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797.【ハル視点】辺境領の良い所自慢
盛り上がりが落ち着くのを待って、俺は抱いた疑問を口にした。
「それにしても…あんた達が木彫りの店と果物屋をお勧めするとは思わなかったな――酒のうまい店とかならまだ納得できるんだが」
飲み比べもよくやってる二人だからなと考えながら尋ねれば、答えは違う方向から返ってきた。
「あれ、ハルは知らなかったか?こいつの息子、今は木彫りの店をやってるんだぞ」
「へえ、そうなのか?」
手先が器用だったのは覚えているが、木彫りの店をやってるとは思わなかったな。
「ちなみにこいつの娘は、果物屋をやってる」
そう説明したみんなの手は、さっき主張しあっていたミルシュとメンクの二人を指差している。
ああ、なるほど自分の家族の店を勧めたかったのか。それなら納得だと思った瞬間、ミルシュが声をあげた。
「ちょっと待て!確かに息子は店をやってるが、別にそういう基準で選んでねぇぞ!もし息子がやってなくても俺は木彫りの店を勧めてた!」
「またまたー」
「家族思いがバレたからって照れるなって」
「本当だって!」
ミルシュは、もしアキトくんが近くに住んでるなら俺はきっと机や椅子の店を勧めてたよと続けた。辺境領の家具はかなり質が高いのに、比較的安価で手に入るんだと優しい声で説明している。
ミルシュお前そんな優しい声出たんだな。
周囲にいる何人かが口を押さえてるのは、きっと笑いそうなのを堪えてるんだろう。
「でもトライプールまで持ちかえる事を考えたら、魔導収納鞄の容量を圧迫しない木彫りの像が一番のお勧めなんだ」
「そうなんですか」
「他の地域では動物の木彫りが多いんだけど、辺境では木々や森、花なんかの植物や、武器や防具なんていうすこし珍しいものもあるんだよ」
「それはぜひ見てみたいです」
アキトの返事にミルシュは満足そうに何度も頷いている。そしてちらりとメンクへと視線を向けた。
あーまたライバル意識か。
「おい、それをいうなら、俺だって娘に関係なく果物を勧めてたぞ!」
揶揄う周りにうるさいと叫んでから、メンクはアキトに向かって優しく笑いかけた。
「辺境領には珍しい果物が本当に多いんだよ」
「はい、ハルからも聞きました」
「ところでアキトくん、果物は好きかい?」
「はい、好きです!それに俺、果実水が好きなんですけ」
「おお、果実水が好きなら絶対に寄ってくれ!珍しい果物を使った果実水もあるからね」
アキトはキラキラと目を輝かせて、俺の方へと視線を向けた。うん、そんな目をされたら、行くしかないよな。
「滞在中に、寄ってみようか」
「うん、楽しみ!」
「俺はやっぱりミラルースの食事が一番だと思うぞ」
「あー…うん、あそこは美味いからな」
どうやら俺がちらりと話した事を覚えていてくれたらしく、アキトは知ってるお店の名前だと言いたげに笑みを浮かべて聞いている。
「ミラルースはアキトと一緒に行きたい店に最初から入ってるよ」
「あーおまえあそこのステーキ好きだよな」
ああ、好きだな。
「いやいや、他の街から来たなら、魔道具とかも珍しいんじゃないか?」
「魔道具ですか?」
「そうなんだ。辺境領の市場や屋台では、近くにあるダンジョン産の魔道具が破格の値段で売られている事もあるんだ」
「あーでもね、アキトくん。性能が良くないものを高値で売りつけようとする商人も、ごく稀に混じっていたりするから注意してね」
慌てた様子でそう付け加えたのは、普段は市場の見回りを担当している隊の一人だった。
「そのあたりは俺達衛兵が見回ってるんだが、逃げ足が早くてな」
騙されてアキトが嫌な思いをする前に、きちんと言っておかないとと思ったんだろうな。なんだかアキトはすっかり気に入られているらしい。
「まあ目利きなハルと一緒なら、絶対に騙されないしきっと楽しめるぞ」
