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789.優しい人達
取り繕う事をやめて素を隠さなくなった衛兵さんたちは、あっという間に俺達を取り囲んだ。ハルに向かってもっと頻繁に帰ってこいとか、いつの間に伴侶候補見つけたんだとかそんな事を言いながら、みんな楽しそうに笑っている。
うん、本当にハルを孫のように可愛がってくれてる人たちなんだな。ちょっと照れくさそうではあるけど、ハルも自然な態度ですこしの遠慮もなくぽんぽんと言い返している。
ちょっと珍しいハルの姿だ。
そんな楽しそうなやりとりの邪魔をしないようにと静かに見守っていたんだけど、不意に隣から声がかかった。
「やあ、こんにちは。ハルの伴侶候補くん」
振り返ればそこにいたのは見るからに強そうな白髪のおじいさんだった。筋肉質でがっしりとしたおじいさんは、俺には持ち上げる事すらできなさそうな大剣を無造作に背中に背負っている。
これで腕章が無かったら、凄腕の冒険者だと誤解するかもしれない見た目だった。それにしても迫力のある人だな。街中ですれ違ったら思わず目がいきそうだ。
そんな強そうなおじいさんだけど、不思議と怖いとは思わなかった。
俺より長身なのを気にしてるのか、視線が合うようにちょっとしゃがんでくれてるから――かな。視線も柔らかいし、きっと優しい人なんだろうなとすぐに分かった。
「こんにちは」
にっこりと笑顔で答えれば、おじいさんは嬉しそうにさらに笑みを深めた。
「名前はアキトくん…で良いのかな?さっきハルが名前を呼んでただろう?」
「はい。はじめまして。アキトと言います」
「ああ、はじめまして。わしはロイ、見ての通り前衛の大剣使いだ」
「あ、俺は後衛の魔法使いです」
「ほう、魔法使いなのか。それは戦闘面でもハルと相性が良さそうだな」
ロイさんは唐突にところで二人で一緒に魔物を倒した事はあるかい?と聞いてきた。
素直に冒険者としてパーティーを組んでるので何度も倒してますと答えれば、今度はそうかそうかとニコニコと笑って何度も頷いている。
この反応は一体なんだろう?と不思議に思った所で、すこし離れた所で話していたハルが人をかき分けながら戻ってきた。
「…アキトに何か?」
「いやいや、弟子の伴侶候補とちょっと話してただけだよ」
「弟子…?」
「ああ、俺の剣の師匠だよ」
さらりとそう言ったハルの言葉が予想外で、びっくりしてしまった。
え、師匠?ロイさんがハルの剣の師匠なの?それは、うん、強そうっていうか確実に強い人だ。あんなに強いハルの師匠で、今も辺境領で衛兵をしてるんだもんね。
「前に会った時よりもハルの肩の力が抜けたように見えたから、どんな伴侶候補なのかなと気になっただけだ」
「肩の力…抜けてますか?」
「ああ、前よりも自然体になってるな。それに前よりも強くなった」
あっさりとそう断言したロイさんを、ハルはびっくり顔で見返している。
「師匠に褒められた…」
「人聞きが悪いな。いつも褒めてただろう?」
「上手くなったとかは言われましたけど、強くなったは初めて言われましたよ」
そうだったか?と首を傾げるロイさんの前で、ハルは照れくさそうに笑みをこぼした。師匠に褒められて嬉しいけど、素直に喜ぶのも恥ずかしいって感じかな。
そういう反応も可愛いんだけど。
そんな事を考えていると、他の衛兵さんがひょこっと顔を覗き込んできた。
「アキトくんって、辺境領の出身じゃないよな?」
「はい、違いますね」
答えた瞬間、部屋の中がしんと静まり返った。え?と思う間もなく、質問してきた衛兵さんが続けた。
「じゃあ、もしかして…辺境領に来るのは初めてかい?」
「…はい」
異様な雰囲気にドキドキしながらも何とかそう答えた瞬間、わっと部屋の中が一気に賑やかになった。
「初めて来たなら、やっぱり木彫りの店だな!」
「は?最初は他の地域には無い、珍しい果物一択だろうが!果物屋に行くべきだ!」
斧を背負った前衛だろう人と弓を背負った後衛らしき人は、一歩も引かずに主張しながら睨みあっている。そんな空気に苦笑しながら、ハルが口を挟んだ。
「アキトがびっくりするからいきなり喧嘩するなよ」
「あ、すまん」
「つい…怖かったか?」
申し訳なさそうに謝ってくる二人に、俺は慌てて首を振った。
「目の前で殴り合いを始めたとかじゃなくて睨みあってただけですし、大丈夫ですよ。それにハルが慌ててないから、大丈夫だって分かってます」
