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801.領主城まであとすこし
俺は戸惑いながらうろうろと視線を動かした。うん、豊かな森の恵がたっぷり採れそうな――立派で綺麗な森だね。
ちょっと珍しい物とかも採れそうな雰囲気があって、ここが目的地の採取地だよって言われた方がまだ納得できたかもしれない。
えっと、ここって城壁の中だったよねとそろりと後ろを振り返ってみれば、あの巨大な壁は遠くからもよく見えた。
「領都ウェルマールは他の地域と違って、城壁内で食べ物がまかなえるように森を残してあるんだ」
その反応も無理は無いねとハルは笑って説明してくれた。この森の中には果樹園や畑、それに家畜を育てている場所まであるらしい。これもまたいざという時のためにって事か。
「森は分かったんだけど…門とか門番さんとかは――いないの?」
もう一つ気になる事を聞いてみれば、ハルは笑って答えた。
「ここにはまだいないね。一応城の近くにはいるよ、さすがに」
手を加えて育てている農園とか牧場のものはきちんと管理されているらしいけど、それ意外の森の恵なんかは、普通に住人の人達が採りに来る事が許されてるんだって。だからここには見張りなんていないらしい。
「そっか、おおらかで良いね」
壁の中で森の恵が手に入るなら、こども達だって楽しめる遊び場なんだろうな。そう伝えれば、アキトらしい感想だねとハルは嬉しそうに笑った。
「もっと貴族らしくしろって怒られる事もあるんだよ」
「そうなんだ」
別にそんなの好きにしたら良いと思うんだけどなーと考えていると、ハルは一度きゅっと力を込めてからそっと俺の手を離した。
「魔物はさすがに出ないけど、ここからは森だから」
手を繋いでると危険だからねと言われて、俺もうんと一つ頷いた。ここからは森歩きか。さあ、いよいよ森を抜けてハルの実家を目指すぞ。
決意して森を歩き始めたけど、こうして歩いてみるときちんと人の手が入っているのがよく分かる。
道はしっかりと踏み固められているし、枝や草もはみ出していたりはしない。森の中とは思えないぐらい歩きやすい道だ。
「あ、これってチピの実?」
「ああ、本当だ」
ちょうどその季節かなんて言い合いながら、ハルと二人でゆっくりと歩いていく。さすがに採取はしてないけど、図鑑でしか見た事のないものが色々あってちょっとワクワクする。
時間がある時にでも森の中を散策させて欲しいな。そんな事を考えながら歩いていくと、不意にハルが立ち止まった。
「領主城はこの道の先だよ」
あと少しだからもう少し頑張ってと言われながら更に森の奥へと進んでいくと、不意に聞きなれない音が聞こえてきた。疳高い風を切るような音と同時に、キラリと何かが光ったのが一瞬だけ見えた。
えと思う間も無く、ハルは一瞬で腰の剣を抜くと、飛んできた矢を空中で切り捨てた。
地面に落ちた矢を思わずじっと見つめてしまう。
つまり今俺達は弓矢で射られたって事か。いや違う。狙われていたのは、明らかにハルだった。この森に魔物はいないって言ってたけど、魔物の襲撃?いや、でも矢を使う魔物なんているのか?じゃあこれは人の攻撃?
詳しい事なんて俺には分からないけれど、少なくとも分かっている事が一つだけある。
この矢を射た存在は、俺のハルを狙っている。
腹の中がぶわっと熱くなったような感覚があった。怒りのままに一気に魔力を練り上げる。まだ距離があるからどこにいるかは分からないけど、近づいてきたら魔法で攻撃できるように。
何度も何度も矢継ぎ早に飛んでくる矢を次々に切り捨てていたハルは、5本を切り捨てた所で不意に思いっきり声を張り上げた。
「……アキトを狙ってないから許してたけど、いい加減にしろよ!」
低い声でいつまでやるんだとぼそりと呟いたハルは、いつの間に取り出したのか投げナイフを力いっぱい投的した。構えた瞬間が見えないほどの素早さで放たれたナイフだったが、次の瞬間にはキンッと甲高い音が鳴った。
防がれたけれど、ハルの攻撃のおかげで方向は分かった。あそこにいるのかと魔力を練り上げながら視線を向ければ、この場には不釣り合いな楽し気な笑い声が聞こえてきた。
「出て来い」
「分かった分かった。よ、ハルー久しぶり!腕を上げたな!」
嬉しそうに笑いながら木から飛び降りて駆け寄ってきたのは、全身鎧を身に着けた赤茶色の髪をした人だった。あんな重そうな鎧を身につけて、木の上から攻撃してきてたのか。
驚く俺の視線の先で、ハルはその人を思いっきり睨みつけた。
「…言い訳があるなら聞くが?」
「言い訳?城が近くなって一番油断してる所を狙ったら、どんな反応をするのかなーってだけだけど?」
あっさりと答えられて、ハルはうと言葉に詰まった。
ちょっと珍しい物とかも採れそうな雰囲気があって、ここが目的地の採取地だよって言われた方がまだ納得できたかもしれない。
えっと、ここって城壁の中だったよねとそろりと後ろを振り返ってみれば、あの巨大な壁は遠くからもよく見えた。
「領都ウェルマールは他の地域と違って、城壁内で食べ物がまかなえるように森を残してあるんだ」
その反応も無理は無いねとハルは笑って説明してくれた。この森の中には果樹園や畑、それに家畜を育てている場所まであるらしい。これもまたいざという時のためにって事か。
「森は分かったんだけど…門とか門番さんとかは――いないの?」
もう一つ気になる事を聞いてみれば、ハルは笑って答えた。
「ここにはまだいないね。一応城の近くにはいるよ、さすがに」
手を加えて育てている農園とか牧場のものはきちんと管理されているらしいけど、それ意外の森の恵なんかは、普通に住人の人達が採りに来る事が許されてるんだって。だからここには見張りなんていないらしい。
「そっか、おおらかで良いね」
壁の中で森の恵が手に入るなら、こども達だって楽しめる遊び場なんだろうな。そう伝えれば、アキトらしい感想だねとハルは嬉しそうに笑った。
「もっと貴族らしくしろって怒られる事もあるんだよ」
「そうなんだ」
別にそんなの好きにしたら良いと思うんだけどなーと考えていると、ハルは一度きゅっと力を込めてからそっと俺の手を離した。
「魔物はさすがに出ないけど、ここからは森だから」
手を繋いでると危険だからねと言われて、俺もうんと一つ頷いた。ここからは森歩きか。さあ、いよいよ森を抜けてハルの実家を目指すぞ。
決意して森を歩き始めたけど、こうして歩いてみるときちんと人の手が入っているのがよく分かる。
道はしっかりと踏み固められているし、枝や草もはみ出していたりはしない。森の中とは思えないぐらい歩きやすい道だ。
「あ、これってチピの実?」
「ああ、本当だ」
ちょうどその季節かなんて言い合いながら、ハルと二人でゆっくりと歩いていく。さすがに採取はしてないけど、図鑑でしか見た事のないものが色々あってちょっとワクワクする。
時間がある時にでも森の中を散策させて欲しいな。そんな事を考えながら歩いていくと、不意にハルが立ち止まった。
「領主城はこの道の先だよ」
あと少しだからもう少し頑張ってと言われながら更に森の奥へと進んでいくと、不意に聞きなれない音が聞こえてきた。疳高い風を切るような音と同時に、キラリと何かが光ったのが一瞬だけ見えた。
えと思う間も無く、ハルは一瞬で腰の剣を抜くと、飛んできた矢を空中で切り捨てた。
地面に落ちた矢を思わずじっと見つめてしまう。
つまり今俺達は弓矢で射られたって事か。いや違う。狙われていたのは、明らかにハルだった。この森に魔物はいないって言ってたけど、魔物の襲撃?いや、でも矢を使う魔物なんているのか?じゃあこれは人の攻撃?
詳しい事なんて俺には分からないけれど、少なくとも分かっている事が一つだけある。
この矢を射た存在は、俺のハルを狙っている。
腹の中がぶわっと熱くなったような感覚があった。怒りのままに一気に魔力を練り上げる。まだ距離があるからどこにいるかは分からないけど、近づいてきたら魔法で攻撃できるように。
何度も何度も矢継ぎ早に飛んでくる矢を次々に切り捨てていたハルは、5本を切り捨てた所で不意に思いっきり声を張り上げた。
「……アキトを狙ってないから許してたけど、いい加減にしろよ!」
低い声でいつまでやるんだとぼそりと呟いたハルは、いつの間に取り出したのか投げナイフを力いっぱい投的した。構えた瞬間が見えないほどの素早さで放たれたナイフだったが、次の瞬間にはキンッと甲高い音が鳴った。
防がれたけれど、ハルの攻撃のおかげで方向は分かった。あそこにいるのかと魔力を練り上げながら視線を向ければ、この場には不釣り合いな楽し気な笑い声が聞こえてきた。
「出て来い」
「分かった分かった。よ、ハルー久しぶり!腕を上げたな!」
嬉しそうに笑いながら木から飛び降りて駆け寄ってきたのは、全身鎧を身に着けた赤茶色の髪をした人だった。あんな重そうな鎧を身につけて、木の上から攻撃してきてたのか。
驚く俺の視線の先で、ハルはその人を思いっきり睨みつけた。
「…言い訳があるなら聞くが?」
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あっさりと答えられて、ハルはうと言葉に詰まった。
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