生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
827 / 1,561

826.印象的な話

 ハルの家族とはあれこれと色々な話をしたけれど、中でも特に印象的だったのは幽霊が見える体質について話した時だった。

「なあ、アキトの幽霊が見えるっていうその体質は、生まれつきのものなのか?」

 話のきっかけは、不意にグレースさんがそう尋ねてきた事だった。

「はい、見えるのは生まれつきですね」

 別に隠す事でもないしとすぐにそう答えたんだけど、ハルを除くその場にいる全員が急に沈鬱な表情になったんだ。

 うん、あれには正直かなり驚いたよね。

 あまりに急な表情の変化に戸惑ってたら、周りのみんなも慌てた様子ですぐに説明はしてくれたんだけどね。

 なんでもハルの手紙を読んで俺の体質について知った後、ここにいる全員で一部屋に集まって話をする時間が設けられたんだそうだ。

 そこで最初に話題になったのが、俺のその幽霊が見える体質が一体いつからのものなのかって事だったらしい。

 もし後天的に身に着いたものなら、まずは急に見えるようになった事実を受け入れるのが大変だろうし、きっと視界に入る幽霊にも恐怖するだろう。

 だけど、こちらはまだ隠そうと思えば、隠し通せる可能性がある。

 逆にもしその能力が生まれつきのものだとしたら、幼い頃から見える事を隠し通す事なんて絶対にできないだろう。何が見えて何が見えないのが普通なのかなんて、赤子に区別がつくわけがない。

 その場合は、周りから恐れられたり敬遠されたりするかもしれない。

 そんな想像をしてしまったんだと、みんなは口々にそう教えてくれた。

 ああ、なるほど。だからさっきの生まれつき発言で、あんなにつらそうな表情になったのか。

「アキトくん…つらい思いをたくさんしてきたんじゃないか…?」

 ケイリーさんは心配そうにしながら、俺の目を見てそう尋ねてくれる。

「うまれつきか――特に幼い頃は大変だっただろ」

 そう呟いたグレースさんは、今は母親のような温かい視線で俺を見つめている。

「俺達はもう体質の事は知っているんだし、何も隠さなくて良いからな」

 そう告げたファーガスさんは、どんな事でも相談してくれとうっすらと笑みを浮かべた。

「そうそう。俺達はその体質ごとアキトくんを受け入れるからさー何も気にせずハルの正式な伴侶になってね」

 おどけるようにしてそんな優しい言葉を告げてくれたのは、ウィリアムさんだ。

「ぼくはアキトさん、すごいとおもいます」

 やっぱりキラキラの目をしたキースくんは、俺を見上げてそう呟いた。

「あ、えっと…まずは…心配してくれてありがとうございます」

 なんとかお礼の言葉を口にはしたけど、もうその時点で俺はちょっと泣きそうになっていた。

 だってさ、俺はずっとこの体質を隠して生きてきたんだよ。仲の良い友人やクラスメイト達にも告げずにずーっとね。

 まあこの世界に来てからは、何人かには打ち明けたんだけど。

 でも、気味悪がられるかもとか、怖がられるかもとか、敬遠されるかもとか、そういう可能性はいつも頭のどこかにあった気がする。

 まさかこの体質について知って、過去の俺の事まで心配してくれるそんな優しい人たちがいるなんて思ってもみなかったんだ。

 あー駄目だ!深く考えたら、絶対に泣いてしまう。考えるな。

「生まれつきですけど、父も同じ体質だったし、母は見えないけれど…その、理解はしてくれている人でしたから…」

 いきなり泣き出さないようにと必死で我慢しながらぎこちなくそう続ければ、周りはわっと一気に盛り上がった。

「そうか、それは良かった!体質を理解してくれる人が身近にいたのか!」
「うーん、遺伝だったのかー。その可能性は全然考えなかったな!」

 まだまだ想像が足りなかったかと、ケイリーさんとグレースさんは顔を見合わせてからホッと安堵の息を吐いた。

「ご両親が受け入れてくれているというのは、やはり大きいな」
「あー確かにこどもにとってそれは大きいよね」
「アキトさんがつらくなくてよかったー」

 仲の良い兄弟たちは、本当に嬉しそうにニコニコと笑い合っている。

 ――あー…本当にこの人たちはすごいな。さすがハルの家族だ。

 じわりと視界が滲んでしまった所で、くいっと優しく肩が引かれた。そのままぽすりとされるがままにもたれかかれば、綺麗な紫色の瞳がそっと俺を覗き込んできた。

「アキト…大丈夫?」

 心配そうな視線に、俺はぐいっと涙の滲んだ目を拭った。確かに泣きそうだったけど、まだ泣いてないからね。強がるようにまっすぐにハルの目を見つめ返してから、俺は口を開いた。

「うん、大丈夫。悲しいわけじゃないからね」

 むしろ嬉しいと小さな声で続ければ、ハルはふわりと優しく笑ってからきゅっと抱きしめてくれた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。