783 / 1,561
782.【ハル視点】忙しい一日
ルタスとワルトに譲ってもらった席で、俺達はレーブンが作ってくれた朝食を堪能した。毎日日替わりで味付けや具材の変わるスープに、美味しいパン、果物やサラダまで、今日もどれも文句なしに美味かった。
食事を終えた後は、自分たちの部屋に戻って辺境領行きのための荷物の準備だ。
普段の依頼でもよく使っているテントや採取用の手袋、それに装備品に問題が無いかをきっちり点検しながら、ひとつずつ魔導収納鞄の中へとしまいこんでいく。
俺の我儘で、アキトの持っている剣や投げナイフの手入れもさせてもらった。
最近はアキトは基本的に魔法ばかり使っているから、剣はほとんどただの飾りになっている。それでも辺境領に行くなら魔法だけじゃない攻撃手段も持っておいて欲しいんだとそう主張したら、アキトはお願いしますと快く任せてくれた。
武器も防具も採取関係の物も、問題なく荷造りはできただろう。
「アキト、これも手分けして持っていこう」
カチャカチャと音を立てながらテーブルの上に並べていくのは、色々な種類のポーションだった。傷を回復するためのポーションから解毒用のポーションまで、ずらりと並んだ瓶の量に、アキトはぱちぱちとまばたきを繰り返していた。
こうやってみると、確かにすごい量に見えるよな。気持ちは分かるんだが、ポーションだけはきちんと揃えておきたい。
俺がまだ幽霊だった頃、アキトが大怪我をしたあの日の後悔を繰り返したくは無いからな。
「はい、これがアキトの分だよ。右から順番に下級、中級、最高級の回復薬だから注意してね」
順番にポーションの瓶を指差しながら説明をすれば、アキトは真剣な表情で観察を始めた。正直に言えば最高級の回復薬さえ覚えていてくれれば、どんな怪我でも治す事はできる。でもそれを言ったら、呆れられそうだよなと俺は口をつぐんだ。
「すごい…綺麗だね」
「アキト、何かあったら躊躇せずに使ってね?」
「え」
「値段を考えてとか、綺麗だからもったいないとか、考えずに使って欲しい」
本気で危険な時にアキトがそんな事を考えるとは思わないけれど、それでも念のために言っておきたかった。口うるさいと言われても良いと覚悟の上での言葉に、アキトは真剣な表情で答えてくれた。
「さすがにそれはしないよ。危ないと思ったらちゃんと使う」
「うん、そうして」
「後は…何かあったっけ?魔物避けもさっきもらったし」
普段なら俺がまとめて持っている事が多い滅多に使わないような物も、今回はきちんと等分にして分けなおしている。もしもの時に一人だけが物資を持っていると、もう一人の生存率が下がるからな。
辺境領ではそれが常識――というより、これも一種の祈りのようなものだ。
「そうしておいた方がいざという時に仲間や伴侶の心配をせずに、全力が出せるっていう先人の知恵だよ」
「はーそうなんだ」
俺の世界ではそういうのをゲン担ぎって言うんだよ、とアキトは教えてくれた。なるほどゲン担ぎか。覚えておこう。
俺の魔道具の点検が終わった所で、今度は二人で顔を寄せ合い買い忘れた物が無いかを確認していく。
「おそらく必要は無いとは思うんだが…携帯食料はもうすこし欲しいな」
「そうなんだ。俺は果実水がかなり減ってたよ」
果実水はアキトのお気に入りだからと色んな所で色んな味を買い足しているんだが、それでもそろそろなくなりそうなのか。俺の方の果実水もそう言えば減ってきてたな。
「うん、果実水は必要だね」
「携帯食料は、前に行った雑貨屋さんかな?」
買い足したいものをいくつか紙に書き出して、俺達はまた街へと飛び出した。
「ただいまー」
「アキト、おかえり」
「ハルもおかえり」
「ふふ、ただいま」
いつものやりとりをした俺達は、荷物を下ろすとどちらともなくふうーと大きく息を吐いた。ため息というよりも達成感の息だな。
今日はあれから、買い忘れた物を順番に買って回った。途中で屋台で買い食いをしたりしながら、俺の家族への手土産を二人で選んだりもした。
買った物もその場で全て等分に分けておいたから、これで準備は完了だな。時間が無かったわりにはしっかりと用意ができたな。
ああ、でももう一つだけ、忘れてはいけない事があったか。
椅子に座ったままぼんやりとしているアキトに、俺は意を決して声をかけた。
「アキト」
「ん?」
「えっと…アキトにプレゼントしたいものがあるんだけど…」
「えっと…プレゼント?」
何で急に?と言いたげに首を傾げたアキトの目の前で、俺はプレゼントの包みを取り出すとそっとテーブルの上に載せた。