よし、分かった。アキトのためにも全力で良いものを探してやる。
「あ、武器とかもダンジョン産の変わったのがあったりするよ」
「バカ、後衛の魔法使いだって言ってただろうが」
そっか、俺達みたいに武器はそうそう買い替えないかと残念そうだったが、一人の衛兵がはいっと手をあげた。
「あ、俺、旦那が魔法使いだから、魔法使い用のローブとか杖をいーっぱい売ってる店知ってるぞ!」
「そういえば冒険者ギルドの隣の武器屋も、最近は魔法使い用にって色々作ってたな」
もはや俺とアキトを置き去りにして、わいわいと盛り上がっていく会話は、どんどん膨らんでいく。
アキトは辺境領ってすごいとか思ってるんだろうな。興味深そうにキラキラした目で話を聞いている。
「あ、でも辺境領の一番の名所って言ったら、やっぱり領主城だけどな!」
「違いねぇ」
「普通の観光なら外から見るだけだが、アキトくんは中にも入れるんだしな」
今度は辺境領の領主城のみどころを勧める流れらしい。俺にとっては実家だから、たぶんここにいる誰よりも詳しいと思うんだが…。衛兵たちもアキトも楽しそうだから、まあ良いか。
口を挟まずに会話に耳を傾けていると、不意に一人の衛兵が大きな声をあげた。
「あ、やばい!」
「なんだ、どうしたー?」
「いや、ハルとアキトくんを引き留めすぎてるって話だよ!」
「それは…やばいな」
「俺らが最強夫婦に怒られる!」
ぽつりとそう呟いた衛兵に、皆はそうだったそうだったとと大慌てだ。
「よし、ハル、アキトくん。急いで領主邸に向かってくれ!」
「ああ、上まで案内する!」
「こっちだ!」
てきぱきとした動きは、絶対に怒られたくないという意思の現れだろうな。びっくり顔のアキトの肩を、俺はぽんっと軽く叩いた。
「ごめん、アキト。こういう人達なんだ」
「うん、楽しい人達だね」
「この賑やかで親し気な雰囲気、俺は好きだなー」
アキトならきっとそう言ってくれると思っていたよ。
俺はアキトだけに聞こえるぐらいの小さな声で、俺もとぼつりと答えた。
「それにしても…あんた達が木彫りの店と果物屋をお勧めするとは思わなかったな――酒のうまい店とかならまだ納得できるんだが」
飲み比べもよくやってる二人だからなと考えながら尋ねれば、答えは違う方向から返ってきた。
「あれ、ハルは知らなかったか?こいつの息子、今は木彫りの店をやってるんだぞ」
「へえ、そうなのか?」
手先が器用だったのは覚えているが、木彫りの店をやってるとは思わなかったな。
「ちなみにこいつの娘は、果物屋をやってる」
そう説明したみんなの手は、さっき主張しあっていたミルシュとメンクの二人を指差している。
ああ、なるほど自分の家族の店を勧めたかったのか。それなら納得だと思った瞬間、ミルシュが声をあげた。
「ちょっと待て!確かに息子は店をやってるが、別にそういう基準で選んでねぇぞ!もし息子がやってなくても俺は木彫りの店を勧めてた!」
「またまたー」
「家族思いがバレたからって照れるなって」
「本当だって!」
ミルシュは、もしアキトくんが近くに住んでるなら俺はきっと机や椅子の店を勧めてたよと続けた。辺境領の家具はかなり質が高いのに、比較的安価で手に入るんだと優しい声で説明している。
ミルシュお前そんな優しい声出たんだな。
周囲にいる何人かが口を押さえてるのは、きっと笑いそうなのを堪えてるんだろう。
「でもトライプールまで持ちかえる事を考えたら、魔導収納鞄の容量を圧迫しない木彫りの像が一番のお勧めなんだ」
「そうなんですか」
「他の地域では動物の木彫りが多いんだけど、辺境では木々や森、花なんかの植物や、武器や防具なんていうすこし珍しいものもあるんだよ」
「それはぜひ見てみたいです」
アキトの返事にミルシュは満足そうに何度も頷いている。そしてちらりとメンクへと視線を向けた。
あーまたライバル意識か。
「おい、それをいうなら、俺だって娘に関係なく果物を勧めてたぞ!」
揶揄う周りにうるさいと叫んでから、メンクはアキトに向かって優しく笑いかけた。
「辺境領には珍しい果物が本当に多いんだよ」
「はい、ハルからも聞きました」
「ところでアキトくん、果物は好きかい?」
「はい、好きです!それに俺、果実水が好きなんですけ」
「おお、果実水が好きなら絶対に寄ってくれ!珍しい果物を使った果実水もあるからね」
アキトはキラキラと目を輝かせて、俺の方へと視線を向けた。うん、そんな目をされたら、行くしかないよな。
「滞在中に、寄ってみようか」
「うん、楽しみ!」
「俺はやっぱりミラルースの食事が一番だと思うぞ」
「あー…うん、あそこは美味いからな」
どうやら俺がちらりと話した事を覚えていてくれたらしく、アキトは知ってるお店の名前だと言いたげに笑みを浮かべて聞いている。
「ミラルースはアキトと一緒に行きたい店に最初から入ってるよ」
「あーおまえあそこのステーキ好きだよな」
ああ、好きだな。
「いやいや、他の街から来たなら、魔道具とかも珍しいんじゃないか?」
「魔道具ですか?」
「そうなんだ。辺境領の市場や屋台では、近くにあるダンジョン産の魔道具が破格の値段で売られている事もあるんだ」
「あーでもね、アキトくん。性能が良くないものを高値で売りつけようとする商人も、ごく稀に混じっていたりするから注意してね」
慌てた様子でそう付け加えたのは、普段は市場の見回りを担当している隊の一人だった。
「そのあたりは俺達衛兵が見回ってるんだが、逃げ足が早くてな」
騙されてアキトが嫌な思いをする前に、きちんと言っておかないとと思ったんだろうな。なんだかアキトはすっかり気に入られているらしい。
「まあ目利きなハルと一緒なら、絶対に騙されないしきっと楽しめるぞ」
よし、分かった。アキトのためにも全力で良いものを探してやる。
「あ、武器とかもダンジョン産の変わったのがあったりするよ」
「バカ、後衛の魔法使いだって言ってただろうが」
そっか、俺達みたいに武器はそうそう買い替えないかと残念そうだったが、一人の衛兵がはいっと手をあげた。
「あ、俺、旦那が魔法使いだから、魔法使い用のローブとか杖をいーっぱい売ってる店知ってるぞ!」
「そういえば冒険者ギルドの隣の武器屋も、最近は魔法使い用にって色々作ってたな」
もはや俺とアキトを置き去りにして、わいわいと盛り上がっていく会話は、どんどん膨らんでいく。
アキトは辺境領ってすごいとか思ってるんだろうな。興味深そうにキラキラした目で話を聞いている。
「あ、でも辺境領の一番の名所って言ったら、やっぱり領主城だけどな!」
「違いねぇ」
「普通の観光なら外から見るだけだが、アキトくんは中にも入れるんだしな」
今度は辺境領の領主城のみどころを勧める流れらしい。俺にとっては実家だから、たぶんここにいる誰よりも詳しいと思うんだが…。衛兵たちもアキトも楽しそうだから、まあ良いか。
口を挟まずに会話に耳を傾けていると、不意に一人の衛兵が大きな声をあげた。
「あ、やばい!」
「なんだ、どうしたー?」
「いや、ハルとアキトくんを引き留めすぎてるって話だよ!」
「それは…やばいな」
「俺らが最強夫婦に怒られる!」
ぽつりとそう呟いた衛兵に、皆はそうだったそうだったとと大慌てだ。
「よし、ハル、アキトくん。急いで領主邸に向かってくれ!」
「ああ、上まで案内する!」
「こっちだ!」
てきぱきとした動きは、絶対に怒られたくないという意思の現れだろうな。びっくり顔のアキトの肩を、俺はぽんっと軽く叩いた。
「ごめん、アキト。こういう人達なんだ」
「うん、楽しい人達だね」
「この賑やかで親し気な雰囲気、俺は好きだなー」
アキトならきっとそう言ってくれると思っていたよ。
俺はアキトだけに聞こえるぐらいの小さな声で、俺もとぼつりと答えた。
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