ね?とハルを見上げてそう答えれば、衛兵さん達はハルは信用されてるんだなーとか、惚気られたーとか言いながら声をあげて笑いだした。
うん、本当にハルを孫のように可愛がってくれてる人たちなんだな。ちょっと照れくさそうではあるけど、ハルも自然な態度ですこしの遠慮もなくぽんぽんと言い返している。
ちょっと珍しいハルの姿だ。
そんな楽しそうなやりとりの邪魔をしないようにと静かに見守っていたんだけど、不意に隣から声がかかった。
「やあ、こんにちは。ハルの伴侶候補くん」
振り返ればそこにいたのは見るからに強そうな白髪のおじいさんだった。筋肉質でがっしりとしたおじいさんは、俺には持ち上げる事すらできなさそうな大剣を無造作に背中に背負っている。
これで腕章が無かったら、凄腕の冒険者だと誤解するかもしれない見た目だった。それにしても迫力のある人だな。街中ですれ違ったら思わず目がいきそうだ。
そんな強そうなおじいさんだけど、不思議と怖いとは思わなかった。
俺より長身なのを気にしてるのか、視線が合うようにちょっとしゃがんでくれてるから――かな。視線も柔らかいし、きっと優しい人なんだろうなとすぐに分かった。
「こんにちは」
にっこりと笑顔で答えれば、おじいさんは嬉しそうにさらに笑みを深めた。
「名前はアキトくん…で良いのかな?さっきハルが名前を呼んでただろう?」
「はい。はじめまして。アキトと言います」
「ああ、はじめまして。わしはロイ、見ての通り前衛の大剣使いだ」
「あ、俺は後衛の魔法使いです」
「ほう、魔法使いなのか。それは戦闘面でもハルと相性が良さそうだな」
ロイさんは唐突にところで二人で一緒に魔物を倒した事はあるかい?と聞いてきた。
素直に冒険者としてパーティーを組んでるので何度も倒してますと答えれば、今度はそうかそうかとニコニコと笑って何度も頷いている。
この反応は一体なんだろう?と不思議に思った所で、すこし離れた所で話していたハルが人をかき分けながら戻ってきた。
「…アキトに何か?」
「いやいや、弟子の伴侶候補とちょっと話してただけだよ」
「弟子…?」
「ああ、俺の剣の師匠だよ」
さらりとそう言ったハルの言葉が予想外で、びっくりしてしまった。
え、師匠?ロイさんがハルの剣の師匠なの?それは、うん、強そうっていうか確実に強い人だ。あんなに強いハルの師匠で、今も辺境領で衛兵をしてるんだもんね。
「前に会った時よりもハルの肩の力が抜けたように見えたから、どんな伴侶候補なのかなと気になっただけだ」
「肩の力…抜けてますか?」
「ああ、前よりも自然体になってるな。それに前よりも強くなった」
あっさりとそう断言したロイさんを、ハルはびっくり顔で見返している。
「師匠に褒められた…」
「人聞きが悪いな。いつも褒めてただろう?」
「上手くなったとかは言われましたけど、強くなったは初めて言われましたよ」
そうだったか?と首を傾げるロイさんの前で、ハルは照れくさそうに笑みをこぼした。師匠に褒められて嬉しいけど、素直に喜ぶのも恥ずかしいって感じかな。
そういう反応も可愛いんだけど。
そんな事を考えていると、他の衛兵さんがひょこっと顔を覗き込んできた。
「アキトくんって、辺境領の出身じゃないよな?」
「はい、違いますね」
答えた瞬間、部屋の中がしんと静まり返った。え?と思う間もなく、質問してきた衛兵さんが続けた。
「じゃあ、もしかして…辺境領に来るのは初めてかい?」
「…はい」
異様な雰囲気にドキドキしながらも何とかそう答えた瞬間、わっと部屋の中が一気に賑やかになった。
「初めて来たなら、やっぱり木彫りの店だな!」
「は?最初は他の地域には無い、珍しい果物一択だろうが!果物屋に行くべきだ!」
斧を背負った前衛だろう人と弓を背負った後衛らしき人は、一歩も引かずに主張しながら睨みあっている。そんな空気に苦笑しながら、ハルが口を挟んだ。
「アキトがびっくりするからいきなり喧嘩するなよ」
「あ、すまん」
「つい…怖かったか?」
申し訳なさそうに謝ってくる二人に、俺は慌てて首を振った。
「目の前で殴り合いを始めたとかじゃなくて睨みあってただけですし、大丈夫ですよ。それにハルが慌ててないから、大丈夫だって分かってます」
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