「これを、アキトに貰って欲しいんだ」
食事を終えた後は、自分たちの部屋に戻って辺境領行きのための荷物の準備だ。
普段の依頼でもよく使っているテントや採取用の手袋、それに装備品に問題が無いかをきっちり点検しながら、ひとつずつ魔導収納鞄の中へとしまいこんでいく。
俺の我儘で、アキトの持っている剣や投げナイフの手入れもさせてもらった。
最近はアキトは基本的に魔法ばかり使っているから、剣はほとんどただの飾りになっている。それでも辺境領に行くなら魔法だけじゃない攻撃手段も持っておいて欲しいんだとそう主張したら、アキトはお願いしますと快く任せてくれた。
武器も防具も採取関係の物も、問題なく荷造りはできただろう。
「アキト、これも手分けして持っていこう」
カチャカチャと音を立てながらテーブルの上に並べていくのは、色々な種類のポーションだった。傷を回復するためのポーションから解毒用のポーションまで、ずらりと並んだ瓶の量に、アキトはぱちぱちとまばたきを繰り返していた。
こうやってみると、確かにすごい量に見えるよな。気持ちは分かるんだが、ポーションだけはきちんと揃えておきたい。
俺がまだ幽霊だった頃、アキトが大怪我をしたあの日の後悔を繰り返したくは無いからな。
「はい、これがアキトの分だよ。右から順番に下級、中級、最高級の回復薬だから注意してね」
順番にポーションの瓶を指差しながら説明をすれば、アキトは真剣な表情で観察を始めた。正直に言えば最高級の回復薬さえ覚えていてくれれば、どんな怪我でも治す事はできる。でもそれを言ったら、呆れられそうだよなと俺は口をつぐんだ。
「すごい…綺麗だね」
「アキト、何かあったら躊躇せずに使ってね?」
「え」
「値段を考えてとか、綺麗だからもったいないとか、考えずに使って欲しい」
本気で危険な時にアキトがそんな事を考えるとは思わないけれど、それでも念のために言っておきたかった。口うるさいと言われても良いと覚悟の上での言葉に、アキトは真剣な表情で答えてくれた。
「さすがにそれはしないよ。危ないと思ったらちゃんと使う」
「うん、そうして」
「後は…何かあったっけ?魔物避けもさっきもらったし」
普段なら俺がまとめて持っている事が多い滅多に使わないような物も、今回はきちんと等分にして分けなおしている。もしもの時に一人だけが物資を持っていると、もう一人の生存率が下がるからな。
辺境領ではそれが常識――というより、これも一種の祈りのようなものだ。
「そうしておいた方がいざという時に仲間や伴侶の心配をせずに、全力が出せるっていう先人の知恵だよ」
「はーそうなんだ」
俺の世界ではそういうのをゲン担ぎって言うんだよ、とアキトは教えてくれた。なるほどゲン担ぎか。覚えておこう。
俺の魔道具の点検が終わった所で、今度は二人で顔を寄せ合い買い忘れた物が無いかを確認していく。
「おそらく必要は無いとは思うんだが…携帯食料はもうすこし欲しいな」
「そうなんだ。俺は果実水がかなり減ってたよ」
果実水はアキトのお気に入りだからと色んな所で色んな味を買い足しているんだが、それでもそろそろなくなりそうなのか。俺の方の果実水もそう言えば減ってきてたな。
「うん、果実水は必要だね」
「携帯食料は、前に行った雑貨屋さんかな?」
買い足したいものをいくつか紙に書き出して、俺達はまた街へと飛び出した。
「ただいまー」
「アキト、おかえり」
「ハルもおかえり」
「ふふ、ただいま」
いつものやりとりをした俺達は、荷物を下ろすとどちらともなくふうーと大きく息を吐いた。ため息というよりも達成感の息だな。
今日はあれから、買い忘れた物を順番に買って回った。途中で屋台で買い食いをしたりしながら、俺の家族への手土産を二人で選んだりもした。
買った物もその場で全て等分に分けておいたから、これで準備は完了だな。時間が無かったわりにはしっかりと用意ができたな。
ああ、でももう一つだけ、忘れてはいけない事があったか。
椅子に座ったままぼんやりとしているアキトに、俺は意を決して声をかけた。
「アキト」
「ん?」
「えっと…アキトにプレゼントしたいものがあるんだけど…」
「えっと…プレゼント?」
何で急に?と言いたげに首を傾げたアキトの目の前で、俺はプレゼントの包みを取り出すとそっとテーブルの上に載せた。
「これを、アキトに貰って欲しいんだ」
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。