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765.【ハル視点】再会の約束
俺はそんな皆の反応を、視線だけを動かしてしっかり確認していった。
こういう一般的でない情報については、知っている人と知らない人をきちんと理解するのが大事だからな。そうしていないと、いざという時に俺が情報を洩らしてしまう事になるかもしれない。
ルセフは知っているようだし領主様からこのパーティーに直接依頼が出る事もあるかもしれない。そうして四人全員が領主城にある魔法陣について知る日が来るかもしれない。
だが、それは現時点ではまだただの可能性の話しだ。とりあえず今は、ルセフ以外には魔法陣の話しをしないようにしないとな
「なあ、予定って言ってたけど、それはもう完全に決まってる計画…なんだよな?」
すこし不安そうにアキトと俺を交互に見つめながら尋ねてきたのは、ファリーマだ。アキトはちらりと俺を見ると、すぐに明るい笑顔で答えた。
「はい!ちゃんと直接トライプール領主様から同行の許可を貰ったので、しっかり確定した予定ですよ!」
「えー!?アキト、領主様に直接会ったの?」
大きく目を見開いて驚愕を表すブレイズに、アキトはコクコクと何度も頷きを返す。
「うん、ハルが領主城に呼び出されてね、俺も連れてきてって言われてたから…直接お会いしたよ」
「へー俺も見かけた事ぐらいはあるけど、直接会って話した事は無いんだー」
いいなー俺も会ってみたいなーとつぶやいたブレイズは、好奇心に目をキラキラさせながらアキトを見つめている。ルセフとウォルター、ファリーマの三人は微笑ましげにブレイズとアキトのやりとりを見つめている。
「ね、アキトから見てトライプール領主様って…どんな人?」
「え、えっとねー…すごく優しい人だったよ!」
「へー優秀とか頭が切れるとかはよく聞くけど…」
ブレイズはさらりと領主様の評判を口にすると、でも優しいって感想は初めて聞いたかもしれないとアキトに視線を戻した。あー、まあそうだよな。ああ見えてあの人は領地経営については王様さえ一目置くような人だから。
「そうなんだ?誘ってくれたのは領主様の方からだったんだけどね、ハルと二人でゆっくり相談できるようにってわざわざ席を外してくれんだ。しかもね、二人で相談して良いからねとか、時間をあげるよとか、そういう恩を着せるような事は一切言わなかった」
「そうなの?」
「うん。俺達が気にしないようにって、むしろ別の用事を思い出したようなふりをしてまで席を外してくれたんだよ」
一生懸命になって身振り手振りまで加えて説明するアキトに、ブレイズだけでなく他の三人もそうなのかと感心顔だ。
「仕事も出来るし気づかいも出来るのか…」
ファリーマはどこか嬉しそうな笑顔でぽそりとそう呟いた。
「それはすごい人だね」
「ああ、拠点にしている街の領主様が立派な人だっていうのは…なんというか良いもんだな」
穏やかに言い合うブレイズとウォルターを、ルセフは苦笑しながら見つめている。防音結界のかかった部屋の中だから良いが、頼むから外ではそんな話しをしないでくれよと思っているんだろうな。
それにしても、アキトはすこし領主様の事を気に入りすぎじゃないかな。すこし面白くない気持ちで、俺はアキトの手をきゅっと握ってからくいっと引っ張った。
「ん?」
どうしたのと言いたそうな不思議そうな顔で、アキトは俺を見あげてくる。
「アキトはさ、本当に領主様の事好きになったんだね…」
ああ、駄目だ。こんな些細な事で妬くなんて、アキトに格好悪いと呆れられるかもしれない。そう思うのに、どうしても我慢ができなかった。
「そういう意味じゃないって分かってても、目の前で他の人を褒めちぎられたら…ちょっとぐらいは妬くんだからね?」
ルセフ達の前だって事も忘れて拗ねながら文句を言えば、アキトは繋いだままだった手をぐいっと引っ張った。怒らせたかと思うよりも先に、思いっきりアキトが俺に抱き着いてきた。
慌てて顔を覗き込めば、アキトは幸せそうに蕩けるような笑みを浮かべた。
「ごめんね、ハル。領主様はハルの親戚って思ってるから…どうしてもひいき目で見ちゃうんだ」
アキトはそこで恥ずかしそうに言葉を切った。
