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762.【ハル視点】楽しい時間
「おーい、食事の用意ができたぞー」
遠くから、そんなルセフの声が聞こえてきた。その瞬間、ウォルターとブレイズはすごい勢いでさっと立ち上がった。え、と思う時間すら無く、そのまま二人は競うようにしてすぐに部屋から出ていってしまった。
普段から盾使いとは思えないほど身軽なウォルターと、いつでもしなやかで俊敏に動く狩人らしいブレイズ。
二人が素早いのはもちろん知っていたが…それにしても今のは反応が早すぎなかったか?依頼中でも見せた事がないぐらいの俊足で駆け出して行ったな。思わず二人が消えていった開いたままのドアを見つめてしまうぐらいの、驚くべき素早さだった。
「おおー今日のもうまそうだな!」
「本当に美味しそうだねーさすがルセフさん!」
二人がルセフの料理を褒め称える声が、遠くでうっすらと聞こえてくる。
「ああ、ありがとなーじゃあこれとこれはブレイズ、こっちはウォルターに頼んだ」
「おう、まかせろ」
「はーい!運ぶねー!」
ああ、なるほど。二人は呼ばれた瞬間に、驚くべき速度で料理を運びにいっただけなのか。
「あー、びっくりしたか?うちの食事は基本的にあの二人が取りに行くんだよ。俺はだいたい出遅れるから、いっつも食器用意担当だな」
笑いながらそう教えてくれたファリーマは、部屋の隅にある棚からいそいそと食器を取り出していた。
「あ、俺達も手伝いますよ?」
「いやいや、客なんだからのんびり待っててくれ」
アキトの申し出に、ファリーマはぶんぶんと首を振った。
「ファリーマ、良いのか?」
人の家だがそれぐらいはするぞと控え目に主張してみたが、再びファリーマの首が振られた。
「ああ、むしろ変に手伝わせた方が…後が怖い」
ルセフの反応が怖いからと小声でそう囁いたファリーマは、素早く手を動かすとあっという間に食器を並べ終えた。テーブルの上を見回してよしと一つ頷くと、今度は魔導収納鞄からいそいそと飲み物を取り出していく。いつも食器用意担当だと言うだけあって、慣れた様子で準備を進めているな。
ここはファリーマの言葉に甘えておくか。
「ね、アキトみてみてー!ほら、すっごく美味しそうだよ!」
先に部屋まで帰ってきたのはブレイズだった。ニコニコとそれはもう嬉しそうに笑いながらアキトに見せているのは、チーズをたっぷりとかけて焼いてある色とりどりの野菜のグリルと、こんがりと焼き色のついた大きな塊肉だった。
木製の板の上に乗せられた肉の横には切れ味の鋭そうなナイフが載っているから、おそらくこれから切り分けるんだろう。
「わー本当だー!すっっっごく美味しそう!」
「ああ、見事だな!」
ローガンの作ったステーキに対抗できそうなほどの素晴らしい焼き具合だ。
「おまえらーこっちのスープも美味そうだぞー」
ウォルターがわざわざ蓋を開いてくれた鍋を覗き込めば、湯気がふわりとただよう真っ白なシチューがたっぷりと入っていた。具材もゴロゴロと入っていてこちらも文句なしに美味そうだ。
「うわぁ、これも美味しそう!」
目をキラキラと輝かせたアキトの嘘の無い反応に、二人の後ろから歩いてきていたルセフも嬉しそうに笑みを浮かべた。
「あとはサラダとパンもあるぞ」
大きな皿を両手に持っていたルセフは、テーブルに並べながら続けた。
「ハル、アキト、おまたせ。簡単なもので悪いが食べていってくれ。さっきは浄化魔法ありがとうな」
テーブルの上に並んだ手料理はどれも見事な出来栄えで、どこに出しても恥ずかしくないぐらいの見た目なんだが――一体どのあたりが簡単なものなんだ。
なんと返そうかと悩んでいる俺の隣で、アキトはニコニコと笑みを浮かべながら口を開いた。
「料理が得意じゃない俺からしたら、感動するぐらいの料理ですよ!すごく美味しそうです」
アキトの反応にルセフは一瞬だけ目を見張ったが、次の瞬間にはふわりと優しい笑みを浮かべた。裏表の無いアキトの心からの誉め言葉だからな。そんな反応にもなるよな。
ルセフが作ってくれた料理は、どれも文句なしに美味かった。簡単に作ってこれなら、冒険者をやめたら店を出せるんじゃないか。そんな考えが頭を過った。
美味しい料理を楽しみながら、気を許せる奴らとあれこれと盛り上がるのは楽しい時間だった。
最近行った採取地や、受けた依頼の話、手に入れた素材の話、見つけた掘り出し物の店の話と話題は尽きなかった。
これだけ楽しい時間を過ごさせてもらったんだから何かお返しをしたいとアキトが言い出した時、俺はいそいそと魔導収納鞄に手を入れた。
ルセフは金は受け取ってくれないだろうから、珍しい果物を渡すのが一番だと思ったからだ。こそこそとアキトと相談しながら果物を取り出していると、不意にルセフが口を開いた。
「それで何の話しだったんだ…?」
「「あ…」」
楽しすぎて忘れていたな――俺とした事が。
遠くから、そんなルセフの声が聞こえてきた。その瞬間、ウォルターとブレイズはすごい勢いでさっと立ち上がった。え、と思う時間すら無く、そのまま二人は競うようにしてすぐに部屋から出ていってしまった。
普段から盾使いとは思えないほど身軽なウォルターと、いつでもしなやかで俊敏に動く狩人らしいブレイズ。
二人が素早いのはもちろん知っていたが…それにしても今のは反応が早すぎなかったか?依頼中でも見せた事がないぐらいの俊足で駆け出して行ったな。思わず二人が消えていった開いたままのドアを見つめてしまうぐらいの、驚くべき素早さだった。
「おおー今日のもうまそうだな!」
「本当に美味しそうだねーさすがルセフさん!」
二人がルセフの料理を褒め称える声が、遠くでうっすらと聞こえてくる。
「ああ、ありがとなーじゃあこれとこれはブレイズ、こっちはウォルターに頼んだ」
「おう、まかせろ」
「はーい!運ぶねー!」
ああ、なるほど。二人は呼ばれた瞬間に、驚くべき速度で料理を運びにいっただけなのか。
「あー、びっくりしたか?うちの食事は基本的にあの二人が取りに行くんだよ。俺はだいたい出遅れるから、いっつも食器用意担当だな」
笑いながらそう教えてくれたファリーマは、部屋の隅にある棚からいそいそと食器を取り出していた。
「あ、俺達も手伝いますよ?」
「いやいや、客なんだからのんびり待っててくれ」
アキトの申し出に、ファリーマはぶんぶんと首を振った。
「ファリーマ、良いのか?」
人の家だがそれぐらいはするぞと控え目に主張してみたが、再びファリーマの首が振られた。
「ああ、むしろ変に手伝わせた方が…後が怖い」
ルセフの反応が怖いからと小声でそう囁いたファリーマは、素早く手を動かすとあっという間に食器を並べ終えた。テーブルの上を見回してよしと一つ頷くと、今度は魔導収納鞄からいそいそと飲み物を取り出していく。いつも食器用意担当だと言うだけあって、慣れた様子で準備を進めているな。
ここはファリーマの言葉に甘えておくか。
「ね、アキトみてみてー!ほら、すっごく美味しそうだよ!」
先に部屋まで帰ってきたのはブレイズだった。ニコニコとそれはもう嬉しそうに笑いながらアキトに見せているのは、チーズをたっぷりとかけて焼いてある色とりどりの野菜のグリルと、こんがりと焼き色のついた大きな塊肉だった。
木製の板の上に乗せられた肉の横には切れ味の鋭そうなナイフが載っているから、おそらくこれから切り分けるんだろう。
「わー本当だー!すっっっごく美味しそう!」
「ああ、見事だな!」
ローガンの作ったステーキに対抗できそうなほどの素晴らしい焼き具合だ。
「おまえらーこっちのスープも美味そうだぞー」
ウォルターがわざわざ蓋を開いてくれた鍋を覗き込めば、湯気がふわりとただよう真っ白なシチューがたっぷりと入っていた。具材もゴロゴロと入っていてこちらも文句なしに美味そうだ。
「うわぁ、これも美味しそう!」
目をキラキラと輝かせたアキトの嘘の無い反応に、二人の後ろから歩いてきていたルセフも嬉しそうに笑みを浮かべた。
「あとはサラダとパンもあるぞ」
大きな皿を両手に持っていたルセフは、テーブルに並べながら続けた。
「ハル、アキト、おまたせ。簡単なもので悪いが食べていってくれ。さっきは浄化魔法ありがとうな」
テーブルの上に並んだ手料理はどれも見事な出来栄えで、どこに出しても恥ずかしくないぐらいの見た目なんだが――一体どのあたりが簡単なものなんだ。
なんと返そうかと悩んでいる俺の隣で、アキトはニコニコと笑みを浮かべながら口を開いた。
「料理が得意じゃない俺からしたら、感動するぐらいの料理ですよ!すごく美味しそうです」
アキトの反応にルセフは一瞬だけ目を見張ったが、次の瞬間にはふわりと優しい笑みを浮かべた。裏表の無いアキトの心からの誉め言葉だからな。そんな反応にもなるよな。
ルセフが作ってくれた料理は、どれも文句なしに美味かった。簡単に作ってこれなら、冒険者をやめたら店を出せるんじゃないか。そんな考えが頭を過った。
美味しい料理を楽しみながら、気を許せる奴らとあれこれと盛り上がるのは楽しい時間だった。
最近行った採取地や、受けた依頼の話、手に入れた素材の話、見つけた掘り出し物の店の話と話題は尽きなかった。
これだけ楽しい時間を過ごさせてもらったんだから何かお返しをしたいとアキトが言い出した時、俺はいそいそと魔導収納鞄に手を入れた。
ルセフは金は受け取ってくれないだろうから、珍しい果物を渡すのが一番だと思ったからだ。こそこそとアキトと相談しながら果物を取り出していると、不意にルセフが口を開いた。
「それで何の話しだったんだ…?」
「「あ…」」
楽しすぎて忘れていたな――俺とした事が。
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