生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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769.お昼寝タイム

「あー…なるほど。それじゃあ今日は色々買って回ってたのか」
「ああ、だいたいの物は揃えられたと思う」
「そうか…二人とも依頼の時とは違う疲れ方をしてるだろうから、部屋で待ってたらどうだ?」

 レーブンさんは俺とハルを心配そうに見つめながら、そう提案してくれた。

 きちんと時間を決めた約束をしてるわけじゃないから、いつローガンさんが来るかは分からないからなとレーブンさんは続けた。

「アキト、レーブンの言葉に甘えようか」
「いいんですか?」
「ああ、ここでずっと待たせるわけにも行かないからな」

 今は人がいないとはいえ、たくさんの人が利用する黒鷹亭の受付カウンターだもんね。

「ローガンが来たらちゃんと呼びに行くから、安心してゆっくりしててくれ」
「ありがとう、レーブン」
「レーブンさん、ありがとうございます」
「おう、どういたしまして」

 優しい笑みを浮かべたレーブンさんに見送られて、俺達は黒鷹亭の自室へと戻った。



 別に疲れてるなとは思ってなかったんだけど、部屋に入って荷物を下ろすと急にどっと疲れがやってきた。領主様に会うからって緊張してたし、その後は買い物に挨拶にってバタバタしてたからな。

 依頼の時とは違う疲れ方ってレーブンさんが言ってたけど、まさにそれだと思う。

「アキト、疲れた?」
「うん、ちょっと疲れたかも。ハルも?」
「ああ、俺も疲れたな」

 ささっと浄化魔法でハルと自分の身体を清めてから、俺はごろんとベッドに寝転がった。黒鷹亭自慢のふかふかのベッドが優しく俺の身体を受け止めてくれる。

「ハルも一緒にどう?」

 悪戯っぽい笑みを浮かべて誘えば、ハルは少しだけ考えてからそうだなと隣に寝転がってくれた。

「でもこうして寝転がると…なんだか急に眠くなってくるな」

 ハルは小さなあくびをしながら、ぽそりとそう呟いた。

「うん、わかる…」

 俺もふわーとあくびをしてから同意を返した。

「寝ちゃだめっておもうと…よけいねむい…」

 ローガンさんがいつ来るか分からないんだから、起きてないとって思うんだけどどんどん瞼が閉じてきてしまう。

 これベッドに寝転がったの失敗だったな。しかもハルまで誘ってしまった。このまま二人とも眠ってしまって、レーブンさんの呼びかけに気づかなかったらどうしよう。

 もしそうなったら、確実に俺のせいだよね。

 既に眠さでぼんやりとした頭の片隅でそんな事を考えながらも、眠気に抗えなかった俺はそのまま目を閉じた。



「アキト」

 耳元から聞こえてくるハルの優しい声で、俺は目を覚ました。

「んー…は…る…って!俺寝てた!?」

 飛び起きた俺にハルは柔らかく笑いながら、そっと窓の外を指差した。

「まだそんなに経ってないよ、ほら」

 慌てて窓の外へと視線を向ければ、確かにまだ夕方と夜の間ぐらいの時間帯みたいだ。

「はー良かった。ぐっすり寝すぎて、すっごく長い間寝ちゃったかと思った」
「もうすこし寝かせておいてあげたかったんだけど…たぶんそろそろ…」

 ハルがそう言った瞬間、部屋のドアがノックされる音が聞こえてきた。

 うーん、やっぱり何度聞いても、この音にはちょっと違和感。

 黒鷹亭の部屋は防音結界が完璧で、鍵をかけてしまえば部屋の外の音は何も聞こえない。それなのに、ノックの音だけはしっかり聞こえるんだよね。

 あまりに不思議で聞いてみた事があるんだけど、ハルいわくレーブンさんが防音結界と対になっている無効化の魔道具を持ってるからなんだって。つまり俺が他の部屋のドアを叩いても中の人には何も聞こえないけど、レーブンさんのノックと声だけは聞こえるらしい。

 面白いなー異世界。しみじみとそう考えている間に、ハルはさっと立ち上がってドアを開けてくれていた。あ、俺も行かないと。

「アキト、ハル。ローガンが来たぞ」
「分かった、知らせてくれてありがとう」
「ありがとうございます」
「ああ、気にすんな」

 部屋を出て前を歩く背中についていけば、何故かそのままレーブンさんの私室のドアの前へと案内されてしまった。

 あれ、受付は良いのかなと思わず受付カウンターに視線を向ければ、そこには疲れた顔のルタスさんの姿があった。まだ装備を身につけたままだから、多分依頼帰りなんだろうな。

「それじゃあ、ルタス、あとは頼んだぞ」
「おう、まかせてくれー」

 俺とハルに気づくとルタスさんはひらひらと手を振りながら、レーブンさんに向かってそう答えた。

「そんなに時間はかからないと思うが…」
「分かってるって。話しをする間ここにいて手伝うだけで、美味しい料理と酒を出してくれるってんだから、文句なんてないよ!」

 むしろごゆっくりーと笑顔のルタスさんに見送られて、俺達はレーブンさんの部屋の中へと入っていった。
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