並んでいた。出窓になっている窓の所には、小さな木彫りや魔石が無造作に並べられている。
あの木彫りは幸運を呼ぶと言われている精霊の像だな。実際に分かりやすい効果があるわけではないが、運を気にする冒険者にはそれなりに人気があるものだ。
辺境領には木彫りを取り扱う店が多いから、アキトが気に入るならああいうのも買ってみても良いかもしれない。
「あー、良かったー間に合ったー!」
ウォルターはふぅーと息を吐くなり、唐突にそんな事を叫んだ。
間に合ったって何だ?と思わずアキトと顔を見合わせてしまったが、ウォルターはお前らも適当に座ってくれよと言い置いて、そのまま近くの椅子にどさりと座り込んでしまった。
「おい、ウォルター。お前、ちゃんと説明しろよ」
俺達が口を開くよりも前に、ファリーマがそう声をかけてくれた。
「悪い…説明頼んだ」
「まったく…」
苦笑したファリーマは、それでもウォルターの代わりに教えてくれた。
なんでもあんな風に笑顔で怒ってる時のルセフは、本気で怒る一歩手前の状態なんだそうだ。そしてあのタイミングで本気で怒ったら、まず間違いなくウォルターとファリーマの食事に影響がでるらしい。
「食事はいらないんだな?って言われる事はあっても、実際に無しにされた事はまあ無いんだけどな…」
前にも二人にそう言っているのは聞いた事があったが、実際にした事は無いのか。少しだけ意外に思っていると、ファリーマは顔を歪めて続けた。
「嫌いなものがいっぱい出てくるんだ」
「「嫌いなもの」」
予想外な言葉に、思わずアキトと言葉を重ねてしまった。
「ああ、俺は貝類が、ウォルターはスラートが嫌いなんだよ」
スラ―トはこどもが嫌いな野菜の上位にいつも入る野菜だ。あの苦味が無理だという大人も多い。俺はあの苦味が結構好きなんだが。
「一回、本気で怒らせた時があってな…あの時は手を変え品を変え…全部の料理にスラ―トが入ってたんだよ…」
あれはすごかったとウォルターは分かりやすく肩を落としているが、それは逆にすごく手間がかかるんじゃないか?しかも言い方的に調理法まで変えられているんだろう?
もし俺がルセフの立場なら、皿に洗ったスラ―トを積み上げるだろうな。
「まあ、俺とウォルターにしかしないんだけどな」
「あれ?ブレイズは今まで一度もルセフを怒らせた事が無いのか?」
それはすごいなと思わずそう尋ねると、ブレイズは満面の笑みを浮かべてブンブンと首を振った。なんだ、怒らせた事が無いわけじゃないのか。
「だって俺、食べ物の好き嫌い無いからね!」
なるほど、そういう事か。
「しかも恐ろしい事に、ちょっとずつ食べれるようになってるんだよ!」
いや、それは間違いなく良い事だろう。
そのおかげで荒ぶっていたウォルターとファリーマも落ち着いたようだ。
去っていくルセフの背中をじーっと見送っていたウォルターとファリーマは、ハッと我に返るなり俺達を振り返った。
「ハル、アキト。案内もせずに盛り上がって、悪かったな」
「俺も、騒いで悪かった」
「いや、別に気にしなくて良いぞ。そもそもアキトの浄化魔法がすごすぎるせいだからな」
正直に言えば、だいぶ前からアキトの浄化魔法を誰かに自慢したかったんだよな。
どうだ俺の伴侶候補はすごいだろうと自慢したいが、その一方で便利な魔法を使えるんだなと変な奴らに目を付けられるのは絶対に避けたかった。
その点、ルセフ、ウォルター、ファリーマ、ブレイズの四人は、アキトの浄化魔法を便利だと思っても利用しようとはしないだろう。
そう信じられる相手だから、アキトの優しさからの提案に反対しなかったんだからな。
俺が上機嫌で笑っているのを見て、ウォルターとファリーマはさっとアキトに視線を向けた。俺が許してもアキトが許してくれないかもしれないと思ったんだろうな。
まあ、アキトはよっぽどの事が無いと許さないなんて選択肢はしないんだが。
俺の予想通り、アキトはコクコクと何度も頷いて答えている。
「二人ともありがとうな。あー…じゃあ案内するな。こっちだ、ついてきてくれ」
先導するように廊下を歩き出したウォルターの背中を二人揃って追っていると、不意にファリーマの怖かったという言葉が後ろから聞こえてきた。
「えールセフさん、別に怖くはないよね」
「ブレイズは気に入られてるからだろう」
「ウォルター兄ちゃんとファリーマさんも、すっごく気に入られてるよ?」
自信満々でそう断言したブレイズに、ファリーマは苦笑しつつ答えている。
「あー…うん、ありがとな?」
そんな平和なブレイズとファリーマのやりとりを流し聞きながら進んでいくと、不意にウォルターがひとつのドアの前で立ち止まった。
「ここだ」
そう言いながらさっとドアを開いてくれたんだが、部屋の中には大きなソファがひとつと、テーブルと椅子がいくつも並んでいた。出窓になっている窓の所には、小さな木彫りや魔石が無造作に並べられている。
あの木彫りは幸運を呼ぶと言われている精霊の像だな。実際に分かりやすい効果があるわけではないが、運を気にする冒険者にはそれなりに人気があるものだ。
辺境領には木彫りを取り扱う店が多いから、アキトが気に入るならああいうのも買ってみても良いかもしれない。
「あー、良かったー間に合ったー!」
ウォルターはふぅーと息を吐くなり、唐突にそんな事を叫んだ。
間に合ったって何だ?と思わずアキトと顔を見合わせてしまったが、ウォルターはお前らも適当に座ってくれよと言い置いて、そのまま近くの椅子にどさりと座り込んでしまった。
「おい、ウォルター。お前、ちゃんと説明しろよ」
俺達が口を開くよりも前に、ファリーマがそう声をかけてくれた。
「悪い…説明頼んだ」
「まったく…」
苦笑したファリーマは、それでもウォルターの代わりに教えてくれた。
なんでもあんな風に笑顔で怒ってる時のルセフは、本気で怒る一歩手前の状態なんだそうだ。そしてあのタイミングで本気で怒ったら、まず間違いなくウォルターとファリーマの食事に影響がでるらしい。
「食事はいらないんだな?って言われる事はあっても、実際に無しにされた事はまあ無いんだけどな…」
前にも二人にそう言っているのは聞いた事があったが、実際にした事は無いのか。少しだけ意外に思っていると、ファリーマは顔を歪めて続けた。
「嫌いなものがいっぱい出てくるんだ」
「「嫌いなもの」」
予想外な言葉に、思わずアキトと言葉を重ねてしまった。
「ああ、俺は貝類が、ウォルターはスラートが嫌いなんだよ」
スラ―トはこどもが嫌いな野菜の上位にいつも入る野菜だ。あの苦味が無理だという大人も多い。俺はあの苦味が結構好きなんだが。
「一回、本気で怒らせた時があってな…あの時は手を変え品を変え…全部の料理にスラ―トが入ってたんだよ…」
あれはすごかったとウォルターは分かりやすく肩を落としているが、それは逆にすごく手間がかかるんじゃないか?しかも言い方的に調理法まで変えられているんだろう?
もし俺がルセフの立場なら、皿に洗ったスラ―トを積み上げるだろうな。
「まあ、俺とウォルターにしかしないんだけどな」
「あれ?ブレイズは今まで一度もルセフを怒らせた事が無いのか?」
それはすごいなと思わずそう尋ねると、ブレイズは満面の笑みを浮かべてブンブンと首を振った。なんだ、怒らせた事が無いわけじゃないのか。
「だって俺、食べ物の好き嫌い無いからね!」
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「しかも恐ろしい事に、ちょっとずつ食べれるようになってるんだよ!」
いや、それは間違いなく良い事だろう。
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