生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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774.ハルのプレゼント

 テーブルの上で謎の存在感を放つ大き目の包みを、思わずじっと見つめて固まってしまった。こんなに大きな包みのプレゼント…?中には一体何が入ってるんだろう。想像もつかないなと呆然と見つめていると、ハルが控え目に声をかけてきた。

「アキト、開けてみて」

 促されるままにゴソゴソと包みを開けてみれば、中には上下セットの服が丁寧に折りたたまれて入っていた。真っ白な生地には、紫と金色の糸で刺繍が施されている。

 こういうものに特に詳しくない俺でも、ぱっと見て分かるぐらいには高級そうな作りの服だった。

「えっと、これって…」

 たぶんこれは俺の世界でいう所の、スーツみたいなもの――かな。普段着とは全く違っている凝った作りみたいだし、なんだか改まった場所に来ていくための服って感じがする。

 本当に俺がこれを着るの?って言いたいぐらい高級そうな布を使ってるし、刺繍もうっかり見惚れてしまうぐらい細やかに入れられている。華やかな作りの服ではあるけど、派手すぎて俺には着れないとまでは思わない絶妙なラインだ。

 本当にこの刺繍すごいなとまじまじと観察していたら、ハルは何か誤解したのか慌てて口を開いた。

「ごめん、ちょっと重かったかな?」
「え…いや…」
「最初からアキトが両親に会う時のためにって用意してたわけじゃないんだ。これは本当だよ。ただこういう服は一着ぐらいはあっても困らないものだし、いざ必要になった時に急いで探すとなるとろくなものが見つからないから、時間のあるうちに作ってもらおうと…」
「ハル!」

 どこまでも続きそうな言葉に慌てて名前を呼べば、ハルはしょんぼりと肩を落とした。

「はい…」

 なんで俺よりも長身で格好良い年上の男性なのに、こういう時は叱られるのを待ってる子犬みたいに見えるんだろうな。こんなハルは初めてみたけど、可愛くてたまらない。

「これって俺のためにわざわざ用意してくれたのかなって思っただけで、怒ってないよ」
「…本当?」

 本当だよとコクコク頷けば、ハルはやっと少しだけ視線を上げてくれた。でもまだ顔に笑顔は無いな。まだ何かひっかかってる?

 じっと目を見つめて続きを待てば、ハルは恥ずかしそうに続けた。

「…俺がアキトに似合うだろうなと思って選んだ布と服の形に、俺の目と髪の色の糸で刺繍までしてもらったのに?」

 あ、やっぱりこれはハルの目と髪の色を意識しての金と紫の刺繍なのか。そんなところにハルの独占欲を感じて、俺はふふと笑みを浮かべた。

「うん、ハルの気持ちがこもってて、俺は嬉しいよ」
「…アキトはやっぱり…男前、だね」
「えーと…ありがとう?」

 急に褒められても困るよね。しかもこんな男前から男前って褒められても。そう思いながらもとりあえずお礼を言えば、ハルはやっと笑みを返してくれた。

 それにしても見れば見るほど綺麗な服だ。俺に着こなせるかなと心配になるけど、ハルが俺のためにって選んでくれたなら大丈夫かな。俺よりよっぽどセンスがある人だし。

「ハルの服は?」
「俺のは黒い布にツヤのある黒と茶色で刺繍をしたものにしたよ」

 これと対になるように作ってあるんだと、ハルは恥ずかしそうに続けた。勝手に俺の色を意識した服を作ってごめんねとまた謝られたけど、むしろここで俺の色を使ってない服にしてたら拗ねたかもしれない。

 俺だってハルへの独占欲ぐらいあるんだからね。

 そう告げたらハルは幸せそうに笑ってから、俺の顔中にキスを降らせてきた。素直な気持ちを言っただけなのに、そこまで喜ばれるとなんだか申し訳ないな。

「あ、そういえばハル、ひとつだけ聞きたいんだけど」
「ん?何?」
「これって辺境領に移動するときから着ていくの?」

 あれだけ散々危険だって皆から言われまくった場所に、こんなに綺麗な服を着ていくのはかなり不安だ。

 魔物とかが出たら着慣れた服じゃないと動き難いだろうなと思うし、それにもしこの服が汚れたり破れたりなんて事になったらつらすぎる。もしそんな事になったら、俺は折角ハルにもらったのにーって泣くかもしれない。

「いや今回は顔合わせが目的だから、玄関まで家族が出迎えには来ないんだ。だからまずは執事に声をかけてから、別室で着替える事になると思うよ」

 さすがに辺境領の危険性を考えて、着飾って来いとは言われないから安心してねとハルは続けた。

「うちの家族は形式とかあまり気にしないから、本当は別に着替えたりしなくても良いんだけどね」

 ハルはそこで少し申し訳なさそうに苦笑してから続けた。

「…でも、アキトは俺のだって主張したいから着て欲しいな」
「着るよ!絶対着るよ!」

 俺はハイッと元気に手をあげて答えた。ハルはびっくり顔で俺を見てるけど構わない。

「汚れたり破れたりしたら嫌だなーって思っただけだよ。せっかくハルに貰ったんだから大事にしたい…」

 ハルは幸せそうに目を細めてから、明日出発じゃなかったら思う存分可愛がれたのになーなんて事をぼそりと呟いた。

 うん、俺もそう思うよ。このままハルと抱き合えたら良かったのにね。
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