生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
815 / 1,561

814.ハルの兄弟たちは

 俺を囲んだハルの兄弟達は、楽しそうに笑顔で話しかけてきてくれた。

「アキトくん、確かここまでは魔法陣で来たんだったよな?」

 ファーガスさんの質問に俺はすぐに頷いた。

「はい、トライプールの領主様と一緒に」
「え、魔法陣で来たの?」
「ウィル、この前トライプール領主殿から手紙が来たときちんと報告しただろう」
「あーそういえば、うん。えーと…言ってたような?言ってなかったような?」

 悪びれずによく覚えてないなとあっさりと続けたウィリアムさんに、ファーガスさんは苦笑を浮かべた。まったくお前はと言いたげな視線だけど、不思議と温かさも感じる。

 兄弟がいるのって良いなぁと、一人っ子の俺は羨ましく思ってしまう。

「あ、言ってた!僕、覚えてるよ!」

 はいっと手をあげたキースくんの頭を、偉い偉いとウィリアムさんが撫で始める。ファーガスさんにもよく覚えていたなと言葉で褒められている。撫でられるがままになりながら、嬉しそうに声をあげて笑う姿がすごく可愛らしい。

 微笑ましい気持ちでそんなやりとりを見つめていると、不意に視線がぱちりとぶつかった。キースくんは慌てた様子で視線をうろうろと動かしたけれど、次の瞬間には意を決したようにじーっと俺を見上げてきた。

 緊張した様子を見ていると、不思議と俺まで緊張してくる気がする。

「あの…えっと、階段、大変じゃなかった…ですか?」

 キースくんはまず間違いなく人見知りだと思うんだけど、それでも頑張って声をかけてくれるんだ。もうすこし慣れてきたら、俺にも頭を撫でさせてくれるかな。

 そんな事を考えながら、俺はさっとしゃがみ込むと笑顔で答えた。

「すごく大変だったけどなんとか最後まで頑張りました」

 うん、あれは本当に頑張ったよね。もしハルと二人だけだったら、途中で休憩しまくてったかもしれない。あの長い階段を脳裏に思いうかべつつ、俺は一番大事な事を言わないとと口を開いた。

「キースくん、心配してくれてありがとうございます」

 人見知りなのに頑張って伝えてくれたのが俺の心配ってのが嬉しくて、どうしてもお礼を伝えたくなったんだ。

 キースくんは俺の言葉を聞くと、ふわりと笑みを浮かべた。あー本当に天使みたいな子だな。

 照れ笑いするキース君を、ファーガスさんとウィリアムさんも微笑まし気に見つめていた。



「アキト、勝手に両親と話こんじゃってごめんね。退屈してない?」

 不意にそう声をかけられて、俺は慌てて背後を振り返った。そこにはしょんぼりとしたハルが立っていて、申し訳なさそうに俺を見つめていた。

 ハルの兄弟たちとあれこれ喋っている間に、どうやらハルとご両親の話も終わっていたらしい。

「ううん、別に気にしなくて良いよ。皆さんと話してたから大丈夫」

 むしろ楽しかったと笑顔で続ければ、ハルはやっとホッと肩の力を抜いた。

「みんな、アキトを退屈させないようにしてくれてありがとう」
「ハル、俺達は別にアキトを退屈させないようにと話をしてたわけじゃないぞ」

 ファーガスさんはそう言いながら、不服そうにすこしだけ眉間にしわを寄せた。ただそれだけの事でも一気に迫力が増すのは、ハルによく似た美形だからだろうか。

「そうそう、俺達はただアキト君と話したかっただけだから!」

 ウィリアムさんは明るく笑って、そう言いきってくれた。さらりとそう言われると、ちょっと照れくさいけど嬉しいな。

「まあ皆がアキト君と話したくなった原因は、俺が皆にアキト君の事いっぱい話したからだけどね」

 へへーと笑ったウィリアムさんの横から、キースくんもひょこっと顔を出した。

「僕もアキトさんとお話してみたかったから」
「そうか。でも、ありがとう」

 ハルにそっと頭を撫でられたキースくんは、また嬉しそうに声をあげて笑いだした。うん、やっぱり可愛い。

「まあ普段なら伴侶候補を放置するなと言いたい所なんだが――今回は仕方ないだろう」

 もし俺が伴侶候補を連れてきたあの時に同じ事をされていたら、本気で怒って反撃していたし絶対に父に言いつけていたよ。そう続けたファーガスさんに、ウィリアムさんもすぐに頷いた。

「あーそれは確かに。一人の時ならいくらでもって言えるんだけどな。愛しい伴侶に怪我させたら、いくら母さんでも許せない」

 二人ともすごく真剣な表情だから、多分本気で心からそう思ってるんだろうな。

 どうやらハルの兄弟たちは、すごく伴侶を大事にする人達みたいだ。うん、そんな所もハルにそっくりだね。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。