生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
816 / 1,561

815.容赦ない話題転換

「きちんと反省してくれよ」
「はーい、もう分かったって。ちゃんともう一回アキトにも謝るから」
「ああ、そうしてくれ」

 ケイリーさんとグレースさんは、そんな会話をしながら集まっている俺達の方へと近づいてきた。

「アキト、改めて何の説明もせずに腕試しに巻き込んで――本当にすまなかった」

 まっすぐに目を見つめながらの謝罪の言葉を受け取った俺は、すぐにいいえと首を振った。

「驚きはしましたけど、ハルの家族の中では当たり前の事だったんですよね」

 いくらハルの家族でも、もしそこに少しでも殺意があったならさすがに許せなかったかもしれない。でもグレースさんはハルを信じてギリギリの所を攻撃してたんだと思う。

「ありがとう、アキト」
「ちょっとあっさり許しすぎじゃないか?」

 ハルだけはまだすこし不服そうだったけど、グレースさんはニコニコと嬉しそうにケイリーさんを振り返った。

「ケイリー、アキトに許してもらえたぞ」
「うん、ちゃんと見てたよ。アキトくん、本当にすまなかった」

 私の監視不足だとケイリーさんにまで謝られた俺は、あわててぶんぶんと首を振った。

「ところで、腕試しって何をされたの?」

 しんと一瞬だけ静かになった部屋の中に、ウィリアムさんの明るい声が響いた。さすがウィリアムさんだな。空気が一気に明るくなった気がする。

 ありがたいなとしみじみ感じながら、俺はウィリアムさんに視線を向けた。
 
「木の上から狙われたんだよ」

 ハルの答えに、ファーガスさんはふむと一言呟いた。

「木の上から狙うって事は――弓か?」
「そうそう、予想通り弓矢だよ」
「ほう…ハルは何本だった?」
「5本だな」

 ぽんぽんと交わされる兄弟の会話は、かなりテンポが早かった。そういえば仲の良い兄弟の会話って、こんな感じだったな。元の世界の兄弟持ちの友人を思い浮かべながら、そんな事をぼんやりと思う。

「え、待って、ハル。5本で終わったの?」

 そう声を上げたウィリアムさんは、大きな目をしてハルを見つめていた。

「ああ、5本だったよ」
「へー、どうやって止めさせたんだ?」
「アキトの前で何してくれてるんだって、俺がナイフを投げた」
「なるほど。距離を投げナイフで稼いだのか、やるなぁ」
「ハル兄さん、すごい!」

 キースくんに尊敬の眼差しで見つめられたハルは、照れくさそうに笑みを浮かべた。弟に褒められて照れるハルって、すごく可愛い。

 そう思ってハルを見つめていた俺は、完全に油断しきっていた。まさかこの場でグレースさんがあんな事を言い出すとは思ってなかったからね。

「確かにハルもよくやったが――私が一番驚いたのはアキトの反応だな。ハルが一本目の矢を切り捨てた時には、既に魔力を練り始めていたからな」
「アキトくんが…?」
「え…?」
「魔力を…?」

 ケイリーさん、ファーガスさん、ウィリアムさんが揃って俺を見つめてくるなか、キースくんだけが目を輝かせて上目遣いに俺を見上げてきた。

「もしかしてアキトさんは魔法使いなの?」

 あーそういえばハルから、弟は魔法に興味があるって聞いた事があったな。

「えっと、うん。そうだよ」

 グレースさんの突然の話題転換に驚きつつも何とかそう答えれば、キースくんはさらにキラキラと目を輝かせた。

「魔法使い、すごい!」
「ありがとう」

 尊敬の眼差しを向けてくれるキースくんはすごく可愛いんだけど、現実逃避する間もなくグレースさんの話は続いていく。

「アキトはなあの一瞬できちんと周りを警戒して、いつでも攻撃魔法を放てるようにしていたんだぞ」

 魔法使いでもあそこまで素早く魔力を練れるやつはそうはいないと、グレースさんはニコニコと笑顔で続けた。

 あー俺がハルのお母さん相手に攻撃しようとしてた事が、容赦なくバラされてしまった。

 これって印象最悪だよね?と心配になったけど、ケイリーさんとファーガスさん、それにウィリアムさんはただ驚いた様子でじーっと俺を見つめてくるだけだった。

「…あーアキトくん、その…咄嗟にハルを守ろうとしたの…か?」

 ケイリーさんの恐る恐るといった様子の問いかけに、俺はこくりと頷いて答えた。攻撃するのも守ろうとする事に入るなら、確かに守ろうとしたね。

「あ、はい」
「――ハルを…君が?」

 長兄であるファーガスさんの質問に俺が答えるよりも前に、ハルが隣から答えた。

「ファーガス兄さん、アキトは強いぞ?」

 じろりと睨むような視線で見つめられたファーガスさんは、申し訳なさそうに眉を下げた。

「いや弱いと言いたいわけじゃないんだが…」

 そう言いながら、ファーガスさんの視線が俺の頼りない腕に向いたのが分かってしまった。うん、ハルの家族と比べたら、筋肉が全くないに等しい俺は、弱そうに見えるんだろうな。

 これでも元の世界にいた時よりは、多少筋肉も増えた気がするんだけどな。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。