生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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831.ウィリアムさんとジルさん

 ウィリアムさんの伴侶のジルさんは、いつの間に部屋から抜け出していたのかウィリアムさんのエスコートで現れた。ジルさんの方が長身だからか、ウィリアムさんの腕に捕まるのではなく肩に手を載せての登場だ。

 ウィリアムさんと出逢った船の上で挨拶を交わしたからジルさんの事は知ってるんだけど、今日は正装しているから雰囲気がかなり違っている。

 ハルよりも長身のジルさんは、今日は細い身体にぴったりと沿うような細身の服を見事に着こなしていた。

 前に会った時は頭の良さそうな男性だなって印象だったんだけど、今日は手足の長さが特に目立っていて、まるでモデルさんみたいに見える。

「失礼します」

 ぴたりとドアの前で立ち止まると、ジルさんはすっと手を胸の前に出してお辞儀をした。

「もージル、礼儀はなしで良くなったって教えたよね?」
「ええ、ちゃんと聞いていましたよ。でも私はこちらの方が性に合ってるので」

 むしろするなと言われる方が困りますと、ジルさんはさらりとそう続けた。

 ケイリーさんやグレースさんも慣れた様子で温かく見守っているから、たぶん普段からこういう真面目な人なんだろうな。俺も気持ちはすごく分かるけどね。

「…うん、そっか。でも俺、ジルのそういう真面目な所も好きなんだよね」
「そうですか…あの……恥ずかしいのであまりそういう事は、人前で言わないでください」

 少しだけ頬を赤くしたジルさんは、遠くを見ながら早口でそう答えた。あれ、なんか反応が可愛い人だな。

「分かった、じゃあ二人きりの時に言うね」
「…………ええ、そうしてください」

 ウィリアムさんも、ジルさんと話す時だけだいぶ声が甘い気がする。

 ファーガスさんもウィリアムさんも、本当に伴侶に甘い人達なんだな。あ、でもケイリーさんもグレースさんに対しては甘かった気がするし、ハルも俺に甘いような気がする。

 これも遺伝なんだろうか。

 そんな事を考えている間に、ウィリアムさんとジルさんはもうかなり俺達の方へと近づいてきていた。
 
「アキトくんも覚えてくれてるかな?俺の愛しの伴侶、ジルだよ」
「もちろん、覚えてますよ」

 まるでじゃじゃーんとでも続きそうな楽し気なウィリアムさんの声に、呆れ顔のジルさんはふうとひとつ息を吐いた。

「なんでそんな紹介の仕方なんですか…」
「え、でも事実でしょ?」

 へへーと笑ったウィリアムさんからそっと視線を反らすと、ジルさんは俺の目をじっとまっすぐに見つめてきた。

「アキトさん、お久しぶりです」
「はい、お久しぶりです、ジルさん」

 答えた瞬間に浮かんだ優しい笑みに、なんだかホッとする。着こなしとかはモデルさんみたいに洗練されて見えるんだけど、なんというか癒し系な人なんだな。

「あの時は時間も無かったので、名前ぐらいしかお伝えできなかったですから――改めて自己紹介の続きをしましょうか」

 そう前置きをしたジルさんは、改めて自己紹介をしてくれた。

「私はこちらのウィリアム隊長の隊の、副官を務めています。元文官なので戦闘はあまり得意では無いんですが…ウィリアム隊長の操縦が主な仕事ですね」

 あ、なんかハルが前にも、ウィリアムさんの操縦がどうとか言ってたな。

 あの時も思ったけど、それを本人の前で言って良いんだ?そう思ってちらりと視線を向けてみれば、ウィリアムさんは明らかに不服そうな表情を浮かべていた。

「ねぇ、ジル。今は家族の時間なんだから、部下としての振る舞いは止めてよー」

 あれ、不服なのってそっちなんだ?

「あとね、ジルはいつもこんな風に言うけど、俺の隊が関係ない書類仕事とかも率先してやってるし、文官の仕事のとりまとめとかもやってるんだよ」

 自分からは言わないけど、ジルがいなかったら大変な事が一杯あるんだ。そこはアキトくんにも知っておいて欲しかったんだーと、ウィリアムさんは笑顔で続けた。

 ご本人は元文官って言ってるけど、今も文官としての仕事をしてるのか。それでウィリアムさんの操縦…もとい補佐もやってるって事?

「それはすごいですね!」
「お、アキトくんも分かってくれるー?こんなにすごいのに、ジルは全然自慢しないからさ」

 それだけが不満なんだよねと、ウィリアムさんは苦笑を浮かべながら続けた。

「……その分も、ウィルが自慢してくれてるでしょう?」

 ぽそりとそう呟いたジルさんは、耳まで真っ赤になっている。

「うん!もちろん、全力で自慢して回るよ!」
「そこまでしなくて良い…です」

 うん、ウィリアムさんとジルさんもお似合いの伴侶だね。
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