「誰を褒めたとしても、俺はいつでもハルが一番だからね!!」
「アキト…っ!」
たまらない気持ちになって腕の中のアキトの身体をぎゅっと抱きしめ返した瞬間、ウォルターの呆れたような声が聞こえてきた。
「これ俺達何を見せられてるんだ?」
「嫉妬からの仲直りだろうな」
冷静に分析してそう答えているのは、ファリーマだ。
「仲が良くて何よりだよねー」
ブレイズは嬉しそうに、伴侶候補なんだから別にこれぐらい良いじゃないと笑っている。
「ああ、そうか。ウェルマール家はトライプール家とは遠縁にあたるのか」
ルセフはといえば、ずっと俺と領主様の繋がりについて考えていたらしい。俺はそんな事を考えながら、腕の中のアキトを抱きしめ続けていた。
「あー…皆、悪かったな」
「俺もごめんなさい」
我に返ったアキトと俺は、二人揃って頭を下げていた。ここはルセフ達パーティーの拠点なのに、嫉妬したとかハルが一番だからとか言い合ったり抱きしめ合ったりと、暴走をした自覚はある。
「いや気にすんな」
「ああ、別に抱き合うぐらいなら良いって」
「うん、むしろ仲良くて良い事だよねー」
「ほら誰も気にしてないから、二人とも顔あげてくれ」
ルセフの言葉に恐る恐る顔を上げれば、四人は優しい笑みで俺達を見守ってくれていた。
「ハル、アキト。二人の旅の安全を祈ってるよ」
ルセフは柔らかい笑顔と共に、そんな別れの言葉を贈ってくれた。
「最強夫婦が相手でもアキトなら問題は無いだろうよ」
笑顔でそう断言したのは、ウォルターだ。
「気をつけて行ってこいよ。あ、もし辺境領で変わった魔法を見かけたりしたら、絶対俺にも教えてくれよー」
楽し気に笑ったファリーマは、やっぱりどこまでも魔法馬鹿だった。
「アキト、ハルさん。思いっきり辺境領を楽しんできてね。それで帰ってきたら、また一緒にご飯食べよう!」
再会の言葉を口にしたブレイズはにっこりと嬉しそうに笑いながら、約束だよとアキトに向かって念を押している。
「うん!約束する!」
対するアキトも満面の笑みだ。アキトとブレイズの微笑ましいやりとりを見つめていると、胸がぽかぽかと温かくなってくる。
うん、アキトに誘われて報告に来たが、ここに来れて良かったな。しみじみとそう実感しながら、俺は皆の会話に耳を傾けていた。
こういう一般的でない情報については、知っている人と知らない人をきちんと理解するのが大事だからな。そうしていないと、いざという時に俺が情報を洩らしてしまう事になるかもしれない。
ルセフは知っているようだし領主様からこのパーティーに直接依頼が出る事もあるかもしれない。そうして四人全員が領主城にある魔法陣について知る日が来るかもしれない。
だが、それは現時点ではまだただの可能性の話しだ。とりあえず今は、ルセフ以外には魔法陣の話しをしないようにしないとな
「なあ、予定って言ってたけど、それはもう完全に決まってる計画…なんだよな?」
すこし不安そうにアキトと俺を交互に見つめながら尋ねてきたのは、ファリーマだ。アキトはちらりと俺を見ると、すぐに明るい笑顔で答えた。
「はい!ちゃんと直接トライプール領主様から同行の許可を貰ったので、しっかり確定した予定ですよ!」
「えー!?アキト、領主様に直接会ったの?」
大きく目を見開いて驚愕を表すブレイズに、アキトはコクコクと何度も頷きを返す。
「うん、ハルが領主城に呼び出されてね、俺も連れてきてって言われてたから…直接お会いしたよ」
「へー俺も見かけた事ぐらいはあるけど、直接会って話した事は無いんだー」
いいなー俺も会ってみたいなーとつぶやいたブレイズは、好奇心に目をキラキラさせながらアキトを見つめている。ルセフとウォルター、ファリーマの三人は微笑ましげにブレイズとアキトのやりとりを見つめている。
「ね、アキトから見てトライプール領主様って…どんな人?」
「え、えっとねー…すごく優しい人だったよ!」
「へー優秀とか頭が切れるとかはよく聞くけど…」
ブレイズはさらりと領主様の評判を口にすると、でも優しいって感想は初めて聞いたかもしれないとアキトに視線を戻した。あー、まあそうだよな。ああ見えてあの人は領地経営については王様さえ一目置くような人だから。
「そうなんだ?誘ってくれたのは領主様の方からだったんだけどね、ハルと二人でゆっくり相談できるようにってわざわざ席を外してくれんだ。しかもね、二人で相談して良いからねとか、時間をあげるよとか、そういう恩を着せるような事は一切言わなかった」
「そうなの?」
「うん。俺達が気にしないようにって、むしろ別の用事を思い出したようなふりをしてまで席を外してくれたんだよ」
一生懸命になって身振り手振りまで加えて説明するアキトに、ブレイズだけでなく他の三人もそうなのかと感心顔だ。
「仕事も出来るし気づかいも出来るのか…」
ファリーマはどこか嬉しそうな笑顔でぽそりとそう呟いた。
「それはすごい人だね」
「ああ、拠点にしている街の領主様が立派な人だっていうのは…なんというか良いもんだな」
穏やかに言い合うブレイズとウォルターを、ルセフは苦笑しながら見つめている。防音結界のかかった部屋の中だから良いが、頼むから外ではそんな話しをしないでくれよと思っているんだろうな。
それにしても、アキトはすこし領主様の事を気に入りすぎじゃないかな。すこし面白くない気持ちで、俺はアキトの手をきゅっと握ってからくいっと引っ張った。
「ん?」
どうしたのと言いたそうな不思議そうな顔で、アキトは俺を見あげてくる。
「アキトはさ、本当に領主様の事好きになったんだね…」
ああ、駄目だ。こんな些細な事で妬くなんて、アキトに格好悪いと呆れられるかもしれない。そう思うのに、どうしても我慢ができなかった。
「そういう意味じゃないって分かってても、目の前で他の人を褒めちぎられたら…ちょっとぐらいは妬くんだからね?」
ルセフ達の前だって事も忘れて拗ねながら文句を言えば、アキトは繋いだままだった手をぐいっと引っ張った。怒らせたかと思うよりも先に、思いっきりアキトが俺に抱き着いてきた。
慌てて顔を覗き込めば、アキトは幸せそうに蕩けるような笑みを浮かべた。
「ごめんね、ハル。領主様はハルの親戚って思ってるから…どうしてもひいき目で見ちゃうんだ」
アキトはそこで恥ずかしそうに言葉を切った。
「誰を褒めたとしても、俺はいつでもハルが一番だからね!!」
「アキト…っ!」
たまらない気持ちになって腕の中のアキトの身体をぎゅっと抱きしめ返した瞬間、ウォルターの呆れたような声が聞こえてきた。
「これ俺達何を見せられてるんだ?」
「嫉妬からの仲直りだろうな」
冷静に分析してそう答えているのは、ファリーマだ。
「仲が良くて何よりだよねー」
ブレイズは嬉しそうに、伴侶候補なんだから別にこれぐらい良いじゃないと笑っている。
「ああ、そうか。ウェルマール家はトライプール家とは遠縁にあたるのか」
ルセフはといえば、ずっと俺と領主様の繋がりについて考えていたらしい。俺はそんな事を考えながら、腕の中のアキトを抱きしめ続けていた。
「あー…皆、悪かったな」
「俺もごめんなさい」
我に返ったアキトと俺は、二人揃って頭を下げていた。ここはルセフ達パーティーの拠点なのに、嫉妬したとかハルが一番だからとか言い合ったり抱きしめ合ったりと、暴走をした自覚はある。
「いや気にすんな」
「ああ、別に抱き合うぐらいなら良いって」
「うん、むしろ仲良くて良い事だよねー」
「ほら誰も気にしてないから、二人とも顔あげてくれ」
ルセフの言葉に恐る恐る顔を上げれば、四人は優しい笑みで俺達を見守ってくれていた。
「ハル、アキト。二人の旅の安全を祈ってるよ」
ルセフは柔らかい笑顔と共に、そんな別れの言葉を贈ってくれた。
「最強夫婦が相手でもアキトなら問題は無いだろうよ」
笑顔でそう断言したのは、ウォルターだ。
「気をつけて行ってこいよ。あ、もし辺境領で変わった魔法を見かけたりしたら、絶対俺にも教えてくれよー」
楽し気に笑ったファリーマは、やっぱりどこまでも魔法馬鹿だった。
「アキト、ハルさん。思いっきり辺境領を楽しんできてね。それで帰ってきたら、また一緒にご飯食べよう!」
再会の言葉を口にしたブレイズはにっこりと嬉しそうに笑いながら、約束だよとアキトに向かって念を押している。
「うん!約束する!」
対するアキトも満面の笑みだ。アキトとブレイズの微笑ましいやりとりを見つめていると、胸がぽかぽかと温かくなってくる。
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