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763.【ハル視点】優しいやつら
本題を忘れていた事に気づいたアキトは、焦りながらも魔導収納鞄から珍しい果物を取り出すと使っていなかった皿の上に積み上げた。アキトが積み上げた果物の山の上に、俺も自分の魔導収納鞄から取りだした果物をそっと付け足していく。
明らかに呆れた目でルセフが俺を見ているんだけどな。これは礼の気持ちだから受け取って欲しいと視線だけで訴えれば、すっと視線を反らされた。
「うわー珍しい果物ばっかり」
まじまじと果物の山を見つめていたウォルターが、感嘆の声をあげる。
「そんなに無造作に積んだら駄目だろうってものばかりだな」
ルセフは呆れ顔のままだが、とりあえず受け取ってはくれそうだ。
「あー俺これ好きー!」
ブレイズが指差したのは、一番端にさっき俺が付け足した酸味のある果実だ。
「うわ。一回ぐらいは食べてみたいと思ってたのも混ざってるな」
魔法馬鹿のファリーマがそっと手に取ったのは、魔力を込めると実をつける珍しい植物の果実だ。ぶれないな。
嬉しそうなみんなの声に食べて食べてと明るく勧めたアキトは、次の瞬間ふうとひとつ息を吐いた。
「うーん、何のためにここに来たのか、すっかり忘れてたよ…」
「ね、俺も綺麗に忘れてたよ」
苦笑しながら同意を返せば、アキトはすこしだけ嬉しそうに笑ってくれた。
「そうなのか?俺は食事中だから話題を避けてるんだと思ってたんだが…」
ルセフは摘まんだ果物を口に放り込みながら優しく笑ってくれたが、アキトと俺は顔を見合わせてからすぐに首を振った。ごまかせるようにそう言ってくれたんだと分かってはいるが、さすがに甘える事はできないな。
アキトも俺もただすっかり忘れてただけだ。自分たちから会いに来たのになと二人で視線を合わせて反省していたら、ウォルターが明るく笑いながら口を開いた。
「まあ、そんなに気にしなくて良いだろ」
「そうそう。今から話してくれたら良いだけじゃないか?」
笑いまじりに同意したのは、嬉しそうにチピの皮を剝いているファリーマだ。それ、気に入ったんだな。
「うん、そうだよ!…それで、何の話だったの?」
ルベーユの実を片手に持ちながら、ブレイズは興味津々で尋ねてくる。
本当にこいつらは良いやつらだな。
「アキトと俺はしばらくトライプールを離れる事になったからその報告にな」
「なんだ、そうなのか?」
ルセフ以外の三人は律儀にその連絡のために来たのかと納得したみたいだが、ルセフだけは不思議そうに何度か目を瞬いた。そのまま少し考えこんだかと思ったら、慎重に俺達の表情を観察しながら低い声で尋ねてきた。
「なあ、ハル、アキト。普通の依頼でトライプールから離れるだけなら、わざわざ直接言いには来ないだろ?一体どこに、何をしに行くんだ?依頼か?任務か?」
問題のある依頼を押し付けられたのか?それとも問題のある任務なのか?きっとそう聞きたいんだろうな。自分に出来る事なら手助けするぞと言いたげな視線がくすぐったくて、俺は思わず苦笑を洩らした。
「あー…心配してくれてる所悪いんだが…そんなに深刻な理由じゃないんだ」
「…本当か?」
まだどこか疑わし気なルセフに、俺はコクリと頷いた。
「行先は辺境領でな、俺の実家に顔を出しに行くんだよ」
一瞬の沈黙の後、最初に我に返ったのはルセフだった。
「そうか!それは大事な用だな。ちなみにそれは…あちらから誘われたのか?」
「ああ、だいぶ前から早く大事な伴侶候補を連れてこいとは言われてたんだが…あの両親だからなぁ…」
「うん、気持ちは分かる…」
「アキト、よく会うって決意したな」
ルセフとウォルターは納得顔で頷いているが、ブレイズとファリーマは不思議そうに首を傾げている。
「え、なんだ、ハルの両親ってそんなにすごい人なのか?」
「伴侶候補の顔合わせって普通じゃない?」
「あー…そうか…ブレイズとファリーマはハルの素性も両親の事も知らなかったのか…これはもしかして、ハル、まずかったか?」
少し心配そうに尋ねてくるルセフに、俺はいいやとあっさりと首を振って答えた。他の奴らが普通にいる酒場とかなら問題だが、ここでなら何の問題も無い。
「ここには防音結界がある。それにブレイズとファリーマの事も信頼してるから、何も問題はないさ。俺から話すよ」
「そうか、助かる」
「ん?ハルさんの素性って…?」
不思議そうに首を傾げたブレイズに、俺はにっこりと笑って答えた。
「改めて自己紹介すると俺の本名はハロルド・ウェルマールと言うんだ」
「ハロルド…?」
「ウェルマール…?」
器用にも一つの名前を二人で分けて繰り返した二人の反応に、アキトは楽し気に笑みをこぼしている。今日も可愛い笑顔だな。
「…って…トライプール騎士団の!?」
「ああ」
「あ…あー…毒で寝てたってそういう事か…」
なるほど、ファリーマはハルとハロルドが繋がってなかっただけで、騎士団員が毒で眠っている話しは知ってたのか。それにブレイズも、ハロルドが騎士団員だとは知っていたんだな。
明らかに呆れた目でルセフが俺を見ているんだけどな。これは礼の気持ちだから受け取って欲しいと視線だけで訴えれば、すっと視線を反らされた。
「うわー珍しい果物ばっかり」
まじまじと果物の山を見つめていたウォルターが、感嘆の声をあげる。
「そんなに無造作に積んだら駄目だろうってものばかりだな」
ルセフは呆れ顔のままだが、とりあえず受け取ってはくれそうだ。
「あー俺これ好きー!」
ブレイズが指差したのは、一番端にさっき俺が付け足した酸味のある果実だ。
「うわ。一回ぐらいは食べてみたいと思ってたのも混ざってるな」
魔法馬鹿のファリーマがそっと手に取ったのは、魔力を込めると実をつける珍しい植物の果実だ。ぶれないな。
嬉しそうなみんなの声に食べて食べてと明るく勧めたアキトは、次の瞬間ふうとひとつ息を吐いた。
「うーん、何のためにここに来たのか、すっかり忘れてたよ…」
「ね、俺も綺麗に忘れてたよ」
苦笑しながら同意を返せば、アキトはすこしだけ嬉しそうに笑ってくれた。
「そうなのか?俺は食事中だから話題を避けてるんだと思ってたんだが…」
ルセフは摘まんだ果物を口に放り込みながら優しく笑ってくれたが、アキトと俺は顔を見合わせてからすぐに首を振った。ごまかせるようにそう言ってくれたんだと分かってはいるが、さすがに甘える事はできないな。
アキトも俺もただすっかり忘れてただけだ。自分たちから会いに来たのになと二人で視線を合わせて反省していたら、ウォルターが明るく笑いながら口を開いた。
「まあ、そんなに気にしなくて良いだろ」
「そうそう。今から話してくれたら良いだけじゃないか?」
笑いまじりに同意したのは、嬉しそうにチピの皮を剝いているファリーマだ。それ、気に入ったんだな。
「うん、そうだよ!…それで、何の話だったの?」
ルベーユの実を片手に持ちながら、ブレイズは興味津々で尋ねてくる。
本当にこいつらは良いやつらだな。
「アキトと俺はしばらくトライプールを離れる事になったからその報告にな」
「なんだ、そうなのか?」
ルセフ以外の三人は律儀にその連絡のために来たのかと納得したみたいだが、ルセフだけは不思議そうに何度か目を瞬いた。そのまま少し考えこんだかと思ったら、慎重に俺達の表情を観察しながら低い声で尋ねてきた。
「なあ、ハル、アキト。普通の依頼でトライプールから離れるだけなら、わざわざ直接言いには来ないだろ?一体どこに、何をしに行くんだ?依頼か?任務か?」
問題のある依頼を押し付けられたのか?それとも問題のある任務なのか?きっとそう聞きたいんだろうな。自分に出来る事なら手助けするぞと言いたげな視線がくすぐったくて、俺は思わず苦笑を洩らした。
「あー…心配してくれてる所悪いんだが…そんなに深刻な理由じゃないんだ」
「…本当か?」
まだどこか疑わし気なルセフに、俺はコクリと頷いた。
「行先は辺境領でな、俺の実家に顔を出しに行くんだよ」
一瞬の沈黙の後、最初に我に返ったのはルセフだった。
「そうか!それは大事な用だな。ちなみにそれは…あちらから誘われたのか?」
「ああ、だいぶ前から早く大事な伴侶候補を連れてこいとは言われてたんだが…あの両親だからなぁ…」
「うん、気持ちは分かる…」
「アキト、よく会うって決意したな」
ルセフとウォルターは納得顔で頷いているが、ブレイズとファリーマは不思議そうに首を傾げている。
「え、なんだ、ハルの両親ってそんなにすごい人なのか?」
「伴侶候補の顔合わせって普通じゃない?」
「あー…そうか…ブレイズとファリーマはハルの素性も両親の事も知らなかったのか…これはもしかして、ハル、まずかったか?」
少し心配そうに尋ねてくるルセフに、俺はいいやとあっさりと首を振って答えた。他の奴らが普通にいる酒場とかなら問題だが、ここでなら何の問題も無い。
「ここには防音結界がある。それにブレイズとファリーマの事も信頼してるから、何も問題はないさ。俺から話すよ」
「そうか、助かる」
「ん?ハルさんの素性って…?」
不思議そうに首を傾げたブレイズに、俺はにっこりと笑って答えた。
「改めて自己紹介すると俺の本名はハロルド・ウェルマールと言うんだ」
「ハロルド…?」
「ウェルマール…?」
器用にも一つの名前を二人で分けて繰り返した二人の反応に、アキトは楽し気に笑みをこぼしている。今日も可愛い笑顔だな。
「…って…トライプール騎士団の!?」
「ああ」
「あ…あー…毒で寝てたってそういう事か…」
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