生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
821 / 1,561

820.【ハル視点】兄弟たちとアキト

 楽しげに話し込んでいる兄弟達とアキトにこっそりと近づいていけば、ちょうどキースが兄さんたちに頭を撫でられいるところだった。

 俺にとってはいつもの光景だが、アキトは微笑ましそうにそんなやりとりを見守っている。

 特に問題はなさそうかな。

 そう思いながらさらに近づいていくと、不意にキースが慌てた様子で視線をうろうろと動かした。

 ああ、予期せぬタイミングでアキトと目が合ったのか。

 どうやら人見知りが発動してしまったらしい。二人の間をきちんと取り持たないとな。

 慌てて歩く速度をあげようとしたが、それよりも前にキースが意を決したように視線をあげた。

「あの…えっと、階段、大変じゃなかった…ですか?」

 ああ、アキトの心配をしてくれていたのか。うん、キースはやっぱり可愛いな。

 そう思いながら見守っていると、アキトはさっとその場にしゃがみこんだ。

 近い距離からキースの目をまっすぐ見つめて、笑顔で答える。

「すごく大変だったけどなんとか最後まで頑張りました。キースくん、心配してくれてありがとうございます」

 アキトの感謝の言葉に、キースはふわりと嬉しそうに笑みを浮かべた。

 照れ笑いを浮かべたキースを、ファーガス兄さんとウィル兄さんも微笑まし気に見つめている。



 それにしても兄弟たちとアキトの性格は分かっているからそこまで心配はしていなかったが、想像以上に気が合ったようだ。

「アキト、勝手に両親と話こんじゃってごめんね。退屈してない?」

 背後からそう声をかければ、アキトは笑顔で振り返った。慣れない場所なのに、ほったらかしにされたと怒っていないんだろうか。

「ううん、別に気にしなくて良いよ。皆さんと話してたから大丈夫」

 むしろ楽しかったよと笑顔でそう教えてくれるアキトの姿に、肩の力が抜けた。

「みんな、アキトを退屈させないようにしてくれてありがとう」

 心からの感謝をこめた言葉だったけれど、ファーガス兄さんは不服そうに眉間にしわを寄せながら口を開いた。

「ハル、俺達は別にアキトを退屈させないようにと話をしてたわけじゃないぞ」

 本気で怒っているわけじゃなくただのポーズだと俺には分かるが、じろりと睨んでくるファーガス兄さんの視線はかなり鋭い。

 この視線を向けられたら、普通の人ならまず間違いなく怯えるだろうなと思うぐらいの迫力だ。

 まぁレーブンやローガンの強面にも一切動じないアキトには、全く問題はないようで俺たちのやりとりを興味深そうに観察している。

「そうそう、俺達はただアキト君と話したかっただけだから!」

 明るい笑みを浮かべながらウィル兄さんは、そう言いきった。ちらりと視線を向ければ、アキトは嬉しそうに照れ笑いを浮かべている。

「まあ皆がアキト君と話したくなった原因は、俺が皆にアキト君の事いっぱい話したからだけどね」

 へへーと笑ったウィリアム兄さんの横から、キースもひょこっと顔を出した。

「僕もアキトさんとお話してみたかったから」
「そうか。でも、ありがとう」

 自分たちが話したかっただけというのは、きっと本当なんだろう。

 それでも慣れない場所でアキトが一人にならなかった理由が、ここにいるみんななのは事実だから。

 そっと手を伸ばして頭を撫でれば、キースは嬉しそうに声をあげて笑い出した。うん、俺の弟はやっぱり可愛いな。そしてそんなキースを微笑ましそうに笑いながら見つめるアキトも、たまらなく可愛い。

「まあ普段なら伴侶候補を放置するなと言いたい所なんだが――今回は仕方ないだろう」

 もっと叱られるかと思っていたんだが、ファーガス兄さんはそう言うなり苦笑を浮かべるだけだった。

 「もし俺が伴侶候補を連れてきたあの時に同じ事をされていたら、本気で怒って反撃していたし絶対に父に言いつけていたよ」

 そうか、ファーガス兄さんの時は出会い頭の腕試しはなかったのか。

 それにしてもファーガス兄さんの伴侶はかなり強い戦える人だが、それでも許せないものらしい。まぁアキトも戦える人なのに許せなかったんだから、そんなものか。

「あーそれは確かに。一人の時ならいくらでもって言えるんだけどな。愛しい伴侶に怪我させたら、いくら母さんでも許せない」

 ウィル兄も笑顔を消した真剣な表情で同意している。

 ウィル兄の場合は伴侶のジルさんが戦えない人だから、余計になんだろうな。

 想像しただけでも不快だったのか、ウィル兄の眉間にくっきりと皺がよっていた。

 うん、二人とも相変わらず伴侶を大事にしているみたいだ